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【Miami】(1974)James Gang トミー・ボーリン期の涙の最終作
トミー・ボーリンと言えば、リッチー・ブラックモアが抜けた後のディープ・パープルに参加して一躍有名になったギタリスト……なんですが、私はその前に在籍したジェイムス・ギャングでの仕事も結構好きです。
ジョー・ウォルシュ、ドミニク・トライアーノに次ぐ3代目ギタリストとして登場。類稀な才能で中期のバンドを牽引しました。
最近、このボーリン期の映像がキレイな画質で出るようになりました。これがカッコ良いのです!
ソリッドなプレイ、男前のルックス、グラムロックスター顔負けの衣装といい、実質バンマス的な存在。見るからに華のあるギタリストです。
私は若い頃のショーケン(萩原健一)に似ていると思うんですけど……?? どうです?
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トミー・ボーリンを迎えた第3期ジェイ厶ス・ギャングは2枚の作品を残しますが、本作【Miami】は最終作。1作目【Bang】(73年)は以前に書きましたので、宜しければこちらの駄文を。
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2nd【Rides Again】とは白黒の配色が逆
さて、本作はバンド通算7作目のアルバム。この時代のジェイムス・ギャングは4人組。
ロイ・ケナー(vocal)
トミー・ボーリン(guitar)
デイル・ピーターズ(bass)
ジム・フォックス(drums)
ケナーは第2期からの残留。そこにボーリンが加わって第3期がスタート。ウォルシュ時代はトリオ編成でしたが、以降はリードボーカルを立てたカルテットで活動しました。
ジェイムス・ギャングが面白いのは、有能なギタリストを迎え入れては主導権を握らせ、リズム隊の2人がしぶとくバンドを存続させたことです。ある意味で賢い!
当然ここでの主役はボーリン。先代2人とは一味違ったライトで乾いたハードロックに舵を切っています。時折見せるファンキーなアプローチも実にシャープ。ポップな感性やスピーディなノリも加味しました。
またトミー・ボーリンと言えば、ギターエフェクターの大胆な使い手だったことも印象的です。第3期の代表曲 "Standing in the Rain" で得意のエコープレッサーを派手に使ったプレイ。ジミー・ペイジも驚いたそうですが、生演奏だとよく分かりますね。
ボーリン在籍の2枚なら、1枚目の【Bang】がベストです。残念ながら本作は纏まりがなく曲も精彩に欠ける印象……。私の想像ですが、ボーリンの気持ちはもう離れていたように思いますね。
他のメンバーとの力量差は歴然。多才なボーリンにとって、音楽性の幅を広げられないのは痛手だったはずです。またロイ・ケナーのステージパフォーマンスは明らかにB級レベル以下。ライブで "Funk #49", "Walk Away" を必ず演奏しなければならない縛りも窮屈だったに違いありません。
本作は1作目【Bang】の延長でありながら、バンドとしての方向性を見失っているような印象です。ボーリンの次へのステップが見え隠れします。ソロ活動への叩き台、早くも潮時だったのかと噛み締めながら、私は寂しく聴く1枚です。
(アナログレコード探訪)
〜早熟なギタリストの初期音源〜
トミー・ボーリンは随分と早熟で、デビューは何と17才。Zephyr(ゼファー)というコロラド出身のバンドでプロをスタートしており、オリジナルメンバーとして2枚のアルバムに参加しています。
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全米48位のスマッシュヒット作。
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ワーナー・ブラザーズ
Zephyrは、Candy Givensという女性ボーカルをフロントに立てた5人組。作風は2枚ともサイケ、ヒッピー色の濃いブルースロックといった感じでした。ソウルフルで悪くないのですが、ボーカルがジャニス・ジョプリンを意識してか、歌い方、声までソックリ似せているのは今聴くと苦しいかもしれません。時代ですね…。
ボーリンは若手ながら、曲作りにも加わり、ジャズにもブルースにも対応したアグレッシブなプレイでアピール。発展途上ですが、守備範囲の広いスタイルは既に出来上がっていたことが分かります。
Side-A
①"Cruisin' Down the Highway"
軽やかに弾む乾いたロックナンバー。ハードロック路線の一曲ですが、途中テンポチェンジを繰り返すアレンジなど効果的です。終盤はボーリンの攻めたギターソロが登場。
④"Sleepwalker"
緩やかなアコースティックから唐突にスペイシーな音像へ展開する異色作。ブーストさせた歪んだベースに、ボーリンのスライドギターが炸裂して幻想的な世界を描きます。エフェクター使いの彼らしいセンスですね。
Side-B
① a."Praylude" 〜 b."Red Skies"
本作で次なるボーリンの方向性を窺わせるのがこちら。前半はジャズ・フュージョン風で静謐なギターソロ(これが素晴らしい)を聴かせて、後半はヘヴィロックに繋がる連作。色々やりたくて仕方なかったのでしょう。ジェイムス・ギャングという器に収まりきらなかった彼の足掻きを感じます。
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トミー・ボーリンは本作を発表間もなくバンドを脱退。ソロとして契約を果たし自身のアルバム製作に入ります。そしてその最中にディープ・パープルからの参加要請が…。
あまり陽の目を見なかったジェイムス・ギャング時代ですが、彼の多芸なセンスが詰まったアメリカンロックはなかなか面白かったと思います。私は彼のキャリアでは1番好きなんですよね。