6月10日〜15日の新聞各紙歌壇俳壇チェック
6月10日 日経俳壇より
●土筆摘む誰彼の名をいつか忘れ
名前がほんまに思い出せなくなりましたが、思い出せたときの心地よさたるや。あと、忘れてることを悟られまいとする小賢しさ。
●麦笛の誰でも吹けてみんな下手
あたたかい視点がありますよね。『セッション』みたいな世界でなくてよかったです。
6月10日 日経歌壇より
●トンネルのできたる便利に失へり起伏の趣き風の樹の声
便利さを追い求めるあまりに捨てざるを得ないものってだいたいこういう情感なんですよね。合理化って何なんでしょう。
●消化器のはずし方など考える光の揺れる電車の中で
ほら、こういう何気ない時間、なんでもない思考が合理化によって削られていくのです。
6月11日 朝日俳壇より
●初夏の渚つま先立ちの恋
懐メロの夏ソングみたいですね。眩しい。
●泳ぎてははるかに見えし烏帽子岩
チャコの海岸物語を思い出しました。
●海風や句帳置きあるハンモック
俳句をひねるようになってから歳時記は私もいつもカバンにしのばせておりますが、この人の暮らしは羨ましい。こんな暮らしがしたい。
●すれ違ふ耕人みんなおばあさん
おじいはどこへ行ったのか。死んだのか、戦に駆り出されているのか、などと考えて暗くなりました。
6月11日 朝日歌壇より
●デニソワもネアンデルタールも皆消えたホモ・サピエンスは自ら崖に
ほんまにアホやと思う。他人事みたいにそうやって言う私もアホだ。
●母が摘みし好きな押し葉が挟まれて牧野植物大図鑑厚し
私も新聞の切り抜きをノートに貼り付けているんですが、びっくりするくらい分厚くなって、なんか、浮腫んでるみたいなんです。
●竹製の三十センチ物差のかすれた目盛り父の手触り
父とわかっているからこその温もり。こういう温かさも合理化の犠牲になりやすい。なんてことを突き詰めていくと俳句と短歌は・・・抗わねば。
●取り立ての楤の芽こごみコシアブラ縁に広げて健脚の父
うちの父親もこういう人でした。俳句を作るからには私ももう少し自然に触れ合わねばならん。
6月13日 朝日俳壇より
●祭足袋地べたに坐る裏通り
裏には裏の顔がある。絶対タバコ吸うてますよね。百貨店のバックヤードに近いものを感じました。
●亀鳴くや無人踏切渡るとき
鳴くくらいなら引き返せ!まだ間に合う!
●妻逝きて白くなりゆく暦かな
こんな可視化がいちばん胸に迫ってくる。
● 跣足もて踏めば畳のよろこびぬ
手袋で握手するより素手のが気持ちが伝わるなと同じですね。
6月13日 朝日歌壇より
●富士山の近くに住んでも富士山が見えない家もあるのだと知る
よくよく考えてみれば当たり前の話なんですけどね。京都の人が意外と金閣寺に行ったことないのとはちょっと違う。
●みかんの花庭に散り敷き本年は我が口のための収穫ありや
ご近所さんたちに配ってしまうから自分の分がなかなか確保できないっていうことやと思ったんですけど違いますかね。
●日本語の花模様には花があり雨模様には雨がまだない
雨模様は誤用が多いですね。これだけ誤用が多いのならもうそれは誤用にしなくてもいいと思う自分と正しさを求める自分がいる。
●強烈なスマホ画面の光害を受けし老いの目洗ふ新緑
これは近頃よく感じることです。
6月13日 毎日俳壇より
●海に落つる夕日まぶしき袋掛
農家の仕事終わり、夕暮れの疲労感の心地よさ。
●新緑や上着担いで御堂筋
イキってるなー。仕事できなさそう。などと見かけで判断してはいけない。
●バーテンダー神田祭の別の顔
そう。人は見かけで判断してはいけない。
●初つばめ喫水線を来たりけり
つばめってすれすれを生きますよね。同じ毎日俳壇には「すれすれを飛ぶうれしさや燕の子」というのもありました。
6月13日 毎日歌壇より
●違う傷持っているから抱き合った時に重なり合える僕たち
違う傷だから重なり合える。安易に「わかるわかる」なんて共感する相手というのは重なり合うほどの仲ではないのだ。
●わが街の田んぼの道の無人店傘が開けば入荷の合図
イエスノー枕を思い出しました。
●おれの持つレシートの数かずかずの分岐の果てに昼のコンビニ
無数の選択肢を無数にくぐり抜けた昼のコンビニには運命めいたものがありますが、そんなことを考えながら生きていたら身体がもたない。短歌で遊ぶくらいでいいんだと思う。
●本当に星は大体丸いのでヒトデは球であるべきなのだ
こういう発想のひっくり返し方が割と好きです。
6月15日 産経俳壇より
●おしゃべりな男や砂を吐く浅蜊
砂吐くおっさんいるわー。ほんまに面白くないんですよね。自分が面白いと思っている話が実際には面白くない。
●空よりも青い便箋夏来る
俳句を続ければこういう繊細な暮らしができそうで、そういう暮らしに私は憧れる。
6月15日 産経歌壇より
●しなやかにゆるっと生きると生きやすいマイナス感情笑いに変えて
っていう暮らしに近づけそうなのも俳句だったりする。短歌ではない。短歌ではもっとマイナス感情をどろどろのまま表現したい。
●夢ばかり見て眠れない明け方の空気はとてもつめたくて嫌
私はむしろ好きなので人それぞれ感じ方は違うものだと思った。
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