5月20日〜25日の新聞各紙歌壇俳壇チェック!
俳句や短歌がもっと上手くなりたいけれど、現状月に一回、俳句の句会があるくらいなので、これでは現役の俳人歌人との差は埋まらないどころか開くばかりであるから、少しでも差を埋めるべく、新聞各紙の俳壇歌壇をチェックすることにしました。
今回は5月20日〜25日分です。
5月20日 日経歌壇
●長雨と猛暑交互に襲いきて季節の区切り解らずじまい
現実にはこういうことがままあるんですが俳句には厳然たる季語の壁があるのだ。
●廃棄ゴミ自分の履いたスリッパを最後に入れて実家終う日
この最後にスリッパを入れる瞬間のほんまに最後なんやなっていう感慨。
5月20日 日経俳壇
●誰が為に勤労せむパリ燃ゆる春
パリではいい大人たちが熱くやるせない気持ちをデモにぶつける。日本は熱くなればなるほど冷笑される。冷笑至上主義のアホな社会。
●筍を剥くどの頁も真白なり
筍のあれを「頁」と捉えるのがいいですよね。
5月21日 朝日歌壇
●弁当を使うと言って笑われた美味いをやばいと言う後輩に
「使う」の使い方を知らなかったので今年の正月に母親に聞きました。あらゆる感情がやばいに集約されていったらやばい。いや、まじでやばい。余談ですが、先日久しぶりにアダルトビデオを観まして、いまはあの業界でも「やばい」が多用されておりました。
●沢山の本をかかえて待つ親子やっと図書館出来たわが市に
図書館ってアミューズメントパークなんですよね。このテンション上がってる親子のうきうきした感じが素敵でしかたない。
●まなざしのきらめきで鹿は見分けおり観光客と土地の者とを
意外と鹿たちのほうがよく人間観察してるんですよね。
●温泉のひとつ湯舟にひたるごと死に親しみを抱く日あるとは
この域にはまだ達しておりませんが、行先にこういう世界があるのか、と。
5月21日 朝日俳壇
●古里やどれもできたて春の山
見慣れた古里の景色でも春になると生まれ変わっとるんですよね。この新陳代謝が人間にも必要だ。
●見舞客桜を褒めて帰りけり
最後の別れ、感情を持て余して桜を褒めるしかないんですよね。桜があってよかった。
●黄金週間何もしない事をする
津村記久子さんが「寝ることはエンターテインメントだ」と言うてました。大谷翔平でさえ8時間寝とるんやからええ加減、腐った企業も24時間戦えますか精神を捨て去らなければ。
●ばーど一ごうと書かれある巣箱かな
子供が書いたのかわいくて仕方ない。ニごう三ごうもどこかにあるのかしら。
5月22日 読売歌壇より
●この瞬間を生きていますといふやうに水しぶき上げ遡上の稚鮎
選者の小池光さんも書いていますが、なんといっても躍動感が素晴らしい。将来のことを心配しないと生きていけないのはつまらないことだと思う。
●ぼた餅はつぶつぶ残る半殺し春の彼岸の故郷は遠い
あのつぶつぶを「半殺し」と表現するのにはやられました。
●さざなみのやうにめくればこの本のわれはただひとりの航海者
読書の楽しみここにあり。ネットではこういう感じが味わえない。こういう味わいから順番に非合理的だと取り除かれる世の中。
●点さねばともらぬ独り暮らしの灯夜更けの部屋に漸くともる
一人暮らしの哀愁。こんな夜更けまで何してたの?って言ってくれる人のいない自由と不自由。
5月22日 読売俳壇より
●生類は憐れむべしと囀れり
こういう弱者の声を跳ね退けつづけて金持ちだけが金持ちになるスパイラルを生んできた情けない国に住んでいます。
●駅と駅つなぐ二キロの桜かな
一駅分歩くくらいたいしたことじゃないと思わせてくれたりもする桜かな。
●豆ごはんいつかあなたも好きになる
こういう感情を微笑ましく見つめられるようになっただけでも、自分は父になってよかったなと思う。
●薫風の「お先にどうぞ」「ありがとう」
風の下の譲り合いなんでしょうけど、風そのものが譲り合っているように思えて面白い。
5月22日 毎日歌壇より
●式前にトイレに十回行きました一年生を初めて持った日
先生も一年生なんですね。頻尿の私には共感しかありません。
●通帳もアプリになって十二単の如く重くなりゆくスマホ
これ、ほんとにこれ。物理的にモノがなくなっても結局あの憎らしい「容量」の問題が出てくる。最近私はデータの容量を軽くするためにモノを持つほうが実はエコなんじゃないかという気がしています。データ容量は逼迫するのも嫌だし余裕持たせるのも勿体無い気がするし。
●大切な何かを知っているように沈黙守るすずらんの群れ
何か懺悔してしまいそうになりますね。
●やばいとか生き様とかは言わないでゆかしい日本語話したいのだ
さっきの容量の話とも繋がりそうですが、少ない語彙で話していると脳の容量が少なくなってしまう気がする。こっちは容量が決まっているんじゃなくて、自分次第で容量を多くも少なくもできるから多いに越したのとはない。
5月22日 毎日俳壇より
●薫風やバイト募集の幟立ち
どこもかしこも人手不足。人手不足のうえに新人に厳しかったりするからバカじゃないかと思いますね。何様やねんという話で。そういう失敗を何回か潜り抜けてようやく「わかって」くるんでしょうね。いつわかってくれるんでしょう。この幟を立ててるところはわかってくれたのかもしれない。
●挨拶に背で応へて耕せる
振り向く暇もないし、声の主はわかるから別に振り向くほどでもないという信頼感も感じます。田舎の微笑ましい光景です。
●風光る藤井聡太よ大谷よ
別にええんやけど五七五にまとめたいがために片方は氏名、片方は苗字になってるのは気持ち悪い。ただ、若い二人の活躍と風光るがマッチしてる。
●病院の窓掠めたる初つばめ
つばめが疾風の如く翔んでいく姿を見る眼差しの悲しさ、諦念。こういうのにぐっとくる年頃です。
5月25日 産経歌壇より
●WBCにわかファンなる八十のわが声援にテレビどよめく
この厚かましさならあと百年は生きられそうですね。
●寝室は別にしたけどつい覗く足はつらぬかよく寝てるかと
親の子への眼差しはいつもあたたかい。と思うんですが、家庭の事情は家庭それぞれ。そうじゃない家庭もある。と知って余計にかけがえのない親の子への眼差しに泣けてくる。
5月25日 産経俳壇より
●病院の選挙ポスター朧なる
投票に行けずに夜を迎えてしまったんでしょうか。誰が当選したところで先行きは朧という諦めにも思えるし、元気ならちゃんと投票に行けよという叱咤ともとれる。
●戦なき空を目指して鳥帰る
戦があるかないか関係なく鳥はいつもの地に帰るだろう。そのいつもの地の戦が早く終わりますように。切実なる反戦句なのだ。
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