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2021年5月の耳が惹かれたアルバム18枚 (クラシック・ジャズ・ポップス)

5月は18枚のアルバムを聴きました。
どれもいい音楽体験でした。

特に関心のあるジャンルとして
合唱(ヴォーカルアンサンブル)5枚、
ルネサンス・バロック期の西洋音楽 4枚、
日本語の歌詞 5枚
が含まれています。

忙しい人のためのまとめプレイリストはこちら。 計93分。

以下、順不同に感想とメモ。
基本情報はAmazonとAppleMusicから参照しています。

01. ペルゴレージ: スターバト・マーテル & ロセール: サルヴェ・レジーナ (Pergolesi: Stabat Mater & Rossell: Salve Regina) - Giulia Semenzato, Riccardo Minasi, Ensemble Resonanz and Lucile Richardot (2021)

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Release date : 2021 / 03 / 26
Label : harmonia mundi
Genres : Classical
Total Length : 64分

古楽と現代音楽をレパートリーとする団体が奏でる18世紀の宗教音楽

演奏が繊細で耳を澄ませさせられる。アーティキュレーションの機微に目を向けさせられる。ハモリが心地良い。

ペルゴレージのスターバト・マーテルいいよね。好きな曲。
01 Stabat MaterⅠの初めの絡み合うバイオリンの弦の音が好き。1分経ったあたりでの二人の声のハモリもいい。
この曲は冒頭から旋律が互いに絡み合う魅力が詰まってると思う。
建築家ミースが言ってた「神は細部に宿る」ではないが、「神は冒頭に宿る」な曲の築き上げ方好き。(他には例えばjsバッハさんのヨハネ受難曲の冒頭すぐと歌唱までの各楽器のハモリ、音の受け渡しの神が宿る部分 ――曲の世界に惹き込ませる部分、の築き方もいいよね…。 )

あとSalve a duoのハモリに耳を惹かれた。その中の19. IV Eia ergo. AllegroのVo二声の掛け合いが特に好み。

作曲家は以下の通り
Giovanni Battista Pergolesi(ペルゴレージ) / 1710-1736) / ナポリの作曲家
Angelo Ragazzi (アンジェロ・ラガッツィ) / 1680-1750 / ナポリの作曲家
Joan Rossell (ジョアン・ロセール) / 1724-1780 / カタルーニャの作曲家
時代としてはバロックと古典派の過渡期に活躍した作曲家達となる(という認識でいいのかな)。

演奏者・演奏団体は以下の通り
Giulia Semenzato (ジュリア・セメンツァート) / ソプラノ
Lucile Richardot (ルシール・リシャルドー) / メゾソプラノ
Riccardo Minasi (リッカルド・ミナージ) / バイオリン、指揮
Ensemble Resonanz (アンサンブル・レゾナンツ) / 演奏団体

この演奏団体Ensemble Resonanzは、ドイツ、ハンブルクを拠点に世界中で活動するアンサンブル集団。1994年に創設。古楽と現代を「共鳴(レゾナンス)させる」というテーマを掲げて活動を重ねてきたとのこと。
調べると現代作曲家の藤倉大とも共演し曲を演奏してたのね。おお。

録音空間はドイツ、ハンブルグのフリードリヒ・エーベルト・ハレ(friedrich ebert halle)
フリードリヒ・エーベルト・ハレは1929年に作られ、2014年に大規模改装されたコンサートホールとのこと。

[参考]アルバムの詳細はこちら(TOWER RECORD)

26歳で世を去った天才ペルゴレージ畢生の名品『スタバート・マーテル(悲しみの聖母)』は、18世紀宗教音楽の中で最も崇高な、聖なる奇跡のひとつ。(中略)
ただ美しいのではなく、時に穏やかならぬ響きを発し突き刺さる悲しみを痛切に表現。幾度もぶつかっては解決を繰り返す冒頭の軋み。暗闇のどん底のような短調と、ほのかな灯りがともるような長調。そして歌を含めた最強音と最弱音の、表情の幅のとてつもない広さ。闇の中にいかに光を対比させ命を宿すかというバロック芸術の精神が、劇的なまでに生々しく迫ってきます。血と苦しみを絞り上げるように歌う二人の歌手もほんとうに素晴らしい。

互いに共鳴し合うカップリングにも大注目。ヴァイオリン3本と通奏低音によるラガッツィのソナタは洗練された対位法を効果的に使った音楽で、第2楽章に『スターバト・マーテル』そっくりの進行が登場。「サルヴェ・レジーナのイミテーション」という副題を持っていて、技巧を織り交ぜつつもしめやかで気品に満ちた音楽です。

そして『スターバト・マーテル』と同じく二人の女声歌手をソリストにしたカタルーニャの作曲家ジョアン・ロセールによる『サルヴェ・レジーナ』も悲痛なまでの美しさ。長くペルゴレージ作として伝わっていた音楽で、語法はまさにペルゴレージそのもの。謎の多い作品ですが劇的な表現は本家に引けを取りません。
Ensemble Resonanz plays in a historically oriented style, with period bows and, more strikingly, in meantone temperament.

ピリオド・ボウ(当時の弓)を使っていたり、ミーントーン(古典調律の一つ)により演奏してるとのこと。ほうほう。

[参考]セッションの様子とインタビューはこちら※自動翻訳字幕あり(Youtube)↓

指揮者の動きいいな!本番中は周り聴いてて指揮は軽いサイン程度しか汲んでない人(自分)だけど、この指揮いい動きしてるな!音楽が動きから流れてくるようだ。

聴者として演奏会に行くときはよく目を瞑ってるので(空間の響きの情報量で頭いっぱい、かつリラックスで強制視覚シャットダウン状態)、こう映像として間近でプロの演奏を見ると新しい快感ある。音だけの純粋な快感に加え、演劇やスポーツを観るような快感も足される。

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02. Żeleński: Chamber Works - Trio Lontano & Adrian Stanciu (2021)

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Release date : 2021 / 05 / 21
Label : DUX
Genres : Classical
Total Length : 65分

弦とピアノによる豊かな響きのセッションによるポーランドのロマン派楽曲

ふくよか。弦のアーティキュレーションがいいなあ。弦の表情が繊細に移り変わっていくそれだけを観測するだけで楽しめる。曲を運んでいくピアノのグルーヴも心地良い。落ち着く。

どの曲もいいなあ。旋律が噛み合わさっていく曲の構築性が聴いていて心地いい。ごちゃらない明快さを保ったまま響きがその瞬間瞬間に満たされていく。その近づいたり離れたりと変化し続ける音の構築(個人的な比喩イメージだと集合離散を繰り返しながら飛ぶ音符の鳥たち)は耳で眺めてるだけで飽きない。

作曲家はWładysław Żeleński(ヴワディスワフ・ジェレンスキ)、生没1837-1921年、ポーランドで主に活動した作曲家・ピアニスト・オルガニスト。ポーランド・ロマン派の代表的な作曲家の一人とのこと。
このアルバムは全てジェレンスキの曲で構成されている。ピアノ三重奏曲とピアノ四重奏曲。ちなみに没後100周年で、このアルバムはそれを記念に録音されたとのこと。

演奏はTrio Lontano
メンバーは以下の通り。
Anna Kamińska / ピアノ
Paweł Polak / ヴァイオリン
Grzegorz Vytlacil / チェロ
それに加え、
Adrian Stanciu / ヴィオラ (Special Guest: 後半のピアノ四重奏の参加)
となっている

[参考]アルバムの詳細はこちら(DUXレーベル公式)

[参考]セッションの様子はこちら ※後半が収録曲(Youtube)↓

3人によるピアノトリオ曲の演奏。
バイオリンのアーティキュレーションいい…。特に小さい音の乗せ方・ハモり方が気持ちいい。

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03. 楽園への扉~ハンス・メムリンクの「奏楽天使」 (Paradisi porte: Hans Memling's Angelic Concert) - Tiburtina Ensemble & Oltremontano & Wim Becu (2021)

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Release date : 2021 / 05 / 07
Label : Accent
Genres : Classical
Total Length : 65分

空間を満たす響きにひたるグレゴリオ聖歌とルネサンス音楽の調べ

響きがいいなあ。残響音が落ち着く。透明感ある声による合唱いい。

曲はグレゴリオ聖歌に加え中世~ルネサンスからなる。
作曲家は
John Dunstable (ダンスタブル)、1390年頃 - 1453年、イングランドで活動した中世~ルネサンス期の作曲家
Gilles de Binchois (バンショワ)、1400年頃〜1460年、ルネサンス期ブルゴーニュ楽派初期の作曲家
Guillaume du Fay (デュファイ)、1397年8月5日 - 1474年、ルネサンス期ブルゴーニュ楽派の作曲家。
Jacob Obrecht (オブレヒト)、1457年/1458年-1505年、ルネサンス期フランドル楽派の作曲家
と作曲家不詳からなる。

ルネサンス音楽が好きといいながら、ガツガツにポリフォニーをしてるルネサンス後期の曲ばかり聴いてたので、この中世・ルネサンス初期の音楽は新鮮だった。

このアルバムではグレゴリオ聖歌も歌っている。伴奏のない単旋律だが空間の残響音と影響しあって伸ばし方、揺らし方でいくらでも様相が変わってくる。こういうのを味わいというのかな。いい…。

演奏は声楽にTiburtina Ensemble、器楽にOltremontanoが参加している。

前者の声楽担当のTiburtina Ensembleは2008年にチェコのプラハで設立された合唱団。グレゴリオ聖歌、中世のポリフォニー、現代音楽を専門にしている。
ここの音楽監督はBarbora Kabátková、歌手・ハープ奏者・音楽学者。このアルバムでは歌手とハープ奏者として参加している。

後者の器楽担当のOltremontanoはベルギーを中心に活動する古楽団体。25年以上活動を続けている。
楽器編成は、ルネッサンス期の北イタリアと北ドイツにならいトロンボーン(サックバット)とコルネット(ツィンク)を中心として揃えたとのこと(参考)。へええ。
ここの指揮・音楽監督はWim Becu。トロンボーン・バスサックバット奏者・音楽学者。近年は16世紀と17世紀の音楽の研究に加え、19世紀のヒストリカル・トロンボーンの発展・開発?も活動にしてるとのこと。

録音空間はベルギー、アントウェルペンのAMUZ(Festival van Vlaanderen - Antwerpen)。
AMUZは元はバロック様式の教会であり、現在コンサートホールとして使われている空間。音響とは関係ないが、上のリンク先の写真の孔雀石色の絵画に目を惹かれた。これはベルギーの現代芸術家ヤン・ファーブル(Jan Fabre)の作品とのこと。アンリ・ファーブルの曾孫さんなのね。

[参考]アルバムの詳細はこちら(TOWER RECORD)

1490年頃、画家のハンス・メムリンクは『奏楽天使』を制作しました。この作品は左右対称の構図による3枚の絵で、左右の絵にはそれぞれ端から弦楽器を奏する天使3人と管楽器を奏する天使2人が、中央の絵には父なる神とその両脇で歌う3人ずつの天使が描かれています(当時は人の声が最高位の音楽で、中央に行くほど位が高くなっていくように描かれている)。メムリンクが実際にどんな音を想像して書いたのか、グレゴリオ聖歌と当時の作曲家の音楽を絡めて、その実態に迫る凝りに凝ったCDです。

ジャケットの絵画(ハンス・メムリンクは『奏楽天使』)をコンセプトにしたアルバムとのこと。興味深いが、もう少し情報が欲しみ。この辺、小冊子に書いてあるのかな。どうだろうか。別ルートだが、絵画についての説明はこちらが参考になった(3枚の内の一枚)。

[参考]セッションの様子はこちら ※収録曲とは異なる(Youtube)↓

うわビビった。透明感あって綺麗だ。声が調和してる。こんなグループがいたとは。空間の響きがいいのはもちろんのこと、癖のない揃った発声いいなあ。ここの音楽監督がハープ奏者だから響きへの追求が深くなり、それ故の結果だったりするのかな。ハープ奏者(経験者)が運営する合唱団というのは初めて見た気がする。

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04. サルテリオのために~18世紀イタリアのサルテリオのための音楽 (Per il Salterio) - La Gioia Armonica (2021)

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Release date : 2021 / 05 / 21
Label : Ramée
Genres : Classical
Total Length : 78分

サルテリオの弦の響きに耳を澄ませる18世紀のイタリア宮廷音楽の調べ

弦の響きが落ち着く。サルテリオとチェンバロが共演してるのが面白い。似ていながらも響きの質感が全く異なる楽器。その二つの楽器の響きの影響し合うのを観測し続けるのが心地いい。サルテリオは野性的なむき出しの響きを鳴らし、チェンバロは手綱を握ったり、尻を叩きながらしっかりその進むレールを作っている。チェンバロがリズム隊として音楽を着実に進行させるの聴いてるとテンション上がる。
あとサルテリオ×ポジティブオルガンの掛け合いも楽器の響きの対比がよく見えてこれもまた面白かった。ポジティブオルガンの壮大ではないが側に寄り添うような優しい響き好き。

サルテリオはバロック後期を中心にドイツ語圏の宮廷やイタリアで広く用いられていた打弦楽器。サルテリオ(Salterio)はイタリア語での呼び方。ペルシャ古典音楽のサントゥール、中東欧の民俗楽器ツィンバロム(英語名ダルシマー)、中国の揚琴も同系の楽器となる。

曲は後期バロック~前古典派からなる。
作曲家は
Angelo Conti(アンジェロ・コンティ)、生没年不詳、18世紀に活動
Pietro Beretti(ピエトロ・ベレッティ)、生没年不詳、18世紀に活動
Baldassare Galuppi(バルダッサーレ・ガルッピ)、1706-1785、バロック期ヴェネツィアの作曲家
Carlo Monza(カルロ・モンツァ)、1735頃-1801、バロック期イタリアの作曲家
と作曲家不詳からなる。

演奏は古楽デュオのLa Gioia Armonica(ラ・ジョイア・アルモニカ)。主にドイツ、オーストリアを中心に活動してるみたい(主な演奏場所から推測)。
メンバーは以下の通り。
Margit Übellacker(マルギット・ユーベルラッカー) / サルテリオ奏者
Jürgen Banholzer(ユルゲン・バンホルツァー ) / チェンバロ・オルガン奏者

使用楽器は以下の通り
〔サンテリオ〕トレントのジョヴァンニ・アントニオ・ベレラ1745年製作モデルに基づく、フランクフルトのクリスティアン・フックス2017年製作の再現楽器
〔チェンバロ〕イタリア式チェンバロ(シャトー・デクスのブルース・ケネディ1985年製作)
〔オルガン〕木製管ポジティフ・オルガン(ペリグーのエティエンヌ・フス2017年製作)

録音空間はドイツ中西部ヘッセン地方、フロールシュタットのルター派教会

[参考]アルバムの詳細はこちら(TOWER RECORD)

イタリア語で「サルテリオ」と呼ばれる、箱に張り巡らせた弦を上からハンマーで叩いたり爪弾いたりする楽器が本盤の主役。ペルシャ古典音楽のサントゥールや中東欧の民俗楽器ツィンバロム(英語名ダルシマー)と同様の楽器で、中世楽器のプサルテリウムにも通じる存在ですが、実はバロック後期にドイツ語圏の宮廷やイタリアで広く用いられていました。
このアルバムで光が充てられているのは、バロック後期から前古典派にかけてのイタリア人作曲家たちの作品。さまざまなハンマーを使い分けたり奏法を変えることで、美しくも多様な音色を描き分けられるサルテリオが、ロココの紳士淑女を喜ばせた甘美な音楽といかに相性が良いかを伝えています。

18世紀のイタリアでサルテリオのためのソナタが多く作曲されてるとは知らなかった。それほど当時注目されてたとは。

[参考]インタビューと演奏の様子はこちら ※自動翻訳あり(Youtube)↓

楽器サルテリオについての説明もある。面白い。

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05. そして太陽は光を失った ~受難節の音楽 (And the Sun Darkened: Music for Passiontide) - New York Polyphony (2021)

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Release date : 2021 / 03 / 05
Label : BIS
Genres : Classical
Total Length : 58分

重厚かつ柔らかい響きの各声部一人の四部合唱

響きの重なり合いでゾクゾクっとする部分が多々ある。柔らかさと深い響きを兼ね備えた声いいなあ。残響音の豊かなこじんまりとした空間でこの声の重なり合いは聴きたみ。聴者を包みにいくアンサンブルの響きいいよね。

アルバムはルネサンスと近現代の曲で構成されている。
作曲家は
Loÿset Compère(ロワゼ・コンペール)、1445-1518、ルネサンス期フランドル楽派の作曲家
Josquin des Pres(ジョスカン・デ・プレ)、1450/1455-1521、ルネサンス期フランドル楽派の作曲家
Adrian Willaert(アドリアン・ヴィラールト)、1490-1562、ルネサンス期フランドル楽派でありイタリアに移住しヴェネツィア楽派の始まりとなった作曲家
Pierre de La Rue(ピエール・ド・ラ・リュー)、1452-1518、ルネサンス期フランドル楽派の作曲家
Cyrillus Kreek(キリルス・クレーク)、1889-1962、20世紀エストニアの作曲家
Andrew Smith(アンドルー・スミス)、1970-、イギリスの作曲家であり今はノルウェーに移住して活動している
からなる

演奏はNew York Polyphony(ニューヨーク・ポリフォニー)。2006年に設立。ニューヨークを拠点に活動する4人組の合唱グループ。中世・ルネサンス期・現代を主なレパートリーとしている。
メンバーは以下の通り
Geoffrey Williams / カウンターテナー
Steven Caldicott Wilson / テナー
Christopher Dylan Herbert / バリトン
Craig Phillips / ベース

録音空間はアメリカ合衆国東部ニュージャージー州、プリンストンのプリンストン・アビー(Princeton Abbey)。
演奏で使われたチャペルは1932年に建築。伝統的なゴシック様式と英国ゴシック様式の両方の要素が組み込まれた空間となっている。

[参考]アルバムの詳細はこちら(TOWER RECORD)

「受難節」をテーマに「古い音楽と新しい音楽の交差するところを探る」という彼らの活動に沿った新旧7つの作品を取り上げています。
フランス北部、アルトワのロワゼ・コンペール(c.1445-1518)の作品が2曲。中世後期の宗教詩に作曲したモテット《勝利した十字架》と、彼がミラノ公ガレアッツォ・マリア・スフォルツァの宮廷に滞在した1470年代に書いたとされる、『フィリピの信徒への手紙』(2節)『聖金曜日のアンティフォン』、14世紀の賛美歌『Pater sapientia(父の英知)』がテクストの《十字架の聖務日課》。
ジョスカン・デ・プレ(c.1450/1455-1521)の祈りのモテット《御身は貧しき者の隠れ家(汝、貧しき者の憩いよ)》。
アンドルー・スミス(1970-)は、イギリスに生まれ、ノルウェーを本拠に作曲家、歌手、著作家として活動しています。《詩編55番》(「神よ、わたしの祈りに耳を向けてください。嘆き求めるわたしから隠れないでください」)(新共同訳)は、ヴェストフォル音楽祭で上演される劇『Notes for a Requiem(レクイエムのための記録)』のために委嘱を受けて作曲した音楽を改作した「アカペラ男声四重唱曲」です。
フランドルのアドリアン・ヴィラールト(c.1490-1562)がグレゴリオ聖歌の旋律も引用して書いた《天にましますわれらの父よ - アヴェ・マリア》。
エストニアの作曲家、合唱指揮者のキリルス・クレーク(1889-1962)の《詩編22番》(「わたしの神よ、わたしの神よ なぜわたしをお見捨てになるのか」)は、彼が『詩編』をテクストに作曲した、国際的に知られる作品のひとつ。
フランドル楽派のピエール・ド・ラ・リュー(c.1452-1518)の《おお、救いのいけにえよ》は、聖トマス・アクィナスの賛美歌『Verbum supernum pro-diens(天上の御言葉)』に作曲された輝かしい作品です。

「受難節」をテーマにルネサンスと近現代の合唱曲を演奏してるとのこと。
またロワゼ・コンペールの07-15.Officiuum de Cruceは世界初演奏&録音とのこと。へええ。

[参考]セッションの様子はこちら ※収録曲ではない(Youtube)↓

ふくよかー。これはいいSicut Cervus(高校~大学の合唱部でよく歌われるルネサンス後期パレストリーナの曲)。響きがとことん豊かで気持ちいい。低音から高音まで響きが散らからずに調和してるのいい。かつ柔らかくて地に足のついた力強い響き。

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06. The Library Vol. 3 - The King's Singers (2021)

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Release date : 2021 / 06 / 18
Label : Signum Records
Genres : Classical Crossover
Total Length : 19分

軽快で柔らかいハモリの六人組アカペラグループ

明るく柔らかい響きの合唱。軽快にフットワークよく進んでいく。ゆっくりとしたテンポの曲でも停滞せず前へと推進力を持ったグルーヴで進んでいく。アルバムが19分と短いのもあるがとにかく軽快で聴き疲れしない。かつ全体的な響きは調和していて豊か。

曲目は定番のビートルズから、ポール・サイモン、クリスティン・マクヴィー、ジェイコブ・コリアーに加え、中国民謡の1つ「茉莉花(ジャスミンの花)」、リムスキー=コルサコフの「熊蜂の飛行」とバリエーション豊か。
4.In the real early morningでジェイコブ・コリアーを選曲したことに、ムッやるねェ…ってなった。今風でナウい。

あとポール・サイモン(元サイモンとガーファンクル)原曲の3.Fifty Ways To Leave Your Loverが好み。聴いてて軽快なリズムが楽しく心地いい。
ほんといい曲だなあ。なんか聴き覚えあるなと思ったらBrad Mehldauもカバーしてた。いいねぇ…。

演奏はThe King's Singers(キングスシンガーズ)。イギリスの声楽グループ。1968年に設立。メンバーの加入・脱退を繰り返し今の形となっている。設立は古いがメンバーはみんな若い(オリジナルメンバーは脱退し最古参は2010年加入)。レパートリーは宗教曲からフォークソング、ポップス、現代曲と幅広い。
メンバーは以下の通り。( )内は加入時期。
Patrick Dunachie / カウンターテナー1 (2016)
Edward Button / カウンターテナー2 (2019)
Julian Gregory / テナー (2014)
Christopher Bruerton / バリトン1 (2012)
Nick Ashby / バリトン2 (2019)
Jonathan Howard / ベース (2010)

録音空間はイギリス、サリーにあるユーディ・メニューイン音楽学校のメニューイン・ホール(The Yehudi Menuhin School / Menuhin Hall)
このホールは2006年1月7日に作られた。収容は300人。

[参考]アルバムの詳細はこちら(TOWER RECORD)

エドワード・バトン(カウンターテナー)、ニック・アシュビー(バリトン)が加わった新メンバー(2019年7月来日公演時のメンバー)によるニュー・アルバム。

最近新メンバーが加わったのね。前もよかったけれど今の響きの方がより声質が噛み合わさっていて好み。あと前に前に音が進んでいく音楽の勢いが前よりもある。

メンバーが入れ替わってイギリスの合唱ぽさはそのままに、細部の雰囲気が前とは全く変わってきている。昔聴いてたキングスシンガーズとは別物なのだとようやく意識の上書きできた。これからが楽しみ。

[参考]演奏風MVはこちら ※映像に音当て(Youtube)↓

最初の主旋律を歌った人めっちゃいい声だなあ。バリトンのChristopher Bruerton。柔らかさと明るさと深さと響きの芯のある力強さをもつ声。なんというか惹き込まれる声というのは言語化すると二律背反性ぽさある。柔らかい声の成分と硬い声の成分を共に備える声、明るさと暗さ二つの成分を含む声みたいな。まあとにかくこりゃ惚れる声。

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[関連]過去作品のレビューはこちら。Finding Harmony (2019/11発表)

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07. アカペラ2 - ゴスペラーズ (The Gospellers) (2021)

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Release date : 2021 / 03 / 10
Label : KMU(キューンミュージック)
Genres : R&B / Soul
Total Length : 50分

積極的なハモリがとにかく気持ちいい清涼感のあるアカペラポップス

とにかくまずは1曲目と2曲目を聴きましょう。いいよ…。
特に2曲目のVOXersが格好いい。

上の動画は一発取りのセッション。かっこよ。一発取りでこれは流石魅せられる。安岡優氏(中高音域担当?)と北山陽一(ベース担当)の声かっこいいなあ。

ゴスペラーズの魅力は一人ひとりの声が耳を惹き、声質がみな特徴的で個性的ながらもビシッとハモってるとこだと思う。コーラスの時もソロで突出する時もどちらも十二分に力を発揮してるのが格好いい。
今インタビューを読んでたら『ゴスペラーズがデビュー当時から一貫して“ケンカアカペラ”、つまり綺麗に溶け合う美しいハーモニーではないハーモニーを提案してきていた。』というのがあった。まさに個性が強くぶつかりながらも互いに力強く響き合うハモリは初期からのテーマだったんだなと納得した。

どの曲もまっすぐ出した声がスパッとハマってて聴いてて気持ちいい。前述の曲の他に4.雨あがり、と11.嘘と魔法も特に好みだった。

演奏はゴスペラーズ。五人組のボーカルグループ。1991年に結成された。
メンバーは村上てつや、黒沢薫。酒井雄二、北山陽一、安岡優

そういえばゴスペラーズ関連の話で、今年の正月にNHKでやっていた「日本エコー遺産紀行 ゴスペラーズの響歌」が面白かった。ゴスペラーズが地下の駅・銭湯・採石場で響き方を試しながらハモるという番組。一期一会の空間とのセッションの面白さに満ちてる。演奏空間ごとの響きの異なりってホント面白いよね(そして本番のホールでいきなり慣れなかったり苦手な響きの空間に出会うと死ねるよね)。今現在放送終了してるので、NHKはオンデマンド配信の復活をお願いします。

もうひとつ関連で、13.インターバルという曲の作詞・作曲(北山と共同)を手掛けている植松陽介氏が気になり、手掛けてる曲を調べたらどれも面白い曲を書いてた。お洒落な音にウィットとユーモアのある衝撃度のある歌詞、これは音楽強度(エネルギーと飽きなさ)高い…。以下にリンク。
・曲 なんかヌルヌルしてる
・曲 今なんつったか分かんなかったからもう一回言って

[参考]アルバムの詳細はこちら(TOWER RECORD)
[参考]インタビューはこちら1(音楽ナタリー)
[参考]インタビューはこちら2(ORICON MUSIC)

(Q.) この27年間、不動の5人でやってこられた秘訣はどこにありますか?
【北山陽一】ギャラが均等に5割という“原始共産制”のシステムを取ってきたことじゃないですかね。これは冗談抜きで、僕らは選曲会議を必ずメンバー全員でやるんですけど、楽曲クレジットによってギャラが決まるシステムだったら、自分の作った曲を押すメンバーが出てきかねない(笑)。ほかのグループはわからないですけどね。そこが原始共産制であることで、純粋に音楽的尺度でいいかどうかの話し合いができる、ここは非常に重要なことだったと思っています。

これは納得。

[参考]セッションの様子はこちら(Youtube)VOXer 冒頭でも紹介↑

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08. 想念彩色 - Kajuen (果樹園) (2021)

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Release date : 2021 / 03 / 14
Label : Local Visions, Kajuen
Genres : ポップ
Total Length : 16分

気疲れなく音にたゆたえる心地いいポップス

音が心地良い。演奏も声も溶け合ってアンビエントな風味。構えずに聴ける。疲れない。
歌詞は日本語、韓国語、英語が使われていて、曲によっては1曲の中に複数の言語が混在してる。所々で変化する語感が音と共に溶け合い不思議な感じ。それが白昼夢ぽいというかなんというか、心地いい。

Kajuen(果樹園)は、韓国のアーティストMellow Blushと、日本のアーティスト ミヤオウによるオンライン・デュオユニット。2020年結成。日韓英混合リリックとアコースティックをベースとした音楽を制作している。またアートワークやアニメーションなども自ら手掛けている。

録音・Mixed・マスタリングはKajuenの本人たちで行っている。

また、このアーティストが参加してるレーベルLocal Visionsは、島根・出雲のネットレーベルなのね。そういうのあるのね。へええ。

[参考]アルバムの詳細はこちら(Bandcamp)
[参考]アルバムコメンタリーはこちら(Youtube)↓

コメンタリーありがたい。
5.はるかキリンジの十四時過ぎのカゲロウ(2004年)をリファレンスに作られたとのこと。いいね…。Youtube見たら十四時過ぎのカゲロウ、韓国の方が上げた動画やカバーした動画がいくつか上がっていて、結構再生数や韓国語のコメントがあった。へええ。

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09. Shirushi - TEKE::TEKE (2021)

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Release date : 2021 / 05 / 07
Label : Kill Rock Stars
Genres : Alternative
Total Length : 40分

60年代、70年代の音楽をリスペクトしたサイケデリック・パンクバンド

やばい。なんだこれ。びびった。
昭和のエログロナンセンス演劇のような歌詞と雰囲気。
面白い。新鮮だった。昭和かっけえ。やべえね昭和。よくわからんけどかっけえね昭和(平成生まれ)

04 Barbaraの歌詞のエキセントリックさ好き。

そこで口開けたまんまぼーっとしてるチワワ!そんな綱なんかふりきって、向こうにいるハトをシューゲキ!
はい、わたくしも、このブランコをふりきって、これから宇宙へ飛び立つところであります

TEKE :: TEKEはカナダのモントリオールを拠点とする7人組のバンド。
編成は篠笛、大正琴、トロンボーン、fuzzy guitar、リズムセクションからなる。
結成の始まりは寺内タケシ(1939-2021年)のトリビュートバンドで、このバンド名TEKE TEKEはそのサーフミュージックのギターリフのテケテケテケテケからきているとのこと。これを機に寺内タケシのアルバム数枚聴いたけれど、改めて聴くと新鮮ね。

メンバーは以下の通り
Serge Nakauchi Pelletier / リードギター, additional vocals, 作曲(track3,7は除く)
Hidetaka Yoneyama / リズムギター, バックボーカル
Mishka Stein / ベース, track3,7の作曲
Ian Lettre / ドラム, パーカッション, ピアノ
Etienne Lebel / トロンボーン, バックボーカル
五老海 幸(Yuki Isami) / フルート, 篠笛, 大正琴, 琴, 三味線, キーボード
黒木 麻夜(Maya kuroki) / ボーカル, アートワーク, 作詞

カナダのモントリオールって先月のウード×フラメンコの人もそうだったけど、面白い音楽が多いのね。文化が混ざりあって自由みある。
モントリオールは先進的で面白いバンドが出やすい土壌があるという話はぼんやり聞いてたけど、音楽に触れる機会がなかったから今まで実感なかった。これから意識しておこう。

録音とミックスはSeth Manchester(スタジオMachines with Magnets所属)。

マスタリングはHeba Kadry。ブルックリンを拠点とするエンジニア。有名らしくて、色々と見たことあるアルバムに携わっていた。坂本龍一の最近のサントラと過去作のリマスターにも関わっていた。

録音空間は、アメリカ東北部、ロードアイランド州ポータケットのスタジオMachines with Magnets。

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音楽とは関係ないが、スタジオのここの椅子がレトロでシャレオツだった。

この録音スタジオ、初期のBattlesも利用してたとのこと(アルバムMirroredとGloss Drop)。へええ。確かにドラムの音響の力強さ、ダイナミックさと声や中音域のまろやかな音響の録音の感じが近い。

[参考]アルバムの詳細はこちら(TOWER RECORD)

[参考]インタビューはこちら1(consequence sound)
レコーディングしてる時のメンバー間の共通意識に、およげたいやきくんのアルバム(1975年)ムタンチス(Os Mutantes: 1965-1978に第一次活動したブラジルのロック・バンド)の音作りがあったとのこと。そしてその意識がこのアルバムでのグルーヴ、トーン、サウンド、エネルギーを生んだとのこと。確かに当時の曲のグルーヴとトーンの格好よさある。
これを機に、およげたいやきくんのB面「いちばんロック」 を初めて聴いたけどムーディで格好いいね…。こんなん子供聴かされてたのか。

[参考]インタビューはこちら2(trend & chaos)

私たちは、スピード・グルー&シンキや、ザ・ボルテージ、ザ・カーナビーツなどの1960年代の日本のサイケデリックバンドのファンです。あなたのサウンドは、どのバンドから影響を受けましたか?
「あなたが名指した、それらのバンドが大好き。それとJ・A・シーザー、JA Seazer、東京キッドブラザース、また、裸のラリーズや芸能山城組など、もっと実験的なバンドも大好きです。
そして私たちは藤圭子、浅川マキ、中島みゆきなどの歌手のファンでもあります。

また他に影響についてこんな回答もあった。浅川マキいいよね…。夜が明けたら放し飼い(初期フジファブリック好きに合いそう)は名曲。

[参考]セッションの様子はこちら(Youtube)↓

ビジュアルコンセプト(衣装・空間)含めて演奏に魅せられる。このブログの基本方針として物理的な現象の音(と場合によっては歌詞)のみで判断して、ビジュアルコンセプトやその他の事前情報は分けて考えるようにしてるけれど、ここまでビシッとコンセプトが表れてるとそれだけで魅せられる。

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10. Play time isn't over - BREIMEN (2021)

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Release date : 2021 / 05 / 12
Label : SPACE SHOWER MUSIC
Genres : Alternative
Total Length : 29分

一つ一つの絡み合う楽器とその溶け合いが気持ちいいミクスチャーファンクバンド

音の混ざりが気持ちいい。曲とその演奏の魅力はもちろんだけど、音源としての出来上がりがいいなあ。エコーやエフェクト、それぞれの楽器の質感やバランス、位置感が調度いい。

あと曲がどれも面白い。アルバムとしての色はまとまってるけれど、その中で多様性がある。アルバムを通して最後まで魅せさせてくれる。

演奏はBREIMEN(ブレイメン)。5人組のミクスチャーファンクバンド。メンバーは以下の通り。
高木祥太 - ボーカル・ベース
サトウカツシロ - ギター
池田優太 - キーボード
林洋輔 - サックス
Kanno so - ドラムス

バンドのメンバーにサックスがいるのね。いい味を出してる。あとボーカルがベース奏者だったり、なんというか編成が渋い。いいね…。

[参考]アルバムの詳細はこちら(TOWER RECORD)

[参考]インタビューはこちら(Mikiki)

[参考]セッションの様子はこちら(Youtube)↓

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11. We Are the Sun! Home Edition - TAMTAM (2021)

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Release date : 2021 / 05 / 05
Label : rightplace
Genres : Alternative
Total Length : 21

溶け合う楽器の音が心地いい没入感とトリップ感のあるダブバンド

各楽器の音が溶け合っていて心地いい。グルーヴがうねり、その夢心地感やトリップ感があるのが音楽体験としていい。部屋でゆったりできるお茶かそれっぽいのを飲んでリラックスして聴きたい。

TAMTAMは東京を拠点に活動するバンド。メンバーは以下の通り。

Kuro / ヴォーカル、シンセ、トランペット、作詞作曲
高橋アフィ(Affee Takahashi) / ドラム、マニピュレーター
ユースケ(Yuthke) / ギター
石垣陽菜(Haluna Ishigaki) / ベース

またこのアルバムでは
Yuta "Deeply" Fukai / ギター
杉本亮(Ryo Sugimoto) / キーボード
が参加している。

ミックス・マスタリングは高橋アフィ(Affee Takahashi)が担当。

録音空間は宅録にて。

[参考]アルバムの詳細はこちら(Bandcamp)

2020年リリース『We Are the Sun!』をリモートで再編集。ライブが難しい時期だからこそ出来た宅録版アレンジの『We Are the Sun!』。

[参考]インタビューはこちら ※前作のスタジオ録音版(Mikiki)

[参考]セッションの様子はこちら(Youtube)↓

わお。いい。

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12. Introspection Reimagined - UMI (2021)

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Release date : 2021 / 03 / 26
Label : UMI/Keep Cool/RCA Records
Genres : R&B / Soul
Total Length : 27分

落ち着く溶け合うゆったりとしたグルーヴのR&B

落ち着く。曲がどれも耳馴染みがいい。グルーヴが調度いいのでスッと音の世界に入れた。気楽に部屋で流して聴くのにいい。

アーティストはUMI。LAを拠点に活動するシンガーソングライター。

[参考]アルバムの詳細はこちら(Highsnobiety Japan)

[参考]インタビューはこちら(Billboard)

Q. What was the inspiration behind Introspection Reimagined?
A. I was listening to a lot of live albums and soul music. A lot of D'Angelo, Erykah Badu [and] Lauryn Hill.

このアルバムのインスピレーションの源に、ディアンジェロ、エリカ・バドゥ、ローリン・ヒルがあるとのこと。

[参考]セッションの様子はこちら ※一部収録曲(Youtube)↓

この映像、ドローンかな。どうじゃろ。カメラの揺れと動きが新鮮でいい。演奏中にかなり近づいたり、俯瞰したり、アングルが斜めに上がったり下がったり新鮮。外の演奏での開放的な空気感がよく出てる。

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13. Anoushka Shankar - Love Letters P.S. (2020)

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Release date : 2020 / 02 / 07
Label : Mercury Classics
Genres : Alternative
Total Length : 41分

シタールと現代ポピュラー音楽の融合の一つのかたち

とにかく響きがいいなあ。シタールの響きが耳を惹く。シタールのうねる音が心地いい。全体の録音もいい。美味く混ぜたなあという印象。ワールド・ミュージックというよりかはポップスやロックと同じ耳で音の快感を得られる。

レビューの一つに彼女はシタールをde-exotify(脱エキゾチック化)しようとしてきたとあり、その表現がしっくりきた。シタールの活用法を一旦忘れて一から考えるという解体と構築から生まれる現代感みたいな。

04 Spaceが2分の小品ながらも好き。うねり、ハネるシタールの音の動きが心地良い。シタールのビート感が気持ちいい。

Anoushka Shankar(アヌーシュカ・シャンカール)はインド古典音楽をルーツとしたシタール奏者・作曲家。現在、英国を拠点に活動してる。

[参考]アルバムの詳細はこちら(TOWER RECORD)

[参考]インタビューはこちら(travel leisure)

(Q.) Has there been any upside to the pandemic for you?
(A.) Absolutely. A big takeaway for me is that my skill as an engineer has improved. I’m now comfortable recording myself and doing more editing and production than before. It’s an essential skill in the current climate, as I need to be able to work more independently.

コロナ禍によりエンジニアの技術 ――自分自身で録音して編集する技術、が本人は伸びたと言っている。他のアーティストも自分自身でエンジニア作業してるアーティストが今年と去年は多い印象。コロナ禍で宅録が増えたかもしれない。

[参考]演奏風MVはこちら ※映像に音当て(Youtube)↓

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14. Diaspora Kid - Aditya Prakash Ensemble (2020)

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Release date : 2020 / 03 / 20
Label : Ropeadope
Genres : Worldwide
Total Length : 38分

インド古典声楽を軸にしたジャズアンサンブル

インド古典声楽のスキャットとジャズアンサンブルの融合が気持ちいい。早いテンポの曲は細かく刻むスキャットのお陰でスピード感が増される。ゆったりとした曲では朗々と旋律を歌い上げていてこれもまた魅力的。この緩急それぞれに魅力的な声で対応できるのいい。

インド古典声楽の早口スキャットは強いなあ。音楽強度すごいある。インパクトと飽きのなさという音楽強度ある。

インド古典声楽によるスキャットと書いたが、正式名称はなんと言うじゃっけ。どこかで聞いた気もするが忘れてしまった。パーカッションの叩きを声で表現する「タカティタティタタカティタ」みたいなあれ。

Aditya Prakash EnsembleはボーカルAditya Prakashを中心としたアンサンブル・グループ。
リーダーのAditya Prakashは、南インド古典音楽のカルナーティック音楽(Carnatic music)の歌手。

メンバーは曲によって大きく変わるが5曲以上に参加したメンバーを抜粋すると以下の通り。
Aditya Prakash / ボーカル (全曲)
Julian Le / ピアノ (Tracks 2, 4-11)
Owen Clapp / アップライトベース・エレキベース (Tracks 1, 2, 4-11)
Brijesh Pandya / ドラム (Tracks 1, 2, 4, 5, 7, 8, 9)
Jonah Levine / トロンボーン (Tracks 1, 6, 8, 10, 11)

[参考]アルバムの詳細はこちら(Bandcamp)

this album is about moving through the melting pot of cultures I grew up with in Los Angeles through the lens of the Indian classical voice

このアルバムは私が育ったロサンゼルスの文化のるつぼを、インド古典音楽の声というレンズを通して表現したものとのこと。(大体機械翻訳ママ。)

to an aggressive Tigran Hamasyan-inspired modal jazz tune (The Warrior)

04 The Warriorをティグラン・ハマシアンにインスパイアされたモーダルジャズ曲と紹介してる。そういえば別のインタビューで今作ってるアルバムではティグラン・ハマシアンと共演するとあった。楽しみ。

[参考]インタビューはこちら(india abroad)

Although firmly rooted in Carnatic music, Prakash says his style is heavily inspired by North Indian classical music, Sufi music, Western classical, jazz, flamenco, and hip hop.

本人によると、専門で学んだカルナーティック音楽(南インド古典音楽)の他に、北インド古典音楽、スーフィー音楽(イスラム神秘主義から生まれた音楽)、西洋のクラシック音楽、ジャズ、フラメンコ、ヒップホップからも大きく影響を受けてるとのこと。ほうほう。

[参考]多重録画でのセッションの様子はこちら(Youtube)↓

それと上の動画では曲中のインドの古典声楽の歌い方の講座・解説をしている。Thakita Thakadimi Thakathakita Thakadimi...みたいな。知らない世界面白い。

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15. Garden - 古木佳祐 (Keisuke Furuki) (2021)

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Release date : 2021 / 01 / 27
Label : ARAHIMAGAS RECORDS
Genres : Jazz
Total Length : 58分

生活に寄り添う音作りのジャズカルテット

格好よ。そして落ち着く。迎合的なキャッチーな感じというよりかは硬派な雰囲気があるのだけれど、聴く人を突き放さない聴きやすさ、落ち着いた雰囲気の親しみやすさがある。耳を澄ますと理解に答えてくれる音楽。そのささやかな旋律の足運びが落ち着く。

下記のインタビューで本人が「郷愁感」「1番格好良いと思える音を自然体で出す」「自然体でリラックスすることを大事にしていた」「生活の中に私たちの演奏が寄り添えたら嬉しく思います」と語っていた。その音楽の向かい方がジャズに慣れてない自分でも聴きやすいと思ったのかもしれない。

04.For Basics7.Big Guestが特に好き。その04から07へと至るアルバムの流れもいい…。05のGardenもいい。落ち着く。06.Os en Verreのギターの鳴らし好き。格好いい。

このアルバムはベース奏者の古木佳祐をリーダーとしたカルテットによって演奏されている。メンバーは以下の通り。
古木佳祐 / ベース
松原慶史 / ギター
渡辺翔太 / ピアノ
木村鉱 / ドラムス

[参考]アルバムの詳細はこちら(TOWER RECORD)

[参考]インタビューはこちら(note : 小島良太)

後半には、曲のいくつかについてのコメントがある。アルバムを聴いた後に読むとまた面白い。

[参考]セッションの演奏の様子はこちら(Youtube)↓

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16. First Steps - Philippe Lemm Trio (2021)

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Release date : 2021 / 03 / 26
Label : Outside in Music
Genres : Jazz
Total Length : 60分

しっとりした旋律と小気味良いドラムが心地いいピアノトリオ

旋律がメロディアスでそれだけで聴ける。ドラムが小気味よいので、スローテンポの湿度の高い曲も楽しく聴ける。

03. Riverはジョニ・ミッチェルのカバー(原曲はこちら)

Philippe Lemm Trioはドラム奏者のフィリップ・レムをリーダーとしたピアノトリオ。メンバーは以下の通り。
Philippe Lemm / ドラムス
Angelo Di Loreto / ピアノ
Jeff Koch / ベース
リーダーのPhilippe Lemmはドラム奏者。オランダ・アムステルダムで育ち、音楽を学び、活動した後、現在はNYを拠点に活動している。過去のダンサーとしての経験もドラムの演奏に繋がっていると本人は話している。

ミックスはJosh Guinta at GSI Studiosが、
マスタリングはNate Wood at Kerseboom Studiosが担当。

録音空間はオランダ、アムステルダムのパワー・サウンド・スタジオ(at Power Sound Studios, Amsterdam)にて

[参考]アルバムの詳細はこちら(BandCamp)
[参考]インタビューはこちら(folio)

[参考]セッションの演奏の様子はこちら(Youtube)↓

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17. Soul Conversations - Ulysses Owens Jr. Big Band (2021)

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Release date : 2021 / 05 / 07
Label : Outside in Music
Genres : Jazz
Total Length : 72分

情報量が高くエンタメ性も高いビッグバンドジャズ

機動性すごいなあ。かっこいい。テンション上がる。=楽しい、みたいな。

しっかり聴かせる演奏。演奏がどのパートも安定感ある。安心して聴ける。機動性高く鋭く切り込んでいく演奏のスリリングさと、安定感のある音とまとまりという魅力を共に保っている。それがいい味になっている。

このビッグバンドの移り変わるソロいいなあ。人数が多いからオールスター感ある。エンタメ的に楽しい。聴いてる時の充実感、満ち足りた感じある。

04 Red Chairから07.Human Natureのアルバムの流れいいなあ。特に04 Red Chair07 Human Natureの曲と演奏が好み。展開好き、構成好き、起伏好き。ちなみにHuman Natureの原曲はマイケル・ジャクソン。またマイルス・デイヴィスの演奏も有名。

演奏はUlysses Owens Jr. Big Band。19人編成のビッグバンド。
リーダーのUlysses Owens Jr.(ユリシス・オーウェンス・ジュニア)はアメリカのフロリダ州ジャクソンビルのドラム奏者。
余談だがWikiにはジャクソンビルのミュージシャンという項目あるのね

メンバーは以下の通り
Ulysses Owens JR / ドラムス、リーダー
Walter Cano, Benny Benack III, Summer Camargo ,Giveton Gelin / トランペット
Eric Miller, Gina Benalcazar, Wyatt Forhan, Chris Glassman, Seth Weaver,Michael Dease / トロンボーン
Alexa Tarantino, 寺久保エレナ(Erena Terakubo) / アルトサックス
Diego Rivera , Daniel Dickinson / テナーサックス
Andy Gatauskas / ベース
大林武司(Takeshi Ohbayashi) / ピアノ
中村恭士(Yasushi Nakamura) / ベース
Charles Turner III / ボーカル
Stefon Harris / ヴィブラフォン (スペシャルゲスト)

寺久保エレナ氏がアルトサックスで出てるのね。このアルバムがよく好きで聴いてた。力強く、かつ柔軟性もある音色のサックスの人。

[参考]アルバムの詳細はこちら(Disc Union)

[参考]セッションの様子はこちら(Youtube)↓

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18. Sunrise Reprise - Chris potter (2021)

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Release date : 2021 / 05 / 14
Label : Edition
Genres : Contemporary Jazz
Total Length : 55分

トランペット、キーボード、ドラムス、各々の魅力が絡み合ったトリオジャズ

トランペットがメロディックに語り鳴らし、ドラムスが細かい音を刻み挟み推進力を出し引っ張っていく。ベースの低音はキーボードが担当していて、このシンセのベース音の持続する感じがまた安定感あって心地いい。このそれぞれのパートの噛み合わせの調和がしっかりとハマっていて気持ちいい。

曲では、02.Southbound05.Nowhere Now here/Sunrise repriseが特に魅せられた。ドラムスのEric Harlandのドラムのワチャワチャ感好き。そしてJames Franciesのうねるシンセベースもいい。

リーダーはCris Potter。アメリカのサックス奏者。他にも、バスクラリネット、フルートなど様々な楽器を演奏する。
メンバーは以下の通り
Chris Potter / テナーサックス、ソプラノサックス、クラリネット、フルート、サンプラー、キーボード
James Francies / ピアノ、キーボード
Eric Harland / ドラムス

[参考]アルバムの詳細はこちら(DiscUnion)

[参考]セッションの様子はこちら ※収録曲ではない、メンバーもリーダー以外異なる(Youtube)↓

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おわりに

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6月はこんな感じ。二人はプリキュア(昨日カタログで見つけた)

惹かれたアルバムをそのままパパっと載せてみたが、18枚は多かったかな。月を越えてしまった。

最近、音楽の感想が「格好いい」「魅せられた」「マジだ」「やべえ」「すげえ」「わーわーきゃーきゃー」しか言ってない気がする。ミーハーぽい。思い出したが自分はミーハーだった。これからも一人の学習者としてミーハーでいきます。

マヌルネコのうた(Pallas's cat song)Official MV
作曲/歌唱:小田朋美
編曲:Nobuaki Tanaka

この前知ったこれめちゃくちゃ好き。

マヌルネコのうた(Pallas's cat song)Official MV 1-9 screenshot

ここすき。

書き殴ったので、今から一週間はゆるく推敲します(毎回恒例)。

オワリ

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こうした方がいいよというアドバイス、おすすめのアルバム、訂正、要望、質問などがあればここへ気軽にマシュマロを投げてください(匿名)。

最後まで読んでくれてありがとうございます。よかったら「スキ」も押してくれると嬉しいです💐

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