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施設職員は業務時間にメリハリをつけないと、エンドレスな介護に巻き込まれる

ここ2日間の記事は、介護施設において業務時間が過ぎても帰らない施設職員がいることに対して、その疑問と要因について考察した。

そして本記事では、その要因の1つである「次々と入居者の介助・対応に出くわす」について解説することで、施設職員が業務時間を過ぎても帰らないという問題について一区切りしようと思う。

おそらくだが、今回お伝えする要因こそが、施設職員が業務時間が過ぎても帰らない要因の大きな割合を占めていると考えている。
また、それが引いては介護施設と言う閉鎖的な空間において、時間を意識して仕事をする思考を低下させているとも考えている。

しかし、それが当たり前になることの弊害やリスクも多分にあるということを介護施設で働いている方々にはご理解いただきたい次第だ。


■ 介護施設とは、他者の手を借りて生活する「住まい」


介護施設とは、入居者たる高齢者が24時間住まう場所である。
そこは「住まい」なので、基本的に施設の中で入居者は自由である。

食堂と居室を行き来したり、トイレで排泄を済ませたり、リビングで入居者同士でおしゃべりしたり、居室でテレビを見たり・・・このように書くと、何だか気楽な感じを受けるだろう。

しかし、それはある程度の健康が確保されている場合に限る。

自然のことであるが、人間は一定の年齢を超えると肉体が衰えていく。
そして高齢ともなると、身体に何かしらの問題を抱え、思った通りに動けるなくなる。忘れっぽくなったり、意思疎通に時間もかかっていく。

そのような方々が自宅で住まうことが困難と周囲に判断され、その1つの選択肢として介護施設に入所することになる。

それはつまり、施設職員という他者の手を借りて、施設という共同生活空間で生きていくということだ。

それ自体は仕方ないとしても、それを介護を行う介護施設という視点で見たとき、そこに住まう入所者の数だけ、一定数の介助を行う必要があるということを意味する。

それが施設における介護という仕事であるが、意外に施設職員であっても、その当たり前の前提を理解していない人もいる。


■ 施設とは、常に介護業務が発生する場所


もちろん、介護施設に20人の入居者がいるからといって、その20人に対しての介護が24時間ずっと絶え間なく行われるわけではない。

入居者だって人間なので、常に動き回る方でも寝るときは寝るし、トイレに執着がある方だって24時間ずっと便器に座っているわけではない。

しかし同時に、入居者だって人間なので、いつどのようなタイミングで行動するかは自由であり、その行動に介助を要する場合、施設職員はそのタイミングに合わせる必要がある。

つまり、施設における介護は、「入居者の自由な行動に合わせる」ということも理解しておく必要がある。

それは、入居者の自由な行動は入居者の数が多くなると、その分だけ施設職員がそれに合わせて動くことになるという話だ。

それがいわゆる介護業務であり、施設職員が行うことであるわけだが、介護施設にいる限り、その介護業務はランダムに発生する。

施設業務では時間帯で業務を定めているとはいえ、入居者ごとのランダムな介護業務に随時対応することも多い。

何が言いたいのかと言うと、
介護施設は「住まい」として入居者が24時間いるわけだから、そこにいる限り、24時間介護を要する場面に出くわす
ということを言いたいのだ。


■ 施設にいる限り、ずっと介護業務に巻き込まれる


ここまでで、主題たる「施設職員が業務時間を過ぎても帰らない」という話と何が関係があるのかと思われたかもしれない。

これが大いに関係あるのだ。

と言うのも、私がクラスターで人員不足となった介護施設にヘルプに行った際、施設職員のほとんどが、業務時間が過ぎてもエンドレスに介護業務に当たっている場面を目撃した。

それに気づいたのは、夜勤を終えた施設職員が「では、これで上がりま~す。お疲れ様でした~」と言ったはずなのに、その5分後に入居者のトイレ介助を行っていたからだ。

その場で私が「介助を代わりますよ」と申し出るも、「すぐに終わるから大丈夫ですよ」と言われた。確かに数分で終わった。

しかし、その後に同じ施設職員が、今度はリビングにいた入居者の食事介助を始めた。丁度、おやつの時間帯だったので、食べるのがゆっくりな入居者に声掛けと食事介助をしようとしたわけだ。

さすがに今度ばかりは「もう業務時間終了から30分以上過ぎているので、帰ってください。ゆっくり休んでください」と伝えて帰宅させた。

―—— と、このような状態に気づいてから注意深く施設職員を観察していると、上記のようなランダムに発生する介護業務に目につくたびに対応しているから、業務時間を過ぎても帰らない、いや「帰れない」ということに気づいた

しかも、その場で介助を要する入居者のために自分で対応したい、という気持ちからか、どんなに「代わりますよ」と申し出ても自分で対応してしまう。

1人の入居者の対応を終えても、3メートルも歩かないうちに別な入居者の対応に出くわす。そうして、そのたびに対応する。
そのため、いつまで経っても施設を出ることができない。つまり、いつになっても帰ることができない ——— とのような状態が日常化しているのだ。

そりゃあ、業務時間が過ぎても帰らないわけだと納得した。


■ 業務時間にメリハリをつけるため、まずはお願いしよう


介護を要する入居者に出くわしたら、対応してあげようと思う気持ちは素晴らしいことだと思う。

しかし、介護施設という24時間ずっと入居者がいる空間においては、一つ歩を進めるたびに介護という対応を迫られる可能性がある。

それは介護というほどの直接的な対応でなくても、入居者に声をかけられて「テレビの調子が悪いの、見てくれない?」と声をかけられたり、認知症の症状として「窓の外に誰かいるから、見てくれないか?」と何度も懇願されることもある。

1つ1つに対応していたらキリがないとまではいかないが、どこかで区切りをつけないとずっと帰ることができない。作業指示でもなく、誰も見えないところでやることもあると、それは「タダ働き」とも言える。

施設職員はもっと、メリハリをつけて仕事をするべきだと思う。
もっと言えば、メリハリをつけた業務体制・職場環境にするべきという話だ。

すぐに体制を変えることはできないにしても、勤務中の施設職員にお願いするという雰囲気づくりも必要だ。

どうしても「勤務している人たちは忙しそうだから、自分でやってしまおう」と考えることが多いだろうが、それは少し違う。
自分がお願いすることで、お願いされた施設職員も「帰るときに介助を要する場面になったら、勤務中の職員にお願いしてもいいんだ」と考えるようになる。

このように、少しずつでいいから仕事にメリハリをつける習慣づくりを職場全体で作っていくことが大切だと思う。

目についたところから片っ端に自分で対応していては身が持たない。
ちゃんと時間通りに帰ることは、引いては業務時間中に質の高い介護を提供につながる。

そのためには、まずは気兼ねせずに時間になったら帰るという環境づくりが必要である。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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