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RISKY 第5話:ささやかな幸せの代償

幸せになりたかっただけなのに、どうして気付いたらこんなところまで来てしまったんだろう。

「俺は昔からぼんやり思ってる夢があって…仕事を頑張って、小さくてもいいから庭がある家を建てたいなぁって」
「そこで料理が上手な奥さんと、可愛い子供が俺の帰りを待ってる。あと、ゴールデンリトリバー。ありきたりな夢だけど」

亨(古川雄輝)がひなた(萩原みのり)に語る夢はありきたりで、ささやかで。だから少し手を伸ばせば、叶いそうな気がする。
でもその場所は、思っているよりずっと遠い。

美香(山下リオ)は美香で、父親に捨てられた過去を引きずりながら、自分は幸せになりたいと願う。
結局、人生は盗ったもんがち。既に誰かが持っている幸せを奪うことでしか、幸せにはなれない。だから長く付き合っている彼女がいる亨を誘惑もした。
母親が奪われた幸せを、自らの手で奪い返すように。

それはひなたも同じだ。
姉・かなた(深川麻衣)が幸せを奪われた分、今度は自分が亨の幸せを奪わなければならない。

幸せになりたい。その思いは切実で、ゆえに強迫観念のようで、呪縛のようで。
亨も、ひなたも、美香も、幸せになるための少し手段を間違えてしまっただけで、本当は誰も悪なんかじゃないのだ。
けれど人は弱い。自分が幸せになれなかった理由を、つい誰かのせいにしたくなってしまう。
ひなたは亨に。美香はかなたとひなたに。亨はかなたに、そして美香に。
善と悪を切り分けて世界を単純化すれば、自分の幸せのために誰かを犠牲にする罪悪感も、少しは軽くなるから。

美香を不幸にしたことで、会社での居場所を失って、ようやく亨は自分が無自覚に積み重ねた罪に気付く。
「他の会社に来ないかっていう話も実はあったんだ、でも俺はもう、誰のことも裏切りたくないから」
「そんなことしたら、君の前でもう笑えないような気がして」
覚悟を決めた亨に、ひなたは全てが仕組まれた復讐だったと明かす。
そこに現れた美香からひなたを庇って、自分が刺される亨。
今度こそ幸せになりたかったのに裏切られた絶望の中、亨はひなたを守る。かつて自分が幸せにできなかった、かなたが守りたかったものを。
それはこれまで流されてきた亨の、強い意志だ。

暗闇の中に亨が放つ光を、かすかな希望を、私は信じる。

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