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上司は、叱るより尋ねよう

 会社で誰かが失敗をしでかしても涼しい顔をしていたりすると、上司は「あいつには反省の色が見られない」と言って呆れ、そこから、その人物を「不誠実でイイ加減な人間」と結論づけることが多いと思います。

 それは、私たちが「反省=誠意の現われ」と考え、そこに道徳的な価値を認めているからです。そのこと自体は、世間で人間一般を見る見方として、大きく間違ってはいません。

 しかし、会社の場合、本当に大事なのは、そこでは、ありません。会社は個人の道徳性を磨く修養の場ではないからです。会社は、社会の期待に応える機能集団です。

 会社にとって、本当に大事なことは、

※同じ人間が、似たような場面で失敗を繰り返さないこと

です。

 反省が大事なのは、失敗を繰り返さないために失敗の原因をつきとめる必要があるからで、そこに道徳的な要請を付加する必要はありません。

 ですから、上司が失敗した部下を前にしたとき、現実の改善効果を生むのは、反省を求めることではなく、失敗を繰り返さない方法を立てさせることです。

 「叱るより尋ねる」なのです。

《付言》

会社の場合と書きましたが、個人の人生にとっても、「反省=誠意」と強く思い過ぎるのは精神衛生に悪いような気がします。
個人が、その内面で何を尊ぶかとは別に、社会的関係において他者に影響を与えるのは、行動とその結果です。ですから、どう反省しても、行動と結果の改善につながりそうにないこと(個人にとってはそういうことがあり得ると思います)について反省しても、単に自分を苦しめるだけに終わるような気がします。

「道徳的に正しいことを選ぶか、他人に迷惑をかけない範囲でハッピーでいることを選ぶか?」

と問われたら、私は後者を取ります


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