縁切り神社が都合の良い女だった私の人生を変えてくれた|安井金比羅宮を参拝した時の話【恋愛】
2013年 初秋の京都
夜行バスに乗り、現地の友だちに夕方から会う前に、観光がてら寺社仏閣を訪れていた。
京都駅に朝一番に着いて嵐山へ向かい
野宮神社へ参拝した
電車やバスを乗り継ぎながら
女性に幸福をもたらす、市比賣神社にもお参りに行く。
清水道へ向かうバスに揺られ、ガラケーから機種変更したばかりのスマホで次の行き先を検索する。
次は八坂神社に行こうか地主神社に行こうか…
神社に1日に沢山行ったら、神様同士が喧嘩してしまう。ご利益もなくなるのか
ふと考えたが、そんなことどうでもよかった
彼のことを考えると焦りと不安で全く余裕がない。
次の行き先を告げる表示板が光った。
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当時お世話になったアルバイト先はみんな仲が良く、毎晩のように複数の仲間で一緒に飲みに行ったり遊びに行ったりしていた。
その中に彼はいた。
少し年下だけど、落ち着きがあり
当時の私と似たような目標を待っていた
将来のことや自分の目指しているものについて
熱く語った。
いつの間にか2人でいることが増え、多くの時間を共有することになった。
誕生日、お祭り、クリスマス
色んな時を2人で過ごして
季節が変わったけれど、特に関係は変わらない
「あなたは、僕の目標です」
気持ちを伝えても
彼は私にそれしか伝えてくれない
季節が春になる
彼の隣には、違う女の子がいた
そしてまた1年が過ぎる頃にも
私はただの元同僚として働くことしかできなかった。
出会いと別れを繰り返し、進展をいちいち報告してくる彼に心の中で一喜一憂する。
「あなたには、僕の前を走っていて欲しい」
都合の良い甘い響きに、惑わされる。
この恋愛に2年も費やしてきた。報われたい。
それには彼と付き合うしかない
どうか、彼との縁をもう一度結んでください
何としても自分の恋愛を成就させたい気持ちと
彼に振り回されるのはもう嫌だという気持ちがせめぎ合い
心の底から疲れ果てていた。
-
『次は、東山安井、東山安井です』
安井という地名には、覚えがあった。
安井金比羅宮だ。
とても強力なご利益があると言う、縁切り神社だ。
ちょうどNHKのドキュメント72時間で特集を組まれたばかり。テレビ越しに見たおびただしい量の真っ白い何かが貼られている石碑が、なんとも言えず印象的だったので覚えていた。
今日の1日だけでも、色々な縁結びの神社に行ってきた。
その人のために時間を費やした。本来なら縁切り神社なんて考えられない。
けど、行ってみたい…
行ったら何かが変わるかもしれない
気になって気になって仕方がない自分がいて。
気がつくとバスの停止ボタンを押していた
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細い路地を進むと、空気が一変する。
ラブホテルと、神社の鳥居が混在する不思議な空間だった。
そして、境内に入った
目の前には石碑が佇んでいる
石碑だというのに石の部分はほぼ見えず
白い山のような、何か生き物なのではないかという勘違いをしてしまいそうな外観
石碑の前にいた人をよく見てみると、白い何かを貼っている。
あの白い固まりは、お札だった。
一つひとつ切りたい縁の念がこもっている。
どうりで禍々しいはずだ。
お札を購入する場まで向かうと、説明書があり
このように書いてあった
なるほど、潜ることで一度縁を切って
また新しい縁を結ぶのか…
賽銭箱に100円を入れ、札を取る
お札を書くとき、私の手が止まった
これまでの彼とのことを思い出し、楽しかったこと、苦しかったことを振り返った。
自分が異性に、人にここまで自分を出せたのが初めてだった。まだ経験の浅かった自分は一度感じた思いに縋ろうとしていた。
縁を結びたくてたまらなかった。自分の思いが報われる経験がほしかった。
けどもう疲れてしまった
彼に振り回されて何も成せないまま自分の人生が終わることを考えるとゾッとした。
ここに来たことが偶然とは思えない
もう縁を切って、新しい人生を進みたい
買ったお札に
「〇〇と縁を切り、幸せな恋愛がしたい」
と書き、石碑に向かった
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背負っていたリュックを降ろし
石碑の穴に入った。願い事を念じながら匍匐前進で進んでいく。
苦しい恋愛、さようなら
新しい道が拓かれますように
振り返り、また同じ穴をくぐっていく
幸せになりたい
今度は楽しい恋がしたい
石碑の穴から出たときには、少し泣きたい気分になった。けど、同時に晴れやかな気持ちだった。
どんな形かはわからないけれど、きっと幸せが待っている。
そんな気持ちでいっぱいだったから。
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不思議なことに、そこからは彼と物理的に会わなくなった。
私も本業の方が忙しくなり、あまりバイトに入らなくなったし
向こうからも特に連絡もなく日々を過ごしていた。
最後に会ったのは、同僚みんなで初詣に行ったとき
ご飯を食べに行こうと言われたけど、あまり気乗りせず断ったのが最後だった。
少し怖いことに、そこから彼と一度も会っていない。彼の姿を全く見ていないのだ。
それから本業の職場で、現在の夫と出会い
かわいい2人の娘に恵まれた。
自分の求めていた幸せな恋愛はできたと思っているし、大変な時の方が多いけれど子どもと一緒に生活する幸せも経験できている。
結婚してすぐ、一度だけ彼と電話で話す機会があった。
彼はバイトから社員になった仕事を辞めていて、私より少しだけ前に結婚をしていた。
「お幸せに」
と言い合って終わることができて、本当に良かったと思う。
そこからは彼の消息もわからない。
あの時、縁切りをしてよかったと思う
彼自体の縁を切るというより、
自分の気持ちにあった彼に執着する気持ちを断ち切れたからだ。
あの時には、彼を幸せにしたいという気持ちも感じる余裕なんてなかった。
きっとこのまま彼と関わっていたら
彼を幸せにすることができなかったし、自分も幸せではなかったと言い切れる。
気づきを与えてくれた安井金比羅宮には本当に感謝をしています。
今何かに悩んでいる人がいたら
縁切りは何か人生を変えるきっかけになるかもしれません。
小さな行動を起こす、一助になりますように
お読みいただきありがとうございました