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10月7日週 新聞各紙俳壇歌壇チェック

 俳句も短歌もたぶん小説も触れていないと作れないものだと思う。少なくとも私はそうであるからとにかく触れておかないとどうしようもない。時間がないといってそれらに触れる時間を削るのは本末転倒なのであるが割と転び倒してしまいがちになる。

 新聞各紙の俳壇歌壇チェックを再開したことで俳句も短歌も出てきやすくなった気がする。

☆10月7日の読売俳壇

●今年また無言館へと終戦日
終戦日のように特別な思いで迎えなければならない日が年に何日かあります。

●秋の風佳人と巡り合ふごとく
今年はドラマティックな出会いでしたが本当は普通に会いたい。

●宮崎によき焼酎や牧水忌
焼酎が美味いらしいですね。関わってる番組の宮崎ツアーが来月あります。私はお留守番。

●桃供ふ永久に幼き妹に
わずか10文字に泣いてしまいました。

☆10月7日の読売歌壇

●活き造りにされし魚の身になりておもえば人はむごきことせり

活き造りではないですが、私は鰯の腸を取り除いてそこに明太子を入れて焼くやつ、あれは鬼畜の所業やと思います。

●花火から月とうさぎに変わりおり友のネイルで季節を知れり

舞妓さんみたいなお友達。今頃コンビニのお弁当じゃなく秋刀魚や栗やさつまいもを食べていてほしい。

●音楽があれば無敵と思ってたタワーレコード黄色のふくろ

新譜を買って帰ってCDデッキに入れるまでのドキドキを失ってまで私たちは無料配信で音楽を聴くべきだったのだろうか。

●目覚めなき妻に寄り添いキッスする妻八十八吾は九十五

目覚めているうちはキスなんて絶対にさせてくれなかったのかもしれないと思うと途端に景色が変わってくる。

☆10月7日の毎日俳壇

●空蝉のかわききったる重さかな

いや、軽いやろ!と思いますけど、重たさを感じる何かがあったのでしょう。

●雲梯に子供六人秋高し

令和の秋にこんな風景なかなか見られません。残念です。令和のせいなのか、京都のせいなのか、わかりませんが。

●きつぱりと水を弾いて朝の茄子

きつぱりとがいいですね。毅然とした態度がすがすがしくて爽やかです。友達にはなれなさそうです。

●新米や母に習ひし水加減

こうやってオフクロの味は継承されていく。

☆10月7日の毎日歌壇

●まあいいか、たった一言呟けば救われるはず君も私も

根に持ちまくる私には無理だ。根に持つことが生きる原動力になっています。

●ぐずる子の手を引き書店の香を嗅げば物語への無数の扉

ぐずる子を書店に連れていくのがいいじゃないですか。書店減ってるらしいけど、やっぱり近所に欲しいよな。

●ジオラマを覗くみたいにはじめての手作り弁当きみは見つめる

この歌は違うと思いますけど、昔、妻がダジャレ弁当作ってくれて今でいう「バズった」ことがあるんですけど、職場で私のお弁当を勝手に覗きこんでその日のダジャレの出来を批評する子がいて、すこぶる気分が悪かったことをいまだに根に持ってます。生きる原動力。

●パーソナルスペースだろうかさっきまで尻尾振ってた犬が吠え出す

犬だって嫌ですよ。

☆10月10日の産経俳壇

●胃袋を蹴散らすやうな唐辛子

それでも大量に入れてしまう。

●グリ下に寄せ合ふ若き肩白露

好んでそうしているのか、そうせざるを得ないのか、そうせざるを得ないからこそ、されど好んでそうしているしかないのか。

☆10月10日の産経歌壇

●万智さんの歌集は宮崎くり返し読みながら食むマンゴープリン

宮崎ってどうしてこんな魅力的に映るんでしょうね。番組のツアーの締め切りがもうすぐです。

●断捨離の箪笥に手漉き和紙ありて折り目と皺に母の手偲ぶ

偲んだからにはもちろん捨ててないよな?

☆10月12日の日経俳壇

●前を向く物言ひ恐るな敗戦日

逃げずに直視せねば。

●秋風の橋を信用しています

歩道橋すら怖い高所恐怖症なので私もこういう気持ちになる。信用していますと言うということは信用していないということなのだ。

☆10月12日の日経歌壇

●検診の結果まあまあ帰り道つばめグリルでワインを二杯

このあと「もう一杯だけ」を繰り返しボトルを二本ほど空ける。

●源氏講座終へて出づれば雨の音しばし都の音としてきく

映画『羅生門』の冒頭は雨でしたっけ?違いましたっけ?平安の都にも同じ雨が降っていました。

☆10月13日の朝日俳壇

●目覚むれば終着駅の夜寒かな

終電を寝過ごして野洲駅に着いたときの絶望。

●残業や星に詳しき先輩と

この句は違うと思いますが、聞かれてもないのに星の蘊蓄垂れてくる先輩との残業とか終電寝過ごしたときの野洲駅以上の絶望で絶対私なら根に持つと思う。

●思ふ子を明かし合ひたる花野かな

こういうかわいらしい句がいちばんいい。

●ほんたうにちいさい秋となりにけり

これは昨今の終わらぬ猛暑を見事に表現してますよね。好きです。

☆10月13日の朝日歌壇

●入院の妻に替わりて我が家の百年糠床初めて捏ねたり

私の予想ではたぶんこの人、妻が退院するまでに糠床ダメにするよ。

●日本好きが抹茶と緑茶の説明す少し違うがうなずいてあげる

fromオランダ在住の日本人の方と思われる。ちゃんと指摘してあげないとこの人のためにも日本のためにもならない。本当の優しさとは何だろう。ただ、同じ立場なら私だってそうすると思う。

●この世にはどこにもゐないほんたうの私を全部さらけ出せる人

でも、意外と短歌ってそれができるような気もする。

●次々と教室に来たる学生の髪色変わり新学期始まる

いまどきの高校はこんな感じですか。野球部は丸刈りだった私の高校時代、むろん髪染めなんかも禁止されていたはず。隔世の感あると思いつつ、うちとこが厳しかっただけかもしれないとも思う。


というわけで、今回も無事チェックできました。来週もまたちゃんと続けられるだろうか。

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