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「ご飯は手作りに限る」と思うのは分かるが、高齢者向けに作られた食品だって進化していると伝えたい

介護施設における調理業務


介護施設では、朝食・昼食・夕食を基本に複数の利用者(高齢者)に対して一度に食事を提供する。

利用者と一緒に調理をするという形態の施設もあるが、大抵は施設職員や調理専門員が食事を準備するだろう。

利用者の嚥下状態に応じて、サイズを細かく刻んだり、トロミ剤を混ぜたり、ミキサーで食材の原型がないほどドロドロに作業もある。

これらを含めて調理業務と呼ぶわけだが、一から食材を切る・炒める・煮る・出汁をとる・味付けをする・・・なんてことを全ての介護施設で行っているかと言えば、決してそんなことはない。

この人手不足の時代において、特に介護施設においては調理にじっくり時間を割いていると、利用者の介助に支障が出てしまう。

また、当然ながら調理業務にはコストがかかる。食材費、水道光熱費、廃棄費、そして人件費・・・。発注や献立作りだって人手(人件費)を要する。

利用者の食事提供というテーマだけでも、業務フローや収支に関して効率的に考えなければいけない。

何より「調理が苦手」「家事が不得意」という施設職員もおり、調理業務にストレスを抱いてしまうという問題もある。


配食サービスの活用メリット


そこで、現代においては食品の配達サービスがある。

高齢者の栄養価や嚥下対応に配慮された調理済みの食品が、冷凍または冷蔵の状態で施設に届くのだ。

「え、冷凍食品を施設で提供しているの?」と思われたかもしれない。

まぁ、冷凍食品と言えば冷凍食品だ。否定はしない。
しかし、食品を配達してくれる店舗や企業では、管理栄養士が高齢者の栄養価を計算して献立を立案し、かつ塩分控えめで味付けもしっかりしている。出汁をベースに味が薄いこともなく、体に優しいと伝わってくる。

調理するときは湯せんや自然解凍し、あとは盛り付けするだけで完結する。

嚥下対応として刻みやミキサー業務は必要となるが、商品によってはムースやペースト状になっているものもある(もちろん少し割高だが)。

調理業務だけでなく栄養価も献立づくりも簡略化されるので、人員配置だけでなく総合的な調理コストの削減につながる。

介護事業ではICTによる業務効率・生産性向上が謳われているが、このような商品やサービスを物理的に活用することだって重要である。

高齢者向けの宅配弁当を営んでいる店舗であれば、介護施設向けに配食してくれることもある。店舗によって異なるが、事前に予約しておけば冷凍ではない調理したての食品を届けてもらえることもある。

おかゆだってお願いできるし、きざみやミキサーも対応してもらえることも珍しくないので、店舗ごとに比較してみるのも良いと思う。


食事は手作りに限る?


とは言え、このような介護施設向けの食品配達サービスは今やどの施設でも活用されているだろう。

栄養価も配慮されて美味しいとなるならば、アレルギーや衛生面などに注意する以外、施設の利用者に提供するには申し分ない。運営面としても人員配置やコスト面も効率化が図れるので願ったりだ。

・・・が、現場職員のなかには、この手の食品やサービスを快く思っていない者も少なくない。

それは「利用者に出すご飯は、やはり手作りに限る」という、強いこだわりによるものだ。もはや手作りへの執着と言っても過言ではない。

手作りを否定するわけではないが、1から食材を切って炒める・煮るなどをすることで確実に美味しい食事が出来上がるという保証はない。

しかも、調理専門員がいるわけでない介護施設だって多いわけであり、いくらレシピがあっても、同一の質の食事を準備するのは難しいと言える。

しかも施設によっては、(良くも悪くも)介護業務を行いながら決められた時間で調理を行うところも少なくないため、手作りなんてしていたら残業が当たり前になったり疲労困憊になってしまう。

また、「手作りのほうが利用者さんが喜ぶ」という職員もいるが、実際のところ「これは手作りだ!」「やはり手作りのほうが美味しいね!」なんてグルメ漫画のような面倒くさい評価をする利用者は見たことがない。

利用者からすれば、手作りだろうが冷凍食品だろうが違いは分からない。
となると、手作りにこだわるのは、もはや利用者のためではなく職員の自己満足という話になる。


愛情を込めることも大切だが・・・


改めて言うが、介護施設の食事に関して手作りを否定しているわけではない。どちらかと言えば、高齢者向け食品のクオリティが高いという話だ。

利用者が食べるものは愛情を込めたいという気持ちは分かるが、自分のこだわりを押し付けるのは違うだろう。

行事で一緒に調理する場合は別として、平時においては誰がどのように食事を作ったかなんて利用者が知らないまま召し上がっても問題ない。

そもそも、一般家庭で出される食事だって、準備した人がどのくらい手間暇をかけて(何なら早起きして)作ったかを気に払わないのではないか?

ときには「今日のご飯美味しいね、いつも作ってくれてありがとう」と感謝の言葉を珍しく伝えたら、「今日はスーパーで買ったんだけど・・・」と気まずい空気になったなんて笑い話(?)もあるほどだ。

――― 大切なことは、利用者が出されたご飯をどう感じるかである。

美味しいと思えば良いし、嫌いな食品を残すのだって自由なはずだ。
それを「こんなに時間をかけたのに」「手間暇かけたのに」と不満に思うくらいならば、最初から調理済みの食品を出したほうが良い。

手作りにこだわるのはプライベートならば好きにすれば良いが、介護施設においては仕事である。愛情を込めることも大切であるが、時間と労力に見合った成果を出すことも必要だ。

美味しい食事を提供することがセールスポイントならば別として、安心できる生活空間と生活支援としての介護施設においては、独善的に食事作りの工程に執着されるのは経営として少し困る。

もちろん、人間にとって食事は利用者の楽しみの1つであり、その食事を準備することは重要な役割ということは忘れてはいない。

しかし、せっかく各企業が試行錯誤しながら高齢者向けの商品を開発して、さらにそれが運営にも寄与するならば、多少の料金はかかってもその恩恵を受けることがあっても罰は当たらないのではないだろうか。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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