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AIは優れた上司になれるのか?
AIは人間に比べて、合理的かつ的確な答えを出すことができるといわれます。今後、AIが人間にかわって業務上の意思決定をする機会が増えてくるかもしれません。
では、実際にAIをつかって従業員に指示を出した場合、人間が指示をした場合、いったいどんな違いが出るのでしょうか。
結果は意外なものでした。
人間 vs AI、指示の違いで成果は変わる?
ドイツのあるキャンピングカーレンタル会社が、キャンペーンを行うにあたり、実験参加者に「効果的なキャンペーンスローガンを考える」という課題を与えました。
実験に際しては、次の2つにグループが分けられました。
・グループ1:人間から指示を受けて作業に取り組んでもらう
・グループ2:AIが指示を出す
さらに評価の高かったメンバーには、報酬が支払われると約束されており、人間が指示したグループは人間が、AIが指示したグループはAIが、その評価をすることとなっていました。
結果同じだった…が
結果は、人間に管理されたグループも、AIに管理されたグループも、作業完了までにかかった時間、提出されたスローガンの長さ、スローガンに対する感情、スローガンの質、いずれの項目においても有意な差はありませんでした。つまり、どちらのグループも同じ出来だったわけです。
これだけを聞けば、AIに作業指示をさせても問題ないのではないかと思います。
AIに管理されると同僚に冷たくなる
ところが、実験のあとに「他の人にスローガン作成のアドバイスをしてほしい」とお願いをすると、意外な結果となったのです。
AIに管理されたグループは、人間に管理されたグループよりも、与えたアドバイスの量が22%も少なかったのです。さらにアドバイス内容の質も、AIに管理されたグループのほうが低かったのです。
どうやらAIに管理されると、同僚に対して冷たくなってしまうようです。一体どういうことでしょう。
単なる労働力とみなしてしまう
この実験を行ったミュンヘン大学のアルミン・グラヌロ教授らは、AIが従業員を管理すると、「会社が自分を単なる労働力としてしか見ていない」と感じ、同僚同士での助け合いの気持ち(プロソーシャル動機)が希薄になる、と述べています。上司に人間味や思いやりといった感情がなければ、同僚にも同じ態度を示してしまうのです。
さらに、「自分が会社からどう扱われているか」が直接的に伝わる「人事評価」においては、AIが部下を評価するという実験を行うと、「人間的な配慮が欠けたただのデータとして評価された」と感じ、同僚との関係性も大きく悪化する結果が示されました。
人間の感情的なつながりが大切
AIは、たしかに合理的で感情に振り回されない適切な判断が下せるかもしれません。しかし、そこには機械的なアルゴリズムによる指示しかなく、情緒的な配慮やある種の“ゆとり”は感じられません。
効率化を追求すればするほど、「最低限の指示にのみに従おう」となってしまうのかもしれません。ある面では危ういけれど、人間独自の感情的なつながりが、仲間を手助けし、お互い協力しあいながら成果を上げるのです。