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【Songs From The Wood(神秘の森〜ピブロック組曲)】(1977) Jethro Tull フォーキーでロマンチックなジェスロ・タル

1960年代末から活動を続ける英国ロックシーンの重鎮バンド、ジェスロ・タル。
リーダーのイアン・アンダーソンの強烈なキャラクターに加えて、やや難解な音楽性のせいで日本では人気がイマひとつのようです。

そんな私も彼らの音楽にはアクの強さを感じるのですが、キャリアを通して聴いてみると意外と柔軟。プログレッシヴな感覚ながら、見た目の割に(失礼!)しなやかに時代の変化に対応してきたのが分かります。

ただどんな方向性にあろうと、私はこのバンドに一貫してフォーキーな感性を強く感じます。

英国でフォークをハードロックに演奏したのはレッド・ツェッペリンですが、スタイルこそ違えど、ジェスロ・タルもその発想やアイデアは同じで、ブルース・ロックという出発点も含めて、この2つのバンドは結構共通していたのでは?と私は思ってます。

さてさて、そんなジェスロ・タルがパンクロック全盛の時代に大作志向から離れ、よりダイレクトにフォーク、トラッド的な音にシフトした時期があるのですが、これが結構侮れないのです。

この時期はトラッド路線3部作と言われる作品群を発表しており、その1作目となるのが本作「神秘の森」(77年)です。

こちら英国クリサリス・レーベルのUK盤。
ジャケットは森の中での生活?のイアン・アンダーソン。原点回帰を思わせます。

裏ジャケットにもフォーキーな香りが漂ってます。
使用楽器のクレジットには、古代や中世の古楽で使われた弦楽器リュート、打楽器ナッカーレ、テイバー(初めて名前聞いた)といった名前があり、ルーツ探訪みたいなテーマもあったのかもしれません。

クリサリスのグリーン色レーベルです。本作発表の1977年まで使用されており、マトリックスも1/ 1。

この時代になると録音も優秀、本国初期盤だけに音は素晴らしいです。少しボリューム上げると音に奥行き、ハリも出てよく響いてくれます。
2003年に出たデジタルリマスターのCDも音がいいですね。

A-①「Songs From The Wood」
 ②「Jack-in-the-Green」
 ③「Cup of Wonder」
 ④「Hunting Girl」
 ⑤「Ring Out, Solstice Bells 」
B-①「Velvet Green」
 ②「The Whistler 」
 ③「Pibroch (Cap in Hand)」
 ④「Fire at Midnight」
 
A-①冒頭からいきなりアカペラ。これがなかなか上手で、高貴な空気が覆います。
古楽器と思われる音色と従来のアコースティック楽器の演奏が始まると、一気に世界はフォーキーで冬のヨーロッパ!! 
といっても複雑なリズムセクションでプログレの顔を出すのは、やはりタルです。

A-③イアンのメロディックな部分が出たポップなロックナンバー。こういったソフトな一面もこのバンドの良さです。途中入るコーラスも幻想的。

A-⑤は冬のドリーミーな音世界が美しい、英国での先行シングル曲。
ハンドクラップも交えて、パイプオルガン、ピアノ、フルート、鈴の音が奏でる素敵なクリスマスソング。何とロマンチックなジェスロ・タルでしょうか!
サンタクロースになったイアン・アンダーソンの画が思い浮かびます 笑

B-①アコースティック主体の6分半の楽曲ながら、途中いくつも場面転換する所がタルらしい。大作主義でやっていた事を凝縮したような感じです。緻密なアレンジが印象的。

B-②牧歌的でフォークロック風ですが、間奏ではいちいち変拍子を入れて来る辺り、やっぱり一筋縄にはいかないですね 笑 

B-③本作で唯一ヘヴィ。長尺8分半のブルース・ロック風ナンバー。
マーティン・バーの歪んだ音のレスポールギターも唸ってます。イアンの歌も渋め。

ジェスロ・タルが英国トラッド、フォークへ傾倒した作品と言われる本作ですが、よくよく聴いてみると、そこらかしこにプログレ的な仕掛けが満載。それがまた濃厚な英国ロックらしさとなって耳を奪います。

後にイアン・アンダーソン本人も、プログレをフォークで飾ったようなものだと評していますが、確かに本作はフォークの顔をしたプログレ作品といった趣きです。

しかも彼等のロマンチックな魅力が存分に感じられて曲もコンパクト。タルの作品の中でも親しみやすい内容ではないかと思います。

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