八月の海(2) 〜ドライブ〜
朝の仕事が終わる午前11時から夕飯が始まる17時半までは私たちは自由時間でした。また、連勤にならないように1人ずつ交代で休日があります。
せっかく海沿いで、近くに観光スポットも多いので、絢希が夜に来た日の2日後はもともと、この日が休日の航太の運転で、私と航太はドライブに行くことにしていました。
航太はせっかくだからということで、昨夜の絢希初出勤の日に、麻理と絢音も誘っていました。
この日お休みの航太が、少し離れた駅まで車を借りに行き、私と麻理と絢希がいつも通り午前11時に退勤するタイミングに合わせて、ホテルのフロントに迎えに来てくれました。
車の中では、海を横目に男女2人ずつ合わせて4人で楽しく会話。この時間は、私にとってまさしく、それまで大学生活で経験しなかった青春そのものでした。
私「俺、大学では史学科でさ、あ、えっと文学部、歴史の史ね」
絢「えー、凄い!」
(ほんとこの子明るいし優しいな)
「で、あちこち出かけたり、歴史の史跡とか行くの好きなんだ」
「へー、なるほどー!え、そういうとこで撮った写真って、インスタとかにあげてたりする?」
「あ、うん、あげてるよ」
「え、それは普通に見たすぎる!」
「あ、じゃ交換しようよ」
「うん!」
…やった、インスタ交換できた…!!!
しかも今の割と自然な流れだったんじゃない…?車の中で飛び跳ねそうでした。
私と航太の2人は大学3年(私は一浪なので2年)、麻理と絢希の2人は1年のため、2歳の差がありましたが、どういう訳か2日目なのに既に4人ともお互いタメ口で、平然と話せる仲になっていました。
その後、ドライブでは私が見つけていたインスタ映えスポットや、地元名物のハンバーガー、ロープウェイの先にある恋愛に縁のある神社など、あちこちを巡り、美味しいものを食べて写真をたくさん撮って、私たちは自由時間をたっぷり堪能し、夜の仕事が始まる前の午後5時ごろに、ホテルに戻りました。
夜はいつものように、レストランのサービスが始まりました。
従業員同士で無線で連絡を取れるようにつけるインカムを、普段はつけない私がつけることになりました。
仕事にも関わらずイヤフォンをしているような耳元の感覚と腰ポケットに慣れないでいると、絢希が話しかけてきました。
「緊張してる?」
「…うん」
「やっぱりそうだよね?(笑)だってめっちゃもぞもぞしてるもん(爆笑)」
「マジかよ、恥っず😅」
「でも、インカム似合ってる、かっこいい」
…不意にドキッとしました。ずるい、なんでそんな笑顔でサラッとそんなこと言うかな…
絢希と2人でリセットではこんな場面もありました。
絢「めっちゃ残ってる…」
俺「バイキングなのに、なんでこんな残るんだろね」
絢「それね、食べたいもの選んでるはずなのにね」
俺「そいえばさっきのハンバーガーめっちゃ美味しくなかった??」
絢「え、めっちゃおいしかった🥺」
レストランの上司「喋ってないでそこ早く片付けて。お客さん次来てるから。そこで喋ってるとすっごい目立つからね」
お咎めを受けてしまいましたが、私たちはその場でこっそり目を合わせて、クスッと笑いました。
2日目にして、相当距離が縮まった実感がありました。
私は毎晩、航太と先ほど出てきた上司と、仕事のあとは温泉の露天風呂とサウナに入っていました。仕事終わりに露天とサウナに入るこの時間は、至福の時間でした。
そしてそのお風呂の後に、私と航太の部屋にNさんや他の上司が来て任天堂Switchで夜まで遊んだりする日もありました。
海辺の夜は、とても涼しくて星が綺麗で、温泉上がりの部屋も本当に気持ちがよかったです。
さらには友達や好きな人と出かけることができたこの2日目の夜の、胸がいっぱいになるような新鮮な感覚は、半年経った今でもはっきりと覚えています。
(3)へ続きます。
※登場人物は全て仮名にしています。
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