「店長の仕事」ポイントとなる4つのこと
店長とは、“店”の“長”と書きます。すなわちお店に関することのすべてを把握し、責任を負う事になります。そう書くとちょっとプレッシャーでしたか? 今回はその店長の仕事を4つの基本的な場面に分けて考えていきますので、肩の力を抜いて読んでください。
お店は商品を販売して売上を上げるところです。店の売上を上げるために店長がすべき重要なポイントは、次の4つになります。
店の器をつくること(外観)
店の中身をつくること(商品)
店の人をつくること(スタッフ)
店のファンをつくること(顧客)
この4つのポイントについて、順番に見ていきましょう。
<➀店の器をつくる>
(レイアウト)
店の器、すなわち外観や店舗内のレイアウトです。これらの設計やデザイン自体は別のデザイナーが行うので「関係ないや」と、思わないでください。
すでに店長の時は、店舗の基本設計から。店舗がすでにあって、後から店長になった方は店舗の改装時に、出来るだけ自分の意見を出していきましょう。それが将来自分の城になるのですから、自分の理想となる店舗に、より近づけるように、呼ばれていなくても口をはさむべきで、決してここでは遠慮しないでください。
あなたの出すべき意見のポイントは、「より売上を上げやすい」ということです。経営者が改装を行うと決断するときは、改装後今まで以上売上が上がることを期待しています。そのための改装です。どうやったらより効率的に売上が上がるかという、経営者と同じ視点で考えた意見には、耳を貸してくれるでしょう。
「この方が、こういう理由で、売上が上げやすくなるから、こうして欲しい」。ただのイメージではない、しっかりした理由付けのされた、こうした現場の意見は「なるほど」と思わされることが必ずあります。そういう言い方をしてください。
ただし、出した意見はすべて通ると思わないことです。あなたがデザイナーではないのですから。一つでも採用されたら儲けものくらいに思っておいてください。それよりも大事なのは、こうしたことを考えること、考えたことを伝えることです。これがあとあとになって、運用面でも役に立ち、経営者からも事前にそこまでよく考えてくれていると評価されることにもなるのです。
あなたの積極性が問われる場面です。
設計に際し、デザイナーは得てしてブランドイメージを優先する傾向にあります。つまりあなたから見て「それじゃあ売れないよ」というところがあるものです。ブランドイメージは大事ですが、店の売上の責任を取ってはくれません。むしろ売上のことなど考えていないのです。それは、彼らではなくあなたに掛かっています。
基本設計が出来たら、まず全体をイメージしてください。イメージパースを作ってもらってもいいでしょう。
外観は店が遠くから視認されやすいか、
ショーウインドウの位置は適切か、
特に出入り口は大切です。どこから入っていいかわからないようではだめです。広く明るく中が見渡せて入りやすくなっていることが肝心です。
店内のショーケースの配置はどうか、
お客様の動線を意識したものになっているか、
入り口を入ったお客様が店内商品を見渡せるようになっているか、
通路幅は乳母車でもすれ違えるようにしっかり確保されているか、
棚を含めて陳列スペースは十分確保できているか、
商品構成に乗っ取ったゾーニングがされているか、
レジへの誘導はスムースに行えるようになっているか、
お客様と座ってお話ができるスペースは確保できているか、
ストレージとのつながりはスムースか、
ストレージは効率よく在庫を管理できるようになっているか、
レジの高さは腰に負担がかからないよう考慮されているか、
レジ回りはお金やクレジット用の替えペーパー、ラッピング用品等消耗品の保管、資料の位置等、様々な大きさや形の収納スペースが必要になります。これらが使いやすいものになっているか、
気が付いたことは、小出しにせず、まとめてから大いに主張しましょう。
(維持管理)
料理も出来立てが一番おいしいですね。家もお店もそうですが、出来立ての新築の輝きをいつまでも感じていたいものです。古びた印象を持たれては、お店はすたれてしまいます。そのためには適切な維持管理が必要です。
毎日の掃き掃除、拭き掃除はもちろん、
定期的な床清掃、
天井にも気を配ってほこりが引っ付いていませんか
照明は切れたり、チカチカしていませんか
人は暗いところに入っていきたがらないので、店の奥は特に気を付けましょう。明るさが足りないと思ったら電球を変えてみてもいいでしょう。
照明の光がきちんと商品に当たっていますか
逆に商品が照明に近すぎると、変色したり、ひどい時には煙が出てボヤになります
ショーケースに指紋が付いたままになっていませんか
ショーウインドウも朝昼晩と拭いてあげましょう
引出や扉の開け閉めは、忙しくても乱暴にせず、優しくしてあげましょう
扉がゆがんできたら、そのままにせずに、取り付け金具をチェックしましょう
倉庫は在庫が見やすく管理できるよう整理し、ゾーニングが分かるようメモを貼るなどしてスムースな品出しが出来るようにし、在庫ロスや販売ロスを防ぎましょう
などなど、まだまだありそうですね。考えたものをチェックリストにするといいでしょう。
<②店の中身を作る>
店の中身とは、商品です。お店の品ぞろえの良し悪しはお客様にとって、選択肢の一つとなります。
商品選びにもいろいろあります。
メーカー主導の新商品
お得意様の好みや注文に応じたオーダー
流行に合わせた店独自のセレクト
➀については、これは置かなければいけないという必須アイテムです。同じような系列店ならどこにでも置いてあるものです。ただし、店長判断で、数量は大きく増やしてボリュームを出してもいいでしょうし、乗り気でなければ最低限に抑えてもいいでしょう。
②についても、得意様からの依頼なので、注文必須です。
問題は③です。店独自の判断による独自のセレクションになるので、ここにしかないものになります。それがピッタリはまると、「あのお店には、いつも他と違っていいもの、欲しいものが見つかる」ということになり、他店との差別化を図ることが出来るのでとても重要です。
逆に時流から外れると、だれからも見向きもされず、売れ残りの商品となってしまいます。
ここは店長(発注者)の腕の見せ所です。日ごろから来店されるお客様の特徴や傾向、好みを把握していきます。
この時重要なことは、お買いいただいた方ではなく、接客したけれども、お買いいただけなかった方の動向です。どんなものを探されていたのかを知ることで、それを補って次に仕入れるポイントとなるからです。
今売れているものだけを仕入れていてはだめなのです。お客様は次に何を欲しを思っているのか、常に次のことを考えておかなければいけません。
先を読むことが重要です。このことは「仕事を楽にする9つの方法」でも触れていますので、よければ見てください。
<③店の人を作る>
お店の人とは、スタッフのことです。どんなスタッフがいるかによって、売上は大きく変わってきます。これが最大のテーマです。このことについては、「接客の心得、お客様がどんどん増えていく3つのポイント」でも書いていますので、こちらもご覧ください。
(魅力的なスタッフに人は集まる)
同じメーカーの、同じ値段の、同じ商品が近くに複数店舗あるとします。距離や経路も似たようなものです。あなたならどの店に行こうとしますか? どういう判断基準で選びますか? そう、“サービスの良い店”ですね。ここでいうサービスとは、ギフトをくれるとかもあるかもしれませんが、行くと気分がよくなる店という事です。気分を良くしてくれるスタッフがいる店という事です。
最後の判断基準は、接客の質なのです。
あそこまで行くとあの人がいるから、あの人の笑顔に会いたい、あの人としゃべっているとパワーがもらえる、みんなその人の魅力にひかれてやってくるのです。商品と一緒に、そのスタッフの魅力を買い求めてやってくるのです。
では、人の魅力とはどういったものでしょう。
好き嫌いは人それぞれ違います。声一つとってみても、大きくはっきり話す人が分かりやすい人もいれば、逆にうるさいから私は、落ち着いて優しい口調で話す人の方が好きだという人もいます。そういった声の大きい小さいは、その人の個性でしかないのです。長所でも短所でもありません。ここを勘違いしないでください。
人の魅力とは、その人の個性が輝いていることです。輝くためには自分を見つめ、自分を認めることです。自分を認めて自信を持って行動することです。
“失敗は成功のもと”と言いますが、失敗とは何でしょう。起こった事象は、次に起こることの布石になり、返って好都合だったという事はいくらでもあります。失敗を失敗と思わず、自信を持って次につなげるための努力をすれば、きっとより良い成果が得られるはずです。
そういった前向きな人に、人は魅力を感じ、魅かれて集まっていくのです。
ブランドイメージに沿って、理想的なスタッフ像に合う人材を求められることがあります。身長は**cmで、体系は**で、云々。これは以前もお話ししたマネキンと同じなのです。店長として、血の通った店づくりを目指すならば、そういった表面的な見た目ではなく、内面を重視して、個性の輝いた人を集めるべきなのです。
又、採用したスタッフの、本人が自覚していないような魅力を引き出すことも忘れてはいけません。“人を育てる”基本は、その人の魅力を引き出して伸ばすことにあるからです。
欠点をあげつらうのではなく、長所を本人と共に見つけ、その長所にあった部署に配置する。これは欠点を直したり、苦手を克服することよりも、はるかに簡単で効果的です。
ちなみにこれは売上を上げる方法と同じです。売れにくい商品を苦労して売るよりも、売れる商品に力を入れる方がはるかに効率的で楽に売上が上がるのです。
売れにくい商品も、数多くのお客様に一言ついでに紹介するだけで、その商品が気に入っていただける方が見つかるかもしれません。頭の隅において接客の中で挟み込みましょう。
(気づきによる関連販売)
最近無人化店舗というものが出てきていますが、まだ成功しているとはいい難い状況のようですね。システム的な問題という事以前に、構造的な問題があるのではないでしょうか。そもそも“無人の店舗で買い物を楽しむことができるのか”、という事です。少子化の影響で人員不足という問題もあるでしょうが、お客様を無視した経営者の経費節約が優先されているような気がしています。お客様もなんとなくそういった感情を抱いているのかもしれません。“なんとなく虚しい”思いをしながらでは買い物はできません。大型自動販売機設置店というだけなのですから。それではいくら経費削減しても、見合った売り上げは上げられないと思います。
スタッフとお客様との会話の中で“気づき”と言うものがあります。
新しい商品の発見、新しい組み合わせの提案、忘れていた買わなければいけなかった商品などといったような様々な“気づき”は、接客の会話の中で生まれてくることの方が断然多くなっています。その“気づき”が、必要最低限の買い物からプラスアルファーを生み出すことになるのです。このプラスアルファーが、売上や利益を大きく押し上げるのです。費用削減や効率化といった世の中の流れの中で企業の生き残りを考えるとき、接客販売の重要性は、今後さらに増していくと私は考えています。
お客様から見て魅力的な人材は、経営者から見ても必要な人材、欠かせない人材です。こうした人材を集め、育てる、これが店長の仕事の大きな一つであり、店長にしかできない仕事になるのです。
面接の仕方については、改めて別の記事で書こうと思います。
<④店のファンを作る>
(固定客づくり)
“新規顧客をつくれ、固定客増やせ”と言われます。 いかに多くの固定客を抱えているかは、安定した売上づくりに欠かせません。それには、➀や②のような環境づくりも重要ですが、前項③の魅力的なスタッフをいかに多く持っているかにかかっています。お店のファンになってもらうには、スタッフ一人だけが抜きんでていては、そのスタッフが休みの時は、売上が上がらず、そのスタッフとすれ違いが続くと、「もういいか、合えないから他を探そう」となってお客様を逃してしまいます。
そのスタッフがいない時に、代わりのスタッフも、同じように魅力的でなければいけないのです。ここでいう“同じように”というのは表面的な話ではなく、もちろん内面的な魅力の話です。次回来店時に「この前君はいなかったけれど、あの人が応対してくれて助かったよ」と言ってもらわなければいけないのです。
固定客の数と魅力的なスタッフの数は正比例するのです。
顧客管理という事があります。会社で用意されたシステムもいいですが、これは住所氏名生年月日や購入履歴といった表面的な事を集積しているだけです。この人はこんな特徴だとか、何時頃来店されることが多いとか、好みの色や質感はこうだとか、もっと個人的な情報を詰め込んだ、そのスタッフだけの顧客台帳を各自で持つようにすることで、販売時のトークに生かせることが多くなります。また、それらをスタッフ間で共有できるようにすることで、お気に入りのスタッフが不在の時でも、代わりのスタッフが応対しやすくなります。
こうした情報をもとに、先回りしてお客様にDMを送ったり、電話を掛けたりして新商品や新入荷の情報をお知らせすることでお客様に忘れられないよう、スタッフの顔を思い出してもらえるようにすること。これらを管理してまとめるのも店長の仕事です。
DMには、1%ルールというものがあります。100枚送っても、1人来ていただければいい方だというものです。それを見越して計画しましょう。又、結果を検討することも忘れてはいけません。次に実施するときの改善点を探りましょう。
(見込み客をつくれ)
会社はすぐに結果を求めてきます。しかし、本当に重要なことは、将来につながることです。固定客だけがお客様ではありません。見込み客こそ将来につながる大事なお客様なのです。お買い上げ件数だけを見ていてはいけません。来店客数の推移、そもそもお店に入ってくるお客様が増えているのか減ってきているのか、これこそが将来の売上を占う大事な指標です。
お店のファンを増やすことは、いかに見込み客を増やしていくかということなのです。
(スタッフの笑顔なくしてお客様の笑顔なし)
最後に、お客様にファンになってもらう一番の近道は、店のスタッフが働きやすい環境を作り、あの店長と一緒に仕事が出来て楽しいと言ってもらって、あなたのファンになってもらう事なのです。
それにはスタッフの変化を知ることです。髪を切ったとか、化粧を変えてきたとかでもいいでしょう。特に大事なのは、心の変化を見逃さないことです。
毎朝早くお店に行き、出勤してくるスタッフの表情を見てください。いつもと変りなく、元気ではつらつとしていますか? 挨拶する声が小さかったり、どことなくうつむき加減で笑顔が少なくなってきたら、「最近どうしたの?大丈夫?」と、声をかけてあげましょう。「いつも店長は私のことを気にかけてくれている」と、何もなくても安心するものです。
これには、着替えてお店に立つ前がベストです。仕事モードに入ってからでは、見分けがつかず、変化に気づかないことがあるからです。それが難しくても、接客の後の接客の後の、ふっとした表情の変化はちゃんと見ておきましょう。
きれいな店よりも、人気の商品よりも、“人”が一番の力であり“宝”なのですから。
スタッフがいつも笑顔でいられるような気配りが出来て初めて店長になったと言えるでしょう。
最後まで読み進めていただきありがとうございました。参考にしていただけたら嬉しいです。良かったらスキ・フォローをお願いします。これからしばらくは「店長の仕事シリーズ」にするつもりです。よかったらこちらも見に来てください。よろしくお願いします。
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