バカな子供とずるい大人の国
私の中学校はヤンキーがたくさんいた。
町には、ヤンキーの卒業生と中学生がバイクのエンジンを吹かせて、住民たちは迷惑をしていた。
私には、仲良くしていた男の子がいたが、彼は、正義感が強く、ヤンキーたちを嫌っていた。
そんな彼は、ある日、たくさんのヤンキーたちのターゲットにされてしまう。
彼は、いじめにあい、学校に来なくなってしまった。
もはや、私だけが止めようとしてもがいても、どうしようもできず、私は、大人である先生たちに相談を持ちかけた。
私には、もう、大人に頼るしか道はなかった。
しかし先生たちは、真剣に動いてはくれなかった。
なぜなら、その一年前、男の先生が問題行動の目立つ一人の生徒を殴り、地元で大きな問題になったからだ。
その男の先生は、私たちの学校からいなくなった。
そうなったら学校は、もはや無法地帯だ。
周りの生徒も、教師たちも、ヤンキーを怖がって、関わろうとしないし、暴力、恐喝などの問題が起きても止めようともしていなかった。
他にも不登校の生徒はたくさん出てきた。
ある日朝礼で、暴力・恐喝などの問題行動を起こす生徒に対して、注意喚起をする内容のスピーチが学年主任たちにより行われた。
しかし、問題を起こす当の本人たちは、朝礼に参加をしていなかった。
本当に意味がない時間だった。
普通の真面目な生徒たちは、犯人のいない場所で犯人に対してのスピーチを長々と聞かされていたのだ。
* * *
私は、ヤンキーがとても嫌いだった。
強さを履き違えて、簡単に人を傷つける人が。
でも、それと同じくらい教師が嫌いだった。
傷ついた生徒を見て見ぬフリをして、問題に関わろうとしない彼らが。
あの朝礼でのスピーチも、学校の状況を知った保護者たちからのクレームに対して、対応をしているフリをしていただけだ。
私は、中学生ながら大人のずるさを実感し、大人に対して失意の念を抱いた。
勿論、素晴らしい教師が少なからずいる事は分かっているので、一概には言えないが。
8月31日の夜。
明日から本格的に学校が始まるが、彼は、明日も学校に来ないだろう。
9月1日の朝。
案の定、彼は学校に来なかった。
学校はもはや、テレビドラマや小説のような、真面目な生徒とまっすぐな大人の居場所ではない。
バカな子供とずるい大人の国だ。
そんなことを思っていた私も、やがて大人になり、厳しい社会と悪戦苦闘している。
それでも、私は、胸を張って言える事がある。
それは、
『社会人は大変だけど、中学生より一兆倍はまし』
ということである。
大人になると、理不尽な事があっても、解決する方法なんていくらでも見つけられるし、ヤンキーに目をつけられることもそうそうない。
大人は学生と違って、友達だって、いろんなところで作る事ができるし、縁だってやり方次第で簡単に切る事ができる。
お金だってたくさん手に入るし。
もし、タイムマシンがあるなら、あの頃いじめられていた彼に、そのことを伝えたい。
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