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排泄管理も介護の1つであり、認知症ケアにも意義がある

■ 排泄管理も介護の1つ


介護の仕事というと、オムツ交換や入浴などの身体に関わる直接的な介助をイメージされるかと思う。

しかし、広い意味で見ると健康管理も大切な仕事の1つである。特に独り暮らしの高齢者は健康管理が雑になりがちである。記憶力や理解力の低下などの課題から、介護者が受診に付き添ったり内服薬の準備などが必要となる。

そして意外に介護の仕事として目立たない役割として「排泄管理」が挙げられる。高齢者の排尿や排便がちゃんと日々なされているか、そして尿量や尿色、排便量や形状などを把握する。

介護を受けている高齢者全員に排泄管理が必要というほどではないが、消化器系に疾患を抱えている方や看取りとなっている方はもちろん、軽度の方でもなるべく把握しておくに越したことはない。

排泄は単独の要素ではなく、心身の状態に連動している。
そして排泄管理は、認知症ケアにおいても重要な要素の1つとなる。


■ 排泄管理とは何をする?


そもそも排泄管理とは何をするのか?

まずは上記でもお伝えしたように、まずは排尿や排便が定期的にちゃんと出ているかどうかの把握である。

そして疾患によっては尿量を測定したり、尿色・尿臭および血液やおりものなどを確認することもある。尿量はバルーンから尿をカップに出して計測することもあれば、尿取りパットを計量器にかけてパットの重さを差し引いて計測するなど色々だ。
さすがにトイレに排尿したものは計測できないが、尿色は確認できるし血液やおりもの等は拭き取ったときに確認することもある。

また、排便においては量はもとより、形状や硬さなどから「軟便」「普通便」「硬便」といった分類化して共有される。このあたりの表現は統一化されているようでローカルだし、量や形状の判断はそのときに確認した介助者の主観によることが多いので割と大雑把と言える。

但し、排泄というのは人間にとって最大のプライバシーであることを忘れてはいけない。それはトイレで自力で排泄できる方でも、寝たきりでオムツにされる方に対しても羞恥心への配慮は必須である。


■ 排泄がないと落ち着かなくなる


さて、排泄管理と認知症ケアがどうつながるのか?

別に認知症という括りで難しく考える必要はない。誰だって排泄において大なり小なりの異常があれば、それが精神面に影響することくらいは普通であると知っていれば分かる話だ。

例えば、会議が長引いてトイレに早く行きたいときに「これについてどう思う?」と問われたところで「こっちはそれどころじゃねーよ! それより早く終われよ馬鹿野郎!!」みたいに思わないか?

また、便秘がちの人がお腹をさすりながら「・・・今日で5日間出てない」と暗い表情と不快感を抱いて平常の生活を送るのは辛いことである。

それが認知症の高齢者であれば尚更である。排尿や排便が思うように出ないだけでなく、そのこと自体を自覚・記憶できないのことから、ただただ不快感が募る。そして肉体の不快感が認知症の症状に拍車をかける。

身近なケースとして、とある認知症の利用者はいつもニコニコしているが、排便が2日以上ないと表情が険しくなる。そして、介護スタッフに根拠のない自分なりの不満や憤りをぶつけるようになったり、歩行が不安定になったりと精神的にも肉体的にも異常が出る。

しかし、排便があるとスッキリしていつも通りニコニコされる。ポジティブ思考で歩行も軽快になる。それはそれはもう露骨なほど状態が変わる。


■ 排泄管理は認知症ケアにつながる


これはあくまでも1つのケースであるが、排泄状況によって認知症の方々の行動や発言に変化が出ることはある。

その方の行動や発言に変化が出たときの検討点として、排泄面に焦点を当てるということも1つの認知症ケアであると思う。

そのためには、ご本人のプライバシーや羞恥心に配慮しつつ、可能な限り日々の排泄管理を行い記録していくことが重要となる。記録を時系列で並べていくことで「何か様子がおかしい・・・排便が3日ないからかも」「尿色が濃いオレンジ色だけど、おしっこが出にくくなってなって不快なのかも」とった考察につながる。

言動に表れていることは肉体にも表れる。
肉体に表れていることは言動にも表れる。

これは認知症ケアの1つの対応として重要な考え方である。


■ 医療連携も1つの要素


とはいえ、排泄管理をして対応を考えるには介護だけでは限界がある。

そこで医療連携が重要となる。ちゃんと受診してご本人および介護者から体の状態を伝えて、診察や検査も踏まえて利尿剤や下剤といったお薬の処方をしていただくプロセスも広い意味での介護だ。

もちろん、食事・運動・睡眠といった生活習慣を適切にすることが基本だ。しかし、いくら介護者が生活習慣をあーだこーだ伝えても聞く耳をもたない高齢者は多い。

しかし、病院に行って医師から「塩辛いものはほどほどにね」「じっとテレビばかり見てないでたまには歩こうね」と言われることで改善につながることもある。また、介護する側としても「〇〇先生がおっしゃってたでしょう?」と促しやすい。ときにはご家族からも後押しもお願いしやすい。

排泄管理は介護の1つであり、かつ認知症ケアにも寄与する。そのためには介護としてのスキルだけでなく、医療・家族そしてご本人との連携をもって健康状態および認知症の緩和につなげることが大切なのだ。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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