内なるトリックスターとつながろう!
GAVIさんの『【雑感】これからのリーダーは”やんちゃ”でなくっちゃ変革なんて出来ない』を読んで、”やんちゃ”とは、私たちが、《私たち自身の無意識の底に潜んでいるトリックスターとつながった姿》ではないかと思い、この記事を書いています。記事の終わりでは、アートの思考をビジネスに注入しようという 長谷川 一英 さんの試みにも触れたいと思っています。
GAVIさんの記事はこちらです。
この記事で、GAVIさんは、閉塞感に覆われた組織を変革できるのは
と語っています。「平気で前例をぶっ壊すけれども、どこか憎めない」というところが、私にトリックスターを思い出させたのです。
トリックスターは、心理学者のユングが、《人類に共通する無意識の在り方=「元型」》のひとつとして提唱したものです。
ユングの「元型」の中では、アニマとアニムスが良く知られているのではないでしょうか? アニマは、大多数の男性が共通して無意識のうちに抱いている女性のイメージ。アニムスは、反対に、大多数の女性が共通して無意識のうちに抱いている男性のイメージです。
但し、イメージを抱くといっても、自分の外側に「理想の女性像」や「理想の男性像」を想定するわけではありません。
アニマは、男性自身の無意識に潜んでいる《女性的なるもの》であり、アニムスは、女性自身の無意識に潜んでいる《男性的なるもの》です。
男性は、対外的には男性らしい態度(ペルソナ)を取っているが、内面に女性の魂を持っている。女性も、対外的には女性らしい態度(ペルソナ)をとりつつ、内面に男性としての魂を持っている。ただし、そうした異性としての魂を、本人たちは意識することがない。ユングは、そのように考えたのです。
詳しくは、こちらをご参照ください。
トリックスターも、このような《意識されない魂の在り方》のひとつで、次のような特徴を持っています。
ここからは、おそらくGAVIさんの本旨からはズレてしまうと思うのですが、私流の解釈で話を進めます。
私たちは、「答えがある」世界をメンバーシップ型雇用に守られて生きてきた時間が長すぎて(……というと、主に中高年の話になるのでしょうが)、組織人としての自分(ペルソナ)と内なるトリックスターを結ぶ回路を完全に遮断した状態になってしまっているのです。
GAVIさんは、(と言っても、私の解釈ですが)、私たちは、内なるトリックスターと絶縁する代わりに、
に磨きをかけてきたのだと言います。
そして、日本企業は、この『業務遂行に関する能力』に長けた人間を重宝しマネジャーに抜擢しつづけてきたと言います。私の勤め人時代の経験、および、企業人向け研修に携わってきた経験に照らして、GAVIさんのおっしゃる通りです。
マネジャーは、若手社員のロールモデルです。そのマネジャーを十年一日のごとく同じ基準で選抜しているうちに、社員全体が多様性を欠いた「金太郎飴」状態になってしまったというのが、かなり多くの日本企業の現状ではないでしょうか? これからVUCA時代の荒波を乗り切っていこうという時に、これは実に心細い状態と言わざるを得ません。
GAVIさんは、これからのリーダーは”やんちゃ”ー私の解釈では《トリックスターとつながった状態》ーでなければならないと言います。その通りだと思います。
ただ、それは、トリックスター性の極めて強い人間(例えば、坂本龍馬のような)が現れて私たちを閉塞状況から救ってくれるのを待つことではないと思うのです。
トリックスターが、私たちの内なる《意識されない魂の在り方》のひとつだということを思い出してください。私たちがやらなければならないことは、内なるトリックスターと組織人としてのペルソナの間で回路をつなぎ直すことです。私たちが、自らを”やんちゃ”にすることです。
トリックスターは神話や芸術の世界の住民でもあります。その意味で、ビジネスにアートの思考を注入してイノベーションを創出しようという 長谷川 一英 さんの試みは、イノベーションの本質を突いた素晴らしい取り組みだと思っています。
長谷川さんの記事はこちらです:
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
『内なるトリックスターとつながろう!』おわり