5月6日〜5月8日 新聞各紙の歌壇俳壇チェック!
俳句も短歌も自分で作るだけでなく、誰かの作品を批評することが大切らしい。そうやって多種多様な作品に直に触れることが上達に繋がるんでしょう。というわけで上達を信じて私も新聞各紙の入選作品についてなんやかんやと書いてみることにしているのです。
5月6日 日経歌壇より
●体験や記憶の風化とすぐに言うが風化があるから救われている
記憶が風化してしまうがゆえに生き永らえられることもある。自然災害に限らず職場でのパワハラなどもそうでしょう。
●発車まで五分しかないお土産屋定番やめて直感で決め
定番は間違いないんですが、その安定感ゆえ面白みに欠けるんですよね。ただ、私の場合、だいたいこの直感が外れてしまう。
5月6日 日経俳壇より
●名を付けてより子雀が見分けられ
愛情をもって接すれば子雀でも見分けられる。
つい先日、鳥の迷子なんか見分けられないと嘲笑った女性タレントが炎上していました。誰が何をどの程度大切にしているか、を他人が自分の尺度で測ってはならないのだ。
●引出物ベンチに放り半仙戯
まあ、酒が入ってますよね。ブランコに酔わないか心配です。何がどうというわけでないのに「なんかわかる」って思わせてくれるこういう俳句が好き。
5月7日 朝日歌壇より
●病床の母に言えないありがとう言えば死ぬこと知られてしまう
かと言って言わなかったら言わずじまいに、、、。これは永田和宏さん選なんですが、永田さんが「死期近い人に「ありがとう」を言うのは本当に難しい。私にも覚えがある。」と書いていて泣きそうになった。
●AIが悟りひらく世か高台寺でアンドロイドが仏道を説く
なんとも高台寺らしい。こちらは馬場あき子さん選ですが、同じ馬場さん選に「滝道に沿ひて小さき寺ありて道案内は山羊の呼ぶ声」があり、こっちの寺のが絶対ご利益あると思った。
●椅子もろともリフトに吊られ湯船に入る揚げ物の具になりたるここち
菜箸で油鍋に放り込まれる海老やイカ。おもしろい比喩です。諦念というか、現状を受け入れる力強さというか。
●にぎやかに小店ずらりと立ち並び名のみ残れる「哲学の道」
それでも名前が残ってる分、思索にふけるには適した道やと思います。最近行ってないけど。
5月7日 朝日俳壇より
●矢印は常に前向き初燕
ツバメのまっすぐ疾走するあの淀みないスピードには憧れがあります。あんまり見ないけど。
●恐る恐るふつうの春を楽しめり
2類とか5類とか、どれだけ信用できるかわからない人が決めた決まり事に右往左往する愚かしさ。かといって5類になったのにマスク強要されるのも腹立たしい。なんにせよ、誰にどうこう言われることなく自分の判断で感染症対策したい。
●子の名刺両手で受けて山笑ふ
両手で受けてるところにおどけた感じが出てますよね。気恥ずかしさを隠してる。笑ってるのは山だけやありません。
●囀の塊木々を渡りゆく
鳥の鳴き声を「塊」っていうのが面白いです。つぶやきの塊が人を殺したりする世界。
5月8日 読売歌壇より
●「すずめ五羽、二羽とんでけばあと何羽?」幼は悩む「...もどってくるかも」
義務教育はこういう感受性を遮断してしまわないようにしていただきたい。
●ハンカチを捜しに駅まで引き返す今後のわれの戒めのため
財布やスマホと違うから別にいいんですけどね。それでも引き返す面倒を思えば次から気をつけるかも。同じことを繰り返すかも。
●迷いなく布を切るときてのひらのなかでツバメになる裁ちバサミ
さっき矢印が常に前向きでしたけど、ツバメにはこういう思い切りの良さがありますよね。優柔不断がすぎる私には羨ましい存在です。
●給食をおしゃべりしながら食べること今年の夢を問われて少女
少女の夢は叶いつつある。もう叶ってるかも。ささやかな夢です。つい何年か前までは当たり前のものだった、悲しいささやかな夢です。
5月8日 読売俳壇より
●大空に来た道みつけ雁帰る
我々には見えませんがあの空にもちゃんと「道」があるのでしょうね。渋滞もないし法律もないのに争いもないただただ自由な大空。
●遠足の子のものらしき落し物
これもなんてことない風景ですけども。微笑ましい。
●書き終へて切手はどれに春惜しむ
送り先の相手の顔を思い浮かべたり、季節感を大事にしたり、いろんなことを考えるほどにどれにしようか悩む切手。この「悩む時間」こそが「豊かさ」なんだと思うな。
●花一片靴にも犬の首輪にも
花びらがくっついてる描写が私はなんだか好きなのだ。
5月8日 毎日歌壇より
●ひびだらけの土鍋の肌を見つめおり働いてゆく壊れぬ限り
土鍋めっちゃ働くからなー。あんな頑丈なもんに自分を重ね合わせてしまったが最後、働けるだけ働かないといけなくなる。
●何とまあ今年入りし社員らは社長訓話を倍速で聞く
たぶん、若い世代はこういう「レッテル貼り」が何より嫌いなんだと思う。「Z世代」とか。
●肺癌で咳き込む母はバスのなかうつりませんと幾度も詫び
もう公共の場では咳き込むことも難しくなりました。現に私も咳き込んでる人をいまだに警戒してしまうのが悲しい。
●)パーレンをひっくり返す手のひらでさくらの花を受けるみたいに)
恥ずかしながら「おいおい、毎日新聞、頭に)とか、完全に誤植やん」と思ってしまった私が情けない。こういうのって、対象物のことをどの程度信用しているか、なんですよね。ネットなんかより百倍信じてるつもりやったのに。
5月8日 毎日俳壇より
●風光る路上ライブのサキソフォン
俳句をはじめたのが春。最初に「かっこええ」と思った季語が「風光る」やったので、これが入ってる句は惹かれてしまう。
●歳事記を母の柩に花の雨
柩に歳事記を入れてやろうと思わせるほど没頭した俳句。私はそれほどまでに熱中できている何かがあるだろうか。
●珈琲のかをり湖岸のテントより
これはテントが季語なんですね。テントで珈琲を沸かせるなんてけっこう上級者なのでは。作法にうるさいおっさんじゃなかったらいいんやけど。
●清明や光差し込む石舞台
清明の頃の清々しい青空の下、石舞台に陽光が差し込む。俳句に詠まれるための景色やん。それでもちゃんと詠むのは意外と難しいねん。
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