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ダイナミックプライシングは新しいビジネスモデルでも何でもないが、注目されているワケはなぜか。

ダイナミックプライシング(以下DP)が、昨年ごろからにわかに注目されている。

稀にDPがいかにも革新的で、先進的な取り組みであるように書かれている記事を見かけることがあるが、DPそのもの自体は決してそんなことはない。

むしろ、何十年も前からあるセールスマーケティングの話であり、特別なものでもなく、身近なところにDPは溢れている。

例えば、飛行機の航空チケット予約サイトやホテルの予約サイト。
同じ機体・同じ航路・同じ座席であったとしても、繁忙期と閑散期では全く価格が異なる。

さらに身近な話でいくと、スーパーのお惣菜売り場。
夕方を過ぎると100円引き200円引きは当たり前、閉店間際になれば半額になっている事さえあるかと思います。

つまり単に需要と供給に応じた価格設定を行い、収益の最大化を図る行い全般のことを指している。

このようにDPは極々、我々の身近な存在として居たのだが、ここ数年じわりと注目を集めているワケを簡単に解説していきたいと思います。

ダイナミックプライシングが注目されているワケ

冒頭にも書いた通り、決して新しく革新的なものではありません

ただしこれまでよりも、テクノロジーの世界での文脈でDPが語られることがほとんどとなってきている。

それには以下2つの理由により、これまで以上にその威力を最大限に発揮できるようになったため、近年では注目を浴びている。

①AIはじめとするテクノロジーの進歩により、高度な需要予測がタイムリーに行うことが可能になった。
②スマートデバイスの普及により、DPと相性の良いオンラインの世界で、1対1の取引が高速で行うことが可能となった。

まず①ですが、ホテルの価格(値決め)を例に挙げてみる。

古くからホテルはレベニューマネジメントを行ってきており、客室の稼働率を高めて、収益を最大化させるための施策を行ってきた。

これまでの経験則や過去の実績を見ながら、ホテル支配人がいわゆる勘ピュータで日々価格表を作ってきていた。もちろん、膨大な過去データをもとに、方程式とも言える外さない価格モデルがそこには存在していた。

しかし弱点もあった。
膨大な価格変動要素データを一度に人間が処理できないこと、またタイムリーな価格設定をすることができないことの2つである。結局は人出を介して行っていたので、大量データを処理しきれず、日々刻刻と変わりゆく、世の中の需要と供給に対応しきれていなかった

AIをはじめ、テクノロジーが我々の身近なものになり、以前と比べて格段にとっつきやすいものになった。そのため、これまでは莫大な投資体力のある大企業や国レベルでないと取り扱えなかったテクノロジーが、まるで電卓を一台持つような感覚で、手に入る時代になったためだ。


次に②ですが
個人が一人一台以上のスマートデバイスを持つ時代となった。そのため、オンラインで1対1の関係ができるようになり、一人一人にオンデマンドで商品やサービスを提案できるようになった。

つまり、価格の変動要素の一つに「個人」というパラメータが加わり、より柔軟に個に合わせた価格提案が可能となった。

これまでも個の特性に合わせた価格設定は当然あった。しかしオフラインの世界で全てに対応しきることは現実困難な仕業であったが、オンラインの世界であればいとも簡単にできてしまう。

ダイナミックプライシングは万能かと言われるとそうでも無い

まだまだ課題はある。

その一つにAIが決定する価格に万人が納得感を持って購入してもらえているか。答えはNoだ。

昨年もいくつかのライブイベントでDPが試行的に実施されたが、まだまだ課題はありそうだ。

このようにチケット価格の不公平感、また早いもの負けという事態が起きてしまっているのが実情のようです。

しかし、これはライブイベントという特性上の課題が起きているだけであって、業種業界によっては、早期の社会実装が切望されている。

個人的に早期社会実装を期待している

駐車場
すでに駐車場予約サービスのakippaではDPが実装されており、駐車場近くでのイベント有無や普段の利用状況から需要を予測し、それに応じた値段に価格を設定している。

しかし、タイムズやリパークといった大手では、実装に至っていない。akippaはスマートデバイスの利用が前提となっているサービスのため、相性は良いが、支払い含めアナログの残っているコインパーキングだとなかなか実装が難しいのが実情だ。

コインパーキングほどDPを実装すべき業態は無いと思っている。稼働率が全てのコインパーキングは、遊ばせておく時間が長ければ長いほど売上損失に直結する。

けいえす自身も5年ほど前に提案を行ったことがあるが、まだ時期尚早であった。改めてチャレンジしたいかもしれない。

まとめ

DPは古くからある考え方ではあるものの、テクノロジーの進歩で高度な需要予測が可能となった。

大量のデータをタイムリーに、一人一人のスマートデバイスを通じて一物多価でエンドユーザに提供できるようになった。

しかしまだまだ運用経験の少なさから、本来は顧客満足度を上げるべきではるものの、真逆の結果を出してしまっている事実もある。

現時点では、100%DPに頼り切るのではなく、あくまで参考値として取り扱う程度となりそうだ。


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