日本英語教育史学会第39回全国大会をMMCで開催
神奈川大学外国語学部英語英文学科です。学科の先生によるコラムマガジン「Professors’ Showcase」。今回は、英語教育学が専門の久保野雅史先生による「日本英語教育史学会第39回全国大会をMMCで開催」です!
2023年5月20日(土)、21日(日)の両日、みなとみらいキャンパス1F米田吉盛記念ホールで、日本英語教育史学会(http://hiset.jp/)第39回全国大会(神奈川大会)が、対面とオンラインのハイフレックス方式で開催されました。全国大会は、コロナ禍のためにオンライン開催が続いていましたので、対面での開催は2019年5月に神奈川大学横浜キャンパス(六角橋)以来になります。
開会行事では、田邊祐司会長の開会挨拶に続き、佐藤裕美外国語学部長が学長の代理として挨拶しました。
大会プログラム冒頭の記念講演は、英語学者の中島平三氏(東京都立大学名誉教授・日本英語学会元会長)による「梯子を外される前に英語教育史を」でした。実用主義と教養主義の間を絶えず右往左往して来た日本の英語教育は、経済界や産業界から「今の英語教育は役に立たない」という常套句で批判されて来たが、産政官に祭り上げられて我が世の春を謳歌している現在の実用主義も、いつ梯子を外されるか分からない。教育の究極的目的は、内在的知識の探求によって本性(とりわけ知性)であり、そのためには、従来の暗記を中心とした学習文法とは異なる文法教育が重要であり、教育の本道への歴史的転換を行うためには、英語教育史の研究から学ぶ必要がある。というものでした。
引き続き、研究発表に移り、「『外客接遇職業人』はどのように英語会話を学んだか:明治末期から昭和戦前期の場合」(溝口悦子氏)、「東京高等師範学校卒業生と臨教(東京臨時教員養成所)英語科学生(対象13年、15年、昭和2年、3年、5年、6年卒)の給費・私費割合及び進路先及び修飾語の動向(昭和8年時点での各年度卒業生の進路先の変化)及び昭和恐慌時期の卒業生の進路の変化について」(鈴木聡氏)の2本の発表が行われました。
初日のプログラム終了後は、キャンパス近くにある中華料理「親敬」の2階を貸し切り、20人近くが参加して、活発な議論を続けながら交流を深めました。
大会2日目(5月21日(日))には、「戦前の中学校英語教科書における教科横断的要素について」(二五義博氏)、「歴史から見る日本におけるフォニックス指導の可能性」(平賀優子氏)、「佐川春水の英作文講義:『氷壁』」(森悟氏)、「『高等学校学習指導要領』における『コミュニケーション』の変遷に関する一考察」(小林大介氏)、「英語教育政策に関する事例研究:SELHi (Super English Language High School)を題材に」(松岡翼氏)、公立高校入試への民間検定試験導入:その経緯・実施方法・出題内容の検証」(久保野雅史)、「『英語の研究と教授』と広島版『英語教育』の計量的分析」(上野舞斗氏)、「雑誌『語学教育』(1942~1972)の包括的研究」(河村和也氏・江利川春雄氏)の8本の研究発表が行われました。
大会関係者からは、「英学・英語教育発祥の地である横浜に身を置くと、そこに流れる「空気」のようなものを確かに感じる。英文学者の外山滋比古先生は『空気の教育』の中で『教育のことを薫陶という。これはまさに空気による育成を意味する。家庭には家風、学校には校風があることを考えてみよう。人間が生活しているところにはやがて、一定の空気、雰囲気が生じる。本当の教育は押し付けや口先だけの注意ではない、子どもを包む家庭や学校の空気こそ、最も深いところに作用する』と書かれている」という趣旨の言葉が届きました。また一般参加者からは「この学会のよいところは元気のよい若手、中堅が精力的に引っ張っているところ。英語教育史研究に対して抱いてきた古臭いイメージとはまったく違った、将来を見据えた学会だ。」という内容の感想も頂いています。
大会がこのように大好評で終わることができたのは、和洋女子大学の学生・大学院生の皆さんが、受付・誘導・マイク係という裏方として大活躍してくれたことを忘れてはなりません。最後に、この大会の開催に当たり、会場使用料の減免だけでなく、開催補助金も交付してくれた神奈川大学、みなとみらいキャンパス統括管理課の仲間たちに深くお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
記 久保野雅史
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「神大の先生 久保野雅史教授」