介護現場はデジタル化よりも、個人情報を裏紙として使うことをやめるほうが先だと思う
介護業界では、人手不足をデジタル化によって補おうとする動きがある。昨今で言うところの、DXだの生産性の向上と呼ばれるものだ。
デジタル化によって人手不足が補えるのかはさておき、このような動きは業界単体ではなく、超高齢化社会に向けた課題として国も啓蒙している。
しかし、個人的には10年先も大して変わることはないと思っている。
それは介護業界がデジタルという媒体に対して苦手意識があるということも挙げられるが、根本的に自分たちが現在行っている働き方に対して問題意識がないことが大きな要因と考えている。
分かりやすく言えば「今までやったきたことを、これからも」という、まるで何かのスローガンのような風習が未だ根強く残っている。
もしも他業種であれば、このような現状維持を貫こうとする会社は淘汰されてしまう。しかし、介護という仕事は社会問題の解決のためにある側面もあることから、現状維持であっても継続できてしまう。競争も少ないので淘汰されることもない。
このような状態なので、自分たちが日常でやっている仕事の進め方に対して疑問を抱く機会が乏しく、変化を受け入れたり新しいものを取り入れるという、アップデート思考が養われにくくなる。
仕事の進め方に対して疑問を抱く機会が乏しいということが、デジタル化の遅れにつながっていることは、色々な実態からも見受けられる。
辛辣なことを言うが、そもそも介護業界はデジタル化以前に一般ビジネスマナーに欠けている。その1つに個人情報の取り扱いの雑さが挙げられる。
介護は高齢者という一個人の身体や生活に踏み込んだ支援である。これまでの人生背景やご家族の住所や連絡先といった個人情報をたくさん取り扱うことになる。
しかし、その高齢者個人およびその関係者も含めた情報を、デスク上に広げたままにしていたり、介護現場でも作成中の記録や業務日誌といった個人情報に類する媒体を、その辺に放置していることも珍しくない。
一番嘆かわしいのは、未だに個人情報を平気でメモ用の裏紙にしている現場があることだ。
これはキャリアは関係ない。自事業所のベテラン職員でもやるし、外部連携している福祉事業所の人たちにも見られる。
事務コーナーの電話に備え付けのメモ用紙を使おうとして、何気なく裏を見たときに「〇〇〇〇様」と思いきり利用者の名前が書かれているうえ、それが介護支援計画書や受診後の診療明細だったこともある。
たまにデイサービスのスタッフも同じようなメモ紙を持っている姿を見かける。何なら利用者の乗降中に風で飛んだと思われる、その日の送迎リストなども道端に落ちていることもあった。
もちろん、昨今ではタブレット端末やスマホアプリで情報をやり取りしている姿も見かける。
しかし、外部に持ち出す情報端末に対してパスワードをかけていない様子も見受けられる。もしも、その端末を落とした場合はあっさり情報漏洩という結末につながってしまう。
何が言いたいのかと言えば、このような情報の取り扱いへの配慮もないまま、ただデジタル化を進めたところで色々なトラブルが巻き起こることは簡単に想定できるということだ。
それは生産性の向上どころか、下手したら現状維持で何とかなっている介護業界そのものの失墜を招く恐れもある。
介護業界はまず、安直に「デジタル化して生産性向上しよう」という前に、時代に即した教養を身につけるのが優先ではないだろうか。
そもそも日本はデジタル後進国の位置づけにある。さらに歴史を遡ると、こ個人情報保護の体制の遅れがグローバル化においてビジネスの妨げになった時期もある。
いきなり生産性向上という範囲が広く曖昧な話をするよりも、ビジネスとしての基礎(土台)を整える必要がある。
その手始めとして、個人情報保護についての理解は必須である。それは知識だけでなく実務として日常化しなければいけない。
そのためには、介護現場では何でもかんでも裏紙にする癖をやめるべきであると思う。業務に関してプリントアウトした書類は一切裏紙にせず、不要であればシュレッダにかけるくらいの体制にするべきだ。もちろん、これはメモ紙に書いた情報も同様の扱いである。
「もったいない」という声もあるかもしれない。しかし、もったいない精神は結構だが、それによって個人情報漏洩という賠償金もののトラブルを起こすよりはマシである。
このような他業種では当たり前のマナーにも目を向けられないうようであれば、おそらくデジタル化なんて夢のまた夢であろう。
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。
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