劇場版モノノ怪『唐傘』感想文
8月某日、公開2週目にして見に行ってきました。
劇場版モノノ怪!!
揺るぎない私の最推し作品。正直15年越しに新作が見られるなんて思ってなかった。私の根幹となる作品です。
お盆まで忙しいし本当はもう少し見にいくの先にしようかな…と思ってたんですけど、上映回数見るに実写金カムやハイキューと違ってロングラン上映にはならない予感がしました。行ける時に行かねば!と思いその日の朝に思い立っていざ!
結論から言うと、見に行ってよかった。素晴らしかった。これぞモノノ怪!という圧巻の色彩美。
ストーリに関する「結局どういうことなの?」と言う解明しきれない部分は、シリーズ全体通して基本「お考えください」みたいなスタンスなので気にならなかったです。劇場3部作ということで、追々わかってくることもあると思います。
それでも初期化猫のときと同じくらい、終盤にかけてストーリーとしてのドキドキ感は高かったです。90分が一瞬でした。
目からの情報量を脳内で処理しきれずまじ無領空処。思考を放棄して完全に宇宙猫みたいになってる時間がありました。
監督もインタビューで話してましたが、一瞬でも目を離すと見逃すくらいのスピード感。おまけに物語としての内容を頭の中でひたすら考察しているので脳内は大忙しです。
この監督のインタビュー面白くて、「映画を倍速で見る人たちがいるくらいなら最初から倍速みたいに動かしてみよう」という発想に至ったそうです。確かに戦闘シーンのスピードはすごかったです。めっちゃアクティブに動く薬売りさん。
難しいのよくわかんないかも!って人でも、映像作品として見るだけで価値がありあまります。おそらく信仰に隠されたモチーフのようなものがあるんだろうけど、私も難しいことはよくわかんない。90分ひたすら極彩色の浮世絵が目まぐるしく展開されていきます。予告映像見て「綺麗」って思ったら、ぜひ劇場で動く薬売りさんを見て見てほしいです!
神谷さんの薬売りさんも櫻井色を残しつつ、全く違うとも同じとも思えぬ違和感のなさでプロすげー!って思いました。報道当初、公開が延期になったり制作が中止になる可能性も囁かれる中、新たな薬売りさんの命を吹き込んでくれた神谷さんには感謝しかないです。
今回の薬売りさんは2号のようなものらしく、1号の薬売りさんとは別個体とのこと。櫻井さんの薬売りさんはだいぶ妖艶というかこの世ならざる感があったので、神谷さんverは動きまくるしだいぶハツラツとしてましたね。よく喋る感じとか間が初期化猫の薬売りさんを彷彿とさせました。
「(モノノケが)きた!」っていう時に嬉しそうで、思わず心の中で「よかったね!!」と返しちゃったよ。
今の感情をそのまま残しておきたいので、ここからは時系列無視の私の感想垂れ流しです。読みやすさにもネタバレにも配慮がないのでご注意ください。
・アサちゃんとカメちゃん
今作の舞台は大奥。
2人の女性が女中として大奥にやってくるシーンから始まります。
ここですでに好きポイント!
私、モノノ怪シリーズなら「鵺」がいちばん好きです。モノクロ色彩の鵺、水墨画を思わせる色調はもちろん、音楽や香が広がる音がすごく好きで。カメちゃんが持ってきたおむすびの描写でそれを思い出して「コレコレ!」と冒頭からテンションMAXでした。
物語のメインはここで登場するアサちゃんとカメちゃん。門番に「評判通り」と言われるほど見目麗しい2人。
自分の感想を書き終わるまであまり他の人の感想は読まないようにしてるんですけど、我慢できずざっとXを見た感じ、この2人の関係性が腑に落ちてないという感想をよく見ました。
なんでアサちゃんがあそこまでカメちゃんを大事に思うのか。私は自分のなかで「一目惚れかな」と落とし込みました。事前に門番に評判が届くほどの美貌で、明るくてザ・太陽属性って感じのカメちゃんの第一印象。節々から感じる冷静ぶりというか、そもそも「捨てるほどのものを持っていない」というアサちゃんにとって、屈託なく接してくるカメちゃんに初見で惹かれるものがあったんじゃないかと。
ただ第一印象太陽属性といったものの、私カメちゃんというキャラクターがそこまで善人のようにも思えなくて。最初は明るくて世間知らずのいい子、みたいな感じだったけど(それでも途中に不穏に感じる描写もあった)、徐々に行動に違和感を感じ始めて、麦谷さんに詰められるシーンで「カメちゃんADHDなんかな…」と見てて辛くなりました。
遅刻(朝寝坊)が多い、仕事の優先順位がつけられない、作業は遅いけど丁寧…諸々に特徴が見られて「他人と同じようにできなくて…」と話す姿が見ていて辛い。詰められるカメちゃんを見て淡島さんがグッとなってたのは、大なり小なり自分にも身に覚えがあったからなのかな。アサちゃんや北川さんのように、元々優秀ではなくて努力で今の地位に就いた人な気がするし。
そもそもカメちゃんは何でそんなに大奥の構造に詳しかったんだろう。綺麗に着飾って天子様に見初められて働かずに暮らしたいだけなのか。決して悪人というわけではなくて、現代でいう「インフルエンサーとかキラキラした女子に憧れる女子」というイメージです。
悪い子だとは思わないけど、ふとしたきっかけでタチの悪い女になりそうな危うさがあるなと思いました。女子としての造詣がリアル。最終的にはアサちゃんを助けてくれたし、大切なもの(櫛)は形を変えて戻ったところで、彼女本来の明るい姿のまま大奥から退場できたのでハッピーエンドなのかな。今回限りで退場ということもない気がするけど。
どちらかというとアサちゃんの方が純粋そうでこの先が心配です。そういえば結局坂下さんが言ってた「変わってしまった子」って誰だったんだろう。北川さんって言及もなかった気がするけど、もう一度見返したらわかるだろうか。次も同じ舞台ならアサちゃんとボタンさんがバチバチになりそうで怖いです。
・今回はあまり出番がなかったキャラクターたち
今回あんまり重要な役回りではなかったけど、私の中で印象に残りまくったのが平基でした。なんですかこの「風立ちぬ」の本庄のような、「コクリコ坂」の水沼のような立ち位置になりそうなキャラは。次回以降の立ち回り次第で人気が出そうな感じですね。
薬売りさんの「愛されたい、認められたい、それは1人では叶わぬもの」みたいなセリフが印象的だなと思ったんですけど、このときのワンカットが平基だった気がする。一瞬すぎてちゃんと見れなかったから次のときに確認したいです。
ふざけているようでしっかりと裏で仕事をしている。三郎丸と歌山の印象について話すシーンで、ふざけた調子ながら外の気配に対処しようとしてるのよかったです。三郎丸もいい奴そうだったので、この2人と坂下さんは薬売りさん側の人間であり続けてほしいです。
あと溝呂木さんと天子さまは今回出番が少なすぎたので次回以降に期待です。CVツダケンさんの司祭なんてラスボスの予感しかないんだけどどうなんだろう。双子の娘ちゃんがかわいかったです。シンメトリーの化粧がいい。
御中臈の出番も少なかったので、この辺の内部の話も次なんかな。上様の御成のシーンと夜伽に入る前の儀式のシーン、フキさんすごい嫌々そうだったのに最後はニヤッと笑ってたので、この辺の話も気になります。登場人物見て知ったけど町人出身らしいので、ここも物の怪に関わってきそうですね。
・歌山さまと老い
諸悪の根源ぽい立ち位置にいながら、なぜか憎みきれない歌山さま。「長いこと地位に固執しすぎた」ぽいことを言われたり、ボタンという生まれの良い野心満々の側近(not部下)がいたり。
手の皺やシミが映し出されるシーンが多く、彼女の老いからくる焦燥のようなものを感じました。
地位に固執している、というより大奥を大奥たらしめるために生きているんだろうなと。自分の後継を担うに足る人物が現れれば、しっかり引き継いで舞台から退くように思える。
それが北川さんやアサちゃんだったんだろうけど、優秀な人物が優秀な上司であるとは限らない。北川さんももちろんそうなんだけど、個人的には今回の唐傘シリーズでは歌川さまが一番大奥によって振り回された人物のように感じました。
グッズはほぼなくなってて残念。パンフレットだけでも在庫確認したらよかったな。入場者特典はお札をゲットできました。
改めて制作に携わった全ての方々に感謝です。新作のモノノ怪を世に解き放ってくれてありがとうございます。一ファンより。
次回作も楽しみ!
あとクラウドファウンディングの中に東大寺の名前があって思わず吹き出しそうになりました。
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