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黒野 燁
2019年8月31日 22:43
俺は、居眠りトラックに追突されて死んだ。 肉体は滅び、ぼんやりとした意識だけが空中をふらふらと漂っている。 この状態が一か月ほど続いた。そして俺は、なぜか意識だけが抜けている健康的な肉体を見つけた。 俺はその肉体の中に入ってみた。生前と全く違う肉体だが、悪くない。 ……生前の俺には、美咲という付き合っている彼女がいた。別の肉体で彼女に会いに行っても、意識は俺自身のものだというこ
2019年8月30日 23:59
「ワシはなぁ、昔プリンスエドワード島に住んでたんじゃが、ある日、ギルバートという男の子が……」 「うんうん、そうだったんだぁ」 ……今日は、赤毛のアンか。俺は、公園で老婆の話を聞いていた。 彼女は自分のことを全く覚えていない程に、痴呆が進んでいた。そしてそれを埋めるように、度々自分を、最近観たテレビのドラマやアニメの登場人物だと思い込んで、俺に話してきた。その物語の内容も、すぐに
2019年8月24日 14:44
「ポチお手!」ポンッと私の小さな掌に柔らかな肉球を乗せる彼の名前はポチ。2年前に捨てられていた時のポチは、ぬいぐるみのように小さかったものの、今では人間とさほど変わらない程に成長した。犬種は、調べても調べても同じものが無かったため、おそらく雑種だと思う。ポチはとても賢く大人しい。私はポチが家の中に居ても構わなかったが、小学生の弟が動物アレルギーだったので、仕方なく庭で放して飼ってい
2019年8月22日 21:32
20年間、作曲家として音楽業界に携わっている私は、10年前に出したアルバムが大ヒット。グラミー賞を受賞した。しかし、あれから私の曲の人気は下降の一途を辿ることとなる。マスコミからは、過去の存在として扱われ屈辱的な生活を余儀なくされた。かつての私は、アイデアが地下水のように湧き出ていた。そして、滝のように降り注ぐ、賞賛のシャワーを浴びる音楽生活を送っていた。もう一度、あの頃に戻りたい。
2019年8月16日 19:07
今日は、新年を迎えたばかり。これから初詣に行く。中村隼、小学2年生は、神社では、目を瞑り、手を合わせて、お願いを心の中で唱えるとママから教わっていた。それを同じクラスの和馬君に伝えると、和馬君は、「神様なんていないよ」と言っていたけど隼は神様を信じていた。初詣は、毎年、地方で最も有名な大きい神社でやっている。この時期になると神社の周りには色々な屋台が並んでいて、寒いのにも関わらず、まる