物件内覧会
注意:記事トップの写真は関係ない物件です。
アポイントメント
福岡を出て、まず行きたいと思っていたのが長崎。しかし、船乗り場で出会った佐賀のおじいちゃんの物件も見に行っておきたかったので、前日に電話していた。
「もしもし、明日そっちの方行こうと思うんですけど、都合の良い時間とかありますか?」
「うーん、明日は家におるかおらんか分からんで、また近く来たら電話頂戴」
「分かりました、また明日かけますー!」
切った後に、今の電話では何も決まってないのと一緒じゃないか。と思ったが、佐賀は長崎へ行く途中にある。
だから、着く直前くらいに電話をかけて、都合が悪ければそのまま長崎に行ってしまえば良いかと思い、あまり気にしなかった。
翌日、実際に電車に乗る前に電話をかけると大丈夫そうだったので、佐賀の物件を見に行くことに。
その物件は吉野ケ里遺跡の近くにあるという。
僕は不勉強で吉野ケ里遺跡を知らなかったので、おじいちゃんに吉野ケ里遺跡の近くと言われてもピンと来なかった。
有名だぞ、と言われたが、有名だからといって誰しもがピンとくるわけでもない。
同じ様にピンとこない人のために簡単に説明しよう。
吉野ケ里遺跡とは、弥生時代に日本の稲作文化が始まり、定住文化が根付いた日本の文化の原点ともいえる場所。
だそうです。
そう考えると吉野ケ里遺跡の近くってなかなか凄い場所だなと思う。
日本の原点。とてもいい響きだ。
吉野ケ里
吉野ヶ里公園駅に着き、おじいちゃんに電話すると10分ほどで迎えに行くと言われた。
やがておじいちゃんが迎えに来てくれたのでバックパックを積み込み、助手席に座った。
これからどんなところに行くのだろうと期待を抱きながら、おじいちゃんと会話をし、家に着く。
一見普通の一軒家の様に見えるが、外から見ただけでは何も分からない。
お邪魔しますと言って中に入る。
一階部分は普通の住居用スペースとなっており、薪ストーブが設置されていて少しテンションが上がった。
早速、おじいちゃんが貸してもいいと言っていた場所を見せてもらうことに。
そこは一階から少し螺旋状になった階段を降りた地下室で、壁や床には統一感のある木板、カウンターまでついており、なんと地下にも薪ストーブがあった。
更に、小さい個室が二部屋ついていて、そのうちの一部屋に僕が寝泊まりすればいいと。もう一部屋は事務所か何かとしてでも使っていいとの事でかなりの広さだった。
おじいちゃん曰く約100平米あるはずだということだ。
広さは理想的で、自分が考えていた物件の理想条件の中にあった薪ストーブまで叶えられている。
一度、一階に戻っておじいちゃんと話をした。
おじいちゃんはここでやるのもいいけど、親のそばにいてやるのが一番良いから、名古屋で物件を探す様に勧められた。
名古屋にも物件持ってそうな知り合いがいるから電話して訊いてやると言って、電話をかけ出した。
名古屋で見つかるならそれもそれで悪くないと思ったが、どうやら知り合いは電話に出なかったらしい。
着信を見たらすぐにかけ直してくるだろうからと、そのままおじいちゃんと話を続けた。
それからも繰り返し僕の親のことを心配する発言をしていた。
僕もそこまで言われるとだんだん悩んできた。
親のこともあるが、実際に物件が見つかるなら名古屋の方が動きやすいだろうし、需要もあるだろうと。
これも流れに身を任せようと思い、自分の中で佐賀県滞在中に名古屋の知り合いから返事があれば、佐賀の物件は諦めようと心の中で決めた。
巡る
しばらく話をしてから僕は一人で近所の散歩に出かけることにした。
近所がどうなっているのか気になったのと、少し頭の中をスッキリさせたかったからだ。
すぐ裏に団地があり、子供が4,5人で遊んでいた。神社やお寺がすぐ近くにあり、田んぼが一面に広がっていた。
一見するとかなりの田舎だが、その後おじいちゃんと夕飯を食べに出かけた際に教えてもらった情報によると、国道がすぐ近くにあり、久留米、鳥栖、佐賀市街まで30分ほどで行ける。
高速のインターもすぐ近くにあり、最寄駅も車で10分ほどだし、立地も悪くない事を知った。
散歩している時に見かけた新築ももしかしたら移住者が増える兆しなのかもしれない。
夜はそんなことを考えながらほとんど一睡もしないまま考え事をしていた。
*これまでもよくあった様にこの日はおじいちゃんの家の地下に泊めさせて頂いておりました。笑
この場所こそ自分が探していた物件なのか。ここでやるとしたらどんな空間を作れるだろうか。ここでの生活はどの様なものになるのだろうか。などなど。
今でこそそんなことを考えていたな、と文字にすることができるが、実際この時は自分が何を考えているか自分でも分からないほど、色々な思考がとんでもないスピードで頭の中を駆け巡っていた。
気がついた時には夜は明けていた。
一階に上がるとおじいちゃんはまだ寝ていたので、玄関からそっと靴を取って、戸を開ける音で起こしてしまわない様に地下から外に出た(外からも直接地下室に行ける様になっている)。
朝の新鮮な空気を吸い込みながら散歩していると、多くの人の活動時間になったらしく、交通量も多くなってきた。
その中で小中学生も登校する姿を何度も目にしたことで、子供だけで歩いて来れる距離だということもわかった。
個人的に驚いたのが、すれ違う登校中の学生の多くが、朝から私服姿でふらふらしている僕を見て「おはようございます」と挨拶してきたのだ。
さぞかし怪しく見えただろう僕に対して挨拶してくれるとは、良い子達だなぁとグッときた。
家に戻るとおじいちゃんは起きていた。
一緒に朝ごはんを食べ、武雄市図書館に送って頂いた。
大きな図書館で本好きにはたまらない眼福図書館。
蔦屋書店と行政が一緒に運営しているそうで、一部本の購入もでき、スターバックスも中に入っており、カフェとしても利用できる様になっていた。
図書館を堪能して、ここでおじいちゃんとお別れすることになった。ここからは駅まで歩いて行ける距離だった。
数回名古屋の知り合いに掛けた電話は、ついぞこの時まで折り返しがかかる事はなかった。
つづく