日本人が英語のリスニングが苦手なのは、《結論保留脳》だから。
よく、日本人は英語のリスニングが苦手だと言われます、それが事実だとしたら、それは学校教育の不備や個人の努力不足のせいではなく、日本人の脳が結論を控えて我慢づよく相手の言葉を聞きつづける《結論保留脳》であるためだと考えます。
1.日本語では、結論保留状態が長くつづく。
簡単な例をあげます。日本語の《文例1》と《文例2》を、それぞれ耳で聞いている場面を想像してください。
《文例1》私は公園に行きました。
《文例2》私は公園に行きませんでした。
《文例1》は肯定文、《文例2》は否定文と、意味は真逆です。それなのに、「私は公園に行き」まで、まったく同じ音が9音つづきます。
聞き手は、この9音を聞き終えて、初めて、この文が肯定なのか否定のなのかを知ります。つまり、結論を保留したまま9音を聞きつづけるわけです。
次の文例では、結論保留状態は、さらに長く続きます。
《文例3》今朝、私は、公園で散歩をしました。
《文例4》今朝、私は、公園で散歩をしませんでした。
結論を保留した状態が、「今朝、私は、公園で散歩をし」という16音にわたってつづきます。
そして、修飾語を前にもってくる日本語の特性から、この結論保留状態はいくらでも長くなる傾向にあります。
《文例5》10月初日の今日、私は、近所の公園で散歩をしました。
この文では、30音近く結論保留状態がつづきます。
このような日本語で育ってきた私たちの脳は、結論を焦らず、それを保留したまま、じっと相手の言葉を聞きつづけられる《結論保留脳》に出来上がっているのだと、私は考えています。
ところが、この《結論保留脳》で英語を聞くと、とても困ったことが起こります。どう困ったことになるかを見るために、日本語と真逆といってもよい英語の構造を振り返っておきましょう。
2.英語は「はじめに結論ありき」の言語
英語は、日本語に比べると、はるかにせっかちで、先に結論を打ち出してくる言語です。
《文例1・英語版》I went to the park.
《文例2・英語版》I didn't go to the park.
公園に行ったか・行かなかったかは、文頭でただちに提示されます。特に日本人にとって厄介なのは、⦅文例2》の否定文です。「何をしたか(動詞)」をまだ言わないうちに「しなかった」と打ち消してしまうのですから、日本人にとっては、「目が点になる」世界です。
《文例3・英語版》I walked in the park this morning.
《文例4・英語版》I didn’t walk in the park this morning.
「今朝」、「公園で」と説明内容が増えているのに、結論が示されるまでの語数が変わらないことに注意してください。これは、英語がまず結論を示し、その後に修飾語を追加する構造になっているからです。
3.英語は、待ち慣れた日本人の不意をついて結論を言う
私たち日本人の脳は《結論保留脳》ですから、英語を聞く時も、気長に最後まで聞く構えでいます。すると、どういうことが起こるか?
《文例3・英語版》I walked in the park this morning.
《文例4・英語版》I didn’t walk in the park this morning.
上のような文を聞いているときに、最後まで聞くことに注意が行き過ぎて、肝心の結論を聞き洩らしたり、あるいは、聞いたのに忘れてしまったりするのです。
主節の後ろに従属節が延々と続くような英語を聞かされると、かなりの頻度で「あれ、何の話だったっけ?」となりがちです。
この2つの文は、見た目にはそれほど難しそうにありませんが、耳で聞いていたら、正確に理解するのがかなり厳しいと思います。
上では、学校英語的な和訳をつけましたが、英語を耳から理解するときは、次のように頭から意味を取っていく方が間違いがないと思います。
Being poor does not mean 貧乏なことは意味しない
(「何を意味しないのかな?」と思いながら、次の言葉を待つ)
that you are unhappy. あなたが不幸だということを
At first はじめ
I did not notice 私は気づかなかった
(「何に気づかなかったのかな?」と思いながら、次の言葉を待つ)
that 以下のことに
the man その男性
standing 立っている
on the street corner 通りの角に
was my old friend. 私の級友だった。
4.おわりに
以上を踏まえて、では、どうしたらリスニングに強くなるかといえば、言い古されたことですが、「英語を聞く時は英語脳で聞く」しかないのだと思います。
では、どうやって英語脳を作ればよいのでしょう? 私たちの脳が《結論保留脳》であることを自覚して、英語の文頭に近いところに注意を向け速く結論をつかむことを、読む・聞く・話す・書くのすべての場面で習慣づけることで英語脳をつくることができる――私は、そう考えています。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
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