【LA VIE EN ROSE】(1984)吉川晃司 ソリッドなロック色を含んだ意欲的な2ndアルバム
今年は、吉川晃司が1984年にデビューをしてちょうど40年となるメモリアル・イヤー。
今ではロマンスグレーの髪が似合うワイルドなロック歌手、ダンディな役者としてのイメージですが、40年前のあの年、爽やかな彼の登場は私にとって衝撃でした。
歌番組《ザ・トップテン》4月2日放送分にて「モニカ」が10位で初ランクイン。歌い終わってバック転する姿に「何だこの気障ヤローは!!」と子供ながらに反感を抱きつつも徐々に魅了され、気が付けばTV、ラジオ、アイドル誌で彼を追いかけていました。私は吉川晃司に憧れ、心酔し、吉川晃司のような歌手になりたかったのです。(身長が180センチに遥かに届かず、学校に水球部がなく、歌の才能も無かったので諦めました…💦)
本作は鮮烈な登場だった彼の2ndアルバム。レコードデビューから8ヶ月。アイドルから少しずつ脱皮していく姿が克明に刻まれ、美麗なジャケットに写し出されるように夏の終わりを思わせるイメージの1枚です。
まずはド派手なオープニングナンバー、「No No サーキュレーション」を。
いきなりオーケストラ・ヒット連発のデジタルビートにはさすがに時代を感じますが、当時はこれが最先端の音でした。かつてなくロック色を強めて吉川クンの歌もノリがイイ!のちに12インチシングルでもリリースされました。
作曲は大沢誉志幸。翌年「そして僕は途方に暮れる」で自身もブレイクしますが、作家としては既に頭角を現した頃でした。
私は歌番組《レッツゴーヤング》で初めてこの曲を聴いて、白やピンクのスーツだった吉川晃司がダークな色合いを着こなし、曲調もグッとハードになったその変化をドギマギして観ていましたね。
本作【LA VIE EN ROSE】に参加した作家陣の中でひときわ光るのが大沢誉志幸。先行発売の吉川3rdシングル「LA VIE EN ROSE」(当時は、ラ・ヴィアンローズ表記が多かった)を含む3曲を提供しています。
大沢氏はシャープなロックフィーリングを持ち込むことで、吉川晃司を新しい次元に導きましたね。これ以後、吉川が書く自作曲にもハッキリと影響を与えました。吉川晃司と言えば例の巻き舌唱法から、佐野元春の借用を指摘されますが、私は本質的には大沢誉志幸からの影響が大きかったと思ってます。
夜の六本木界隈で2人は知り合ったのでしょうか(当時の吉川晃司はまだ未成年ですが…)。様々な人脈と関わりながら、持ち前の体育会系根性で成長していく様子が窺えます。
(アナログレコード探訪)
〜「ラ・ヴィアンローズ」のあれこれ〜
シングル「ラ・ヴィアンローズ」です。デビュー3枚目にしてソリッドな曲を出してきました。私、吉川晃司の中では1, 2を争うほど大好きな曲です。1つ言いたいのは、正しい表記は「ラ・ヴィアンローズ」。ジャケットを良く見て頂きたい。「・」は1個だけなのです。
チャートマニアの方の為に、《ザ・ベストテン》のランキングは、9/20付20位→6位→4位→4位→4位→5位→8位→15位、でした。
実はこの曲のジャケットに別バージョンがあるのをご存知でしょうか。B面の「ミス・ユー」をフューチャーしたものです。
発売から1年程経った1985年秋頃、私が地元名古屋の西友にあった個人経営のレコード店で取り寄せてもらうと、入荷した盤がこれでした。私の知ってるジャケットと違うことを伝えると、中身は同じだと店員から説明を受け、渋々購入したという経緯があります。
Wikipediaに拠れば、この「ミス・ユー」をA面扱いにしたジャケットは(盤は通常と同じ)後に曲が評判を呼んでリリースされた後発盤とのこと。付属のステッカーも封入されておらず当時の私は不満だったのですが、これは初回限定だったらしい。なるほど、40年経って納得しました。
ちなみに「ミス・ユー」は、アルバム未収録の吉川隠れ人気曲の一つ。ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。評判を呼んだ、とは吉川本人が華麗にまわし蹴りを披露するコマーシャル、グリコ〈カリフォルニアバー〉のCMソングだったのです(映像冒頭の15秒)。私、これ学校でモノマネしましたね〜。
我が家にある3枚の「ラ・ヴィアンローズ」、それぞれマトリックス番号が微妙に違いました。何故か1年遅れで買った後発「ミス・ユー」版が最も若い番号なのは謎です。
3枚を何度も聴き比べてみたところ「112」は倍音が豊かに響きました(「111」は当時聴きすぎて傷ノイズ多し)。微差ではありますが、同タイトルでも確かに音は違いますね。
Side-A
③「ポラロイドの夏」
本作でも人気のナンバー。作曲は原田真二。アップテンポなメロディとシットリした間奏とを対比したアレンジが素晴らしい。 ♪Remember Remember Those Summer Days…
歌詞は、別れたばかりの夏の恋人への思慕。晩夏にピッタリの胸キュンソングです。
⑤「サヨナラは八月のララバイ」
2ndシングル。曲はNOBODY。ガラスが割れる音のサンプリングが印象的でした。夢を追うために恋人と別れる歌詞は売野雅勇。
《ザ・ベストテン》ランキングは、6/14付14位→10位→7位→7位→5位→5位→9位→12位→13位→19位、でした。
Side-B
④「She's gone-彼女が消えた夜」
これも大沢作品。メロディ運び、リズムアクセントなど、洋楽テイストを上手く取り入れた作風です。本作全体を貫くテーマ、夏の終わりが曲調からも漂います。
曲毎に、アルバム毎に物凄い速度で変化していった吉川晃司。アイドルから歌手へ、そしてミュージシャンへと続く長い道程。本作はその序章(プロローグ)ですね。
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