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【Ashes Are Burning(燃ゆる灰)】(1973) Renaissance クラシックとフォークのエレガントな調和

今年も残り僅かとなりました。最後に取り上げるのはクラシカルな魅力いっぱいのルネッサンスです!

このバンドの歴史は複雑で、始まりは元ヤードバーズのキース・レルフとジム・マッカーティがキースの妹ジェーンと共に1969年に結成した所からスタートしました。しかしこのオリジナルのルネッサンスはアルバム2枚を残して解散。

その末期から複雑なメンバーの出入りがあったようで、さらに紆余曲折を経てメンバーを総入れ替え。ボーカルにアニー・ハズラムを迎え再編したのが、今回紹介する新生ルネッサンスです。
1972年に【プロローグ】で再スタート。翌年、名盤と誉れ高い本作【燃ゆる灰】を発表します。

1970年代初頭のブリティッシュ・ロック・シーンには、女性をリードボーカルにした所謂紅一点の個性的なバンドがたくさん登場しましたが、ロックにクラシック音楽の要素を持ち込んだグループとしてはこのルネッサンスが最高峰だったのではないでしょうか。

とにかくエレガントで美しい!

透明感あるアニー・ハズラムのボーカル。 クラシック音楽のシンフォニーの優美さと、フォーク音楽の牧歌的な面を巧みに調和した楽曲。しかも程よいポップさを兼ね備えて質の高い作品を創り続けました。

優れた作品を何枚も残している彼等ですが、やはりキャリアを見渡した時、本作のずば抜けた作品性の高さが目立ちます。

・英米アナログ盤ジャケット比べ
(英国盤)

ヒプノシスのデザインの本作ジャケットも英米で写真に違いがあります。
上の英国盤では左のアニー・ハズラムが微笑んでいるのが分かるでしょうか?

一方、米国盤は少し違うのです。以前所有していた時の写真が残っていました。

(米国盤)

こちらのアニー・ハズラムはやや険しい表情をしていますね。着ている衣装も背景も違います。

裏ジャケットも同様。メンバーの立ち位置も違っています。

(英国盤)

(米国盤)


本作は僅かな差異ですが、この時代のレコードジャケットを見ていると、駆け出しの英国バンドやシンガーの場合、米国盤のジャケットが他に差し替えられているのに遭遇します。結構面白いものです。発言権もないので変えられちゃうのでしょうね。

ただ今の感覚で見てみると、大概は英盤の方がセンスが良く、米盤のはダサいですね 笑

見開きジャケットの内側

本作の正式メンバーは4人。旧ルネッサンス末期からバンドに関わり、新生ルネッサンスではキーマンとなるマイケル・ダンフォード(ソングライター,ギタリスト)はこの時点では正式メンバーではなかったようです。

当時はまだ創設者のキース・レルフやジム・マッカーティが影で糸を引いていたとか。マッカーティは本作でも1曲提供しています。

英国盤はEMI傘下で当時新設されたSovereign (ソブリン)レーベル発売。私のは再発ですが音にハリがあって抜群に良いです。

レーベルのリムにある長文の頭がグラモフォン表記でなく、EMI表記とあるので70年代中盤〜後半のプレスだと思います。この辺りなら2000円前後で手に入るのでオススメです。

米国盤は音が平たい。余りに違うので手放しました。英国バンドはやはり英国盤ですね。

Side - A
① "Can You Understand?" (Michael Dunford, Betty Thatcher) - 9:51
② "Let It Grow" (Dunford,Thatcher) -  4:14
③ "On the Frontier" (Jim McCarty, Thatcher) -  4:55

Side - B
①"Carpet of the Sun" (Dunford,Thatcher)- 3:31
② "At the Harbour"  (Dunford,Thatcher) - 6:48
③ "Ashes Are Burning"(Dunford,Thatcher) - 11:20


本作は長尺2曲を頭と尻に配し、中盤にフォーキーな楽曲が並ぶという構成です。 

A-①"Can You Understand?"

銅鑼が鳴り響く中、繊細なピアノの音色が。ベースのハイフレット音を合図にバンドアンサンブルへとなだれ込み、これが力強くグルービーながら叙情的な旋律。この前奏だけで一気に引き込まれてしまいます〜。

長い前奏から独立した静かな楽章でアニーの歌パートが登場。ホント美しい歌声!彼女が歌い出すと雰囲気が一変します。
歌とインストが織り成していく構成はちょっと歌劇っぽくもあります。バンドの演奏もオーケストレーション演出も素晴らしく、起承転結を成したルネッサンスの名曲です。

1974年のスタジオライブ風の映像がありました。マイケル・ダンフォードがアコギを弾いているのが分かります。

B-①"Carpet of the Sun"

A-②"Let It Grow"と共に、アニーの澄み渡るようなクリスタルボイスが堪能できる牧歌的フォークナンバー。こちらはよりポップなテイスト。こういった伸びやかな楽曲もルネッサンスの魅力です。
生楽器の美しさについウットリと聴き入ってしまいます。
抜けるような青空を思い浮かべますが、漂っている薫りはやはり英国バンドですね。
1977年TVでのライブ映像です。

B-②"At the Harbour"

クラシカルで厳かなピアノソロから、生ギターの爪弾きでアニーが切々と歌うバラード。仄暗いメロディに英国フォークのイメージが重なります。曲の後半に聴かれるコーラスがこれまた幽幻さを醸し出して儚い…。

B-③"Ashes Are Burning"

ラストは冒頭と対を成すクラシックとフォークを融合したダイナミックな魅力に溢れる表題曲。11分を超える大作。

リリカルなピアノの前奏に導かれてアニーが歌い上げる切ないメロディ。彼女が歌うと楽曲に品性が宿りますねぇ。サビのメロディは神聖なものに触れるような美しさ!
長いインストパートでは、ハープシコードやオルガン、ピアノがメランコリックな世界を描いていきます。

静謐なオルガンをバックにアニーが再度歌い始め、最後のクライマックスをハイトーンボイスで閉めくくると聴こえてくるのはゲスト参加アンディ・パウエル(ウィッシュボーン・アッシュ)の哀愁のギターソロ。
感情を抑えたフレーズは少しずつ熱を帯びていき、リズムセクションもマーチングリズムで呼応してドラマティックにフェイド・アウトしていくという幕引き。劇的ですね〜。

こちらも1974年のスタジオライブ映像。ギター・ソロ部はアニーのスキャットで補っています。


英国らしさを随所に感じさせるバンドです。本作は何度聴いても美しく、プログレ嫌いな方にもオススメできる作品だと思います。

これ以後ルネッサンスはクラシカルな色合いを更に強めていきますが、フォーキーな薫りが濃厚な本作は親しみやすさがあってやっぱり格別です。
アニー・ハズラムの声を聴くたびに、あの天まで澄み渡るクリスタルボイスは、まさしく英国の至宝だと心底思いますね。

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