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基本を学ばずに方法や充実感を求めても遠回りなだけ

すぐに「どうすればいいですか?」と聞いてくる人がいる。

聞かれた側は「こうしたら?」と回答する。

しかし、聞いた側は「そうではなくて~」とさらに聞いてくる。

――― このような食い違いが起きる原因は分かっている。

「どうすればいいですか?」と聞いてくる人は即効性のある方法を求める。

一方、「こうしたら?」と回答する人は、基本を軸にアドバイスする。

しかし、即効性を求めている人は基本なんて聞きたくない。早く自分が期待する結果を得たいのだ。そのため、基本から説明する人を毛嫌いする。

もちろん、質問に対して相手の求めている回答をするのは大切だ。そして、即効性のある方法を伝えることだってできるだろう。

だが、それをしないことには理由があるのだ。

それは「基本を知らない人に即効性のある方法を伝えても、話を理解できない」ことを知っているからだ。




例えば、足し算も掛け算も全く知らない子供がいたとする。

その子供にいきなり「2✕2=4(ににんがし)」「2✕3と教えたとして、果たして理解できるだろうか?

掛け算を教えるには、基本的に足し算ができる前提が必要である。

もちろん、足し算をすっ飛ばして教える方法はある。例えば、スーパーで1パック2個入りのトマトを2パック並べて「これが2✕2という意味だよ」という教育だってアリだ。

しかし、それはイメージであって桁が上がり数字そのものを扱うようになると通用しにくくなる。

そこで改めて数字について、四則演算(加減乗除)を学ぶのは遠回りになってしまう。

だからこそ、まずは足し算という基本を学ぶことが王道なのだ。




最近では色々な教育手法があるが、突き詰めていくと基本が土台になる。

どの分野であっても、イメージ的に覚えることはできても、必ず理屈で覚える場面はある。そこをすっ飛ばして「こう覚えればいい」「この場をしのげればいい」に飛びついてしまうと後々苦労する。

確かに方程式やイメージだけ覚えることも有効であるが、それは短期的な結果は得られても自分の身に定着はしない。別にそれで構わない人もいるだろうが、以降もその分野に関わるならば基本を覚えておいて損はない。

しかし、基本は時間がかかるし理解するまで時間がかかるので、多くの人が避けようとする。そうして「もっと楽な覚え方ないの?」と聞いてくる。

しかし、それに対しては「ない」と言うしかない。そんなことを求めたり探している時間があれば、身につくまで基本を学び続けたほうが有意義だ。




先日、介護施設のスタッフから「〇〇さんをベッドから車椅子へ移乗するのが大変です」と相談を受けた。

そこで実際に移乗をしている場面を見たところ、「そりゃ大変だろう」という感想しかなかった。

それは、ハッキリ言って移乗の基本やボディメカニクスも分かっていない動きをしていたからだ。これだと、介助するスタッフも介助を受ける利用者(高齢者)もしんどいだろうと思った。

何より、そのスタッフは資格もあるし介護経験も長いのに、このような基本中の基本を学ぼうとしなかったことに驚きであった。

そこで立位、支持基底面積、重心といった話を始めたわけだが・・・それにはあまり興味を示さず「じゃあ、〇〇さんはどのような移乗をすればいいのですか?」と、その先の先のテーマに歩を進めたがる。

そうして、冒頭のような不毛なやりとりになる。

とりあえず眼前の問題が楽になればそれでいい、という学び方をするのでスキルとして身につけるには時間がかかるなと思った。




これは仕事における「充実感」「やりがい」を求めるのと似ていると思う。

このブログでさんざん伝えているとおり「充実感」「やりがい」は、やってみないと分からないし、いきなり求めることではない。

それなのに最初から「ある」と期待しては「こんなはずでなかった」と落胆する。これは、そこに明確な答えが準備されていると思っているからだ。

しかし、基本や全体像が見えないままだと、何に充実感を得ていて、何がやりがいなのか分からなくなってしまう。

そのため、これも基本を知らずに即効性を求めるのと同様に、短期的には得られるかもしれないが、長期的に得たいならば、やはり一定期間は基本や構造を理解することに専念する必要があると言える。




何だか説教臭い記事になったが、言わんとすることはご理解いただけると思う。しかし、基本をしっかり学ぶことを実行に移すのは忍耐が必要だ。

正直、基本を学ぶということは面白くない。しかし、基本を学んでおくことでその業界の人と話が通じ合えたり、新しい気づきや学習につながることは確かである。

「急がば回れ」という言葉があるが、現代は効率性ばかり求めているわりに遠回りになっているという事実に気づいたほうが良いと思う。

そもそも、そこまで急ぐことなんてあるまいし・・・。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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