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ようやく運営基準を満たしたと思ったら新しい書類と義務化が増える介護事業
事業を始めるのは自由けれど・・・
現代では誰もが自由に事業を始めることができる。
しかし、それはアイディアをビジネスというカタチにするという意味で自由と言うことであって、それなりの手申請や許可などの手続きは必要だ。
現代ではそれなりにデジタル化が進んでいるとはいえ、未だに行政や各団体においては紙媒体による手続きは当たり前にあり、1枚の書類を出すために長距離を移動してしかるべき機関に足を運ぶことも珍しくない。
前向きに考えると、行政などを経由することによって社会的に最低限の信頼を得てから事業を始めることができることでもある。
とは言え、前向きに考えるには「やることが多すぎる」というのが本音だ。
提出書類が多いうえに、違和感ばかりのフォーマット
特に介護業界においては介護保険制度という、いわば法律の名のもとに行う事業なので申請や更新ものも異常に多い。
何なら「これって別な書類でも同じ項目あったよな?」ということが多々ある。それぞれの管轄で目的や書式が違うのは分かるが、どこかで入り口を統一して欲しいと思う。
まぁ、現状においてマイナンバーカードすらうまく機能していない(活用し切れていない)ことを見ると、経済という部類である事業が煩雑になってしまうのは仕方ないのかもしれない。
また、オンライン化が進んでいる時世において、未だにスタンドアロンをベースにしたWordやExcelといったoffice製品による書類作成がベースだ。
これらは確かにどの職場でも活用されているものだが、行政のフォーマットは使いにくいというか違和感が多い。
例えば、事故報告書はExcelであるが、無理やり結合している箇所が多いうえに「なぜこの項目が中央揃えの設定なんだ」と思ってしまう。まぁ、それで運用しているわけだから問題ないのだろう(そもそも、ちゃんとチェックしているのかも疑問だが・・・)。
加速する義務化
介護事業を継続するには、行政への書類提出が切って切り離せない。高齢者への介護サービスを提供しつつも、不平を飲み込んで〆切までに書類作成をする。そんな日々が続く。
そうして時間をかけてようやく提出して一区切り・・・と思いきや、今度はまた別な書類やら統計調査やらの提出を求められる。ときどき「書類提出が介護の仕事なのか?」と思ってしまう。
しかし、この手の話は書類に限った話ではない。義務化事項への体制づくりも介護事業では必要であり、毎年どんどん増える。
しかも、義務化事項も書類同様に「これって別な義務項目でもなかったっけ?」という感覚に陥ることがある。
また、人手不足というわりに介護の質も高めようとすることから、キャリアや資格を優先するような義務化もある。その1つに2024年の無資格者への「認知症基礎研修」を修了することの義務化がある。
これは個人的に大きく疑問な義務事項である。
そもそもキャリアや資格は働き手に委ねるものであって義務とするのは変だし、介護で働いている人の中には高齢スタッフもいることから受講したところですぐリタイヤという可能性もある。
そもそも、義務化しておきながらその費用負担は事業所任せなのも腑に落ちない。介護業界を適切にしたいわりに、義務化しておいてあとは事業所に丸投げなのである。
体制は大切だが、義務化はほどほどに
介護施設であれば年2回以上の避難訓練は必要である。感染予防対策だって研修も含めた体制は必要である。
これらは今までもあったが、それらに加えて昨今の甚大な震災や世界を席巻した感染症を起因して、BCP(事業継続計画)の立案・研修そして訓練も行う必要がある。一部は既存の体制と同様にして良いとされているものの、義務化事項としてはそれぞれで体制づくりすることが望ましいとされている。
今のところ完全にこの体制を構築できている事業所および施設は少ないと思われる。そう言えるのは、行政からこの手の指摘を受けたところで「他ではどうしていますか?」と質問しても具体的な対策を提示できない様子から察することができる。
介護サービスを適切に行うには運営基準といった体制は必要であるが、あまりに「これも義務にしよう」「あれも義務にしよう」と言ってばかりでは、それこそ高齢者介護の仕事はどこかに行ってしまう。
義務化する前に少し落ち着いて、この人手不足において介護が行うべきことは何なのかを考えてみてはどうだろう? 何なら1つ義務化する前に現行の義務事項を1つ減らすという考えもあったほうが良い。
――― 別に書類や義務事項を非難しているわけではない。多少の疑問はあれど、これらは大切なプロセスであり整備すべき体制である。
しかし、〆切とか義務と言われると面倒とか反発してしまうのが人間だ。
もう少し行政と介護事業が歩み寄った制度づくりをすることが、介護業界を継続・発展することにつながるのではないだろうか。
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。