芥川賞「破局」を読んで
こんにちは。かとりょです。
ちょうど1週間前にYahooのニュースで流れてきた記事が目に止まった。
芥川賞についての記事だった。
今年の受賞作は高山羽根子さんの「首里の馬」と遠野遥さんの「破局」
ネットでさらっと調べてみて、遠野さんは慶應出身で、年齢も私と近かったので、Amazonで作品を購入した。
こんな時期に選考が行われていたんだ、
どんな本なんだろう、
そもそも芥川賞ってどんな作品が選ばれているだろう
など、色々な疑問が浮かんできた。
なんとなくすごいのは分かるが、具体的にどんな作品が選ばれているかは知らない。
なのでまず、芥川賞とはどういう賞なのかを調べてから、「破局」の感想を書きたいと思う。
1.そもそも「芥川賞」とは?
公益社団法人である日本文学振興会が、芥川龍之介賞、直木三十五賞、菊池寛賞、大宅壮一ノンフィクション賞、松本清張賞の選考と授賞選出している。
芥川龍之介賞
文藝春秋の創業者・菊池寛(明治21年~昭和23年)が、友人である芥川龍之介(明治25年~昭和2年)の名を記念し、直木賞と同時に昭和10年に制定しました。雑誌(同人雑誌を含む)に発表された、新進作家による純文学の中・短編作品のなかから、最も優秀な作品に贈られる賞です。
日本文学振興会のHPからの引用だが、純文学の新人に与えられるのが芥川賞とのこと。
直木賞に関しても調べてみると、
直木三十五賞
新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)のなかから、最も優秀な作品に贈られる賞です。
結論、純文学かエンターテイメントかの違いとのこと。
↓リンク張っておくので興味あれば是非↓
2.「破局」を読んで
あらすじとしては、主人公は大学4年生の陽介で、元カノの麻衣子と別れ、灯と付き合い破局する、という恋愛をメインに描かれている。
一番印象的だったのは性の描写だ。元カノの麻衣子や灯とのセックスの描写がストレートに書かれている。
陽介の思考も興味深い。
別れた麻衣子が夜家に押しかけてきて話をしている場面、
私には灯がいるから、ほかの女は家には上げられない。どうしてと麻衣子が言い、穴、と私は思った。
読んでいて驚いた。
いきなり穴?
どういう心境でその考えに至ったのか。
元カノと話をしているときにこんなことを思うだろうか。
こういう”違和感”がいいアクセントになっていると感じた。
陽介の虚無感を表現している部分も数多くあった。
アオイだとかミサキだとかユミコだとか、とにかく別の女がいて、みんな私に良くしてくれた。その上、私は自分が稼いだわけではない金で私立のいい大学に通い、筋肉の鎧に覆われた肉体を持っていた。悲しむ理由がなかった。悲しむ理由がないということはつまり、悲しくはないということだ。
麻衣子と別れた事実が受け止められず、悲しみを感じているのにも関わらず、必死に悲しくないと自分に言い聞かせているのが伝わってくる。
その他にも、ラグビーのコーチをしている高校の生徒から陰口を言われ、いらだちを感じるシーンも、試合に勝つために、選手が上手くなるために厳しく指導をしているのに、選手にはそれが伝わらない虚無感ややるせなさが伝わってくる。
最後の陽介が男性を殴り警察に捕まるシーンも、重大なことが起こっているのにかかわらず、どこか他人事のように物事を捉えている感じに違和感を覚えた。
ストーリーとしては単純なのだが、読んでいて不思議な気分になる小説であった。
他の遠野遥の作品も読んでみたい。
では、また。