ブッダの財産ではなく法を相続せよ 中部#3 法相続経 読了
2023/04/14 に 中部#3 法相続経 Dhammadāyādasuttaṃ を読了しました。
お釈迦様が自分の財ではなく法を相続しなさいと比丘達に説明し、精舎に戻った後、サーリプッタ長老がその内容を解説されています。
法の相続者と財の相続者
実際には「相続する」という動詞ではなく「相続者」 dāyāda という名詞が使われています。
dhamma-dāyāda が法の相続者で、āmisa-dāyādā が財の相続者です。meは
「私の」、bhavathaをbe動詞の命令形、māは「〜なかれ」で禁止・否定的願望などを示すとすれば、この文のだいたいの意味は分かるかと思います。
ここでお釈迦様が食べ残した托鉢食の前に、飢えて、衰弱した二人の比丘が来たという仮定の話で説明されます。
法の相続者
この托鉢食は財の一つであるとして食べずに一昼夜を過ごす
尊敬すべき者、称賛すべき者である
これは長い間、小欲、知足、精進努力などのためになる
財の相続者
托鉢食を食べて一昼夜を過ごす
(批判すべきとまでは書かれていない)
中道と八正道
また、その後のサーリプッタ長老の解説には majjhimā paṭipadā 中道という言葉が出てきます。
(略)中道とは何か?
それこそは ariyo aṭṭhaṅgiko maggo 聖八支道(八正道)である。
すなわち、正見〜(略)〜正定である。
少なくとも、この経典では中道=八正道 と説明されているようです。
悪いもの m. pāpako, n. pāpikaṃm f. pāpikā
以下、沢山の悪いものを挙げていきます。
kodha m. 忿, 忿怒
makkha m. 覆, 偽善, 悪の覆蔵; 悪意
paḷāsa m. 悩, 悩害
issā f. 嫉, 嫉妬
macchariya, macchera n. 慳, 慳惜, 慳悋, 物惜しみ
などなど
「悪いもの」を捨てるために、中道がある。
中道とは八正道である。すなわち、正見〜(略)〜正定である。
中道は眼を生じさせ、智を生じさせ、(略)涅槃に導くものです。
という説明です。
「悪いもの」という単語として、男性名詞の場合は pāpako, 女性名詞の場合は pāpikā、中性名詞の場合は pāpakaṃ が使われています。pāpaka は「悪い, 邪悪の」という意味の形容詞なので、男性名詞と中性名詞に対してはそれぞれに対応する格変化なので分かります。
しかし、女性名詞に対しても同様に pāpakā へ格変化するのかと思ったら、pāpikā が使われています。
辞書には pāpika =pāpaka とあるので意味は同じなのですが、「悪い」の女性名詞的な格変化にはpāpikāが使われるものなのかもしれません。
パーリ文: tipitaka.org
片山訳: パーリ仏典 中部 根本五十経篇I 片山一良 (大蔵出版)
パーリ語釈: 増補改訂 パーリ語辞典 水野弘元 (春秋社)