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転じすぎちゃった問題

 今日の京都新聞1面コラム『凡語』は「ビンタ」について。広辞苑によると、ビンタは鬢・・頭の左右側面の髪のところのことで、それが転じて頬を手のひらで打つことを指すようになったそうです。

 転じすぎやろ!!!

 虎がバターになるようなもんですかね。昔ウッチャンナンチャンがラジオ番組か何かでいろんなものを転じさせてたような記憶がありますがこの記憶も私が何かを転じさせてしまっているのかもしれません。

 ビンタといえばウィル・スミス。『凡語』はウィル・スミスの一件を語りたいがためにまず冒頭にビンタに関する蘊蓄を入れてきたわけです。これもなかなかの転じ方といえる。

 「米アカデミー賞の式典で、妻の髪型をからかうような発言をした賞の贈呈者を平手打ちした」『凡語』より

 この行為については賛否両論あり、職場で話題になったりすると、これまたもっともらしい理屈を披露したがるおじさんがいたりして実に面倒くさいので、極力この話題には触れないようにしています。SNSで話題になっている出来事についてリアルの場で再度話題にすることに最近はなんというか、気恥ずかしさやめんどくささ、わざとらしさがあって何かやりにくい。

 総じて日本国内では妻を守るための行為としてウィル・スミスさんの平手打ちを肯定する意見が多く、海外では逆にウィル・スミスあほかっていう声が多いらしいのですが、知人で露骨に「ウィル・スミスが本当に最悪だ」という人がいまして、ものすごく怒ってる。その怒り具合ときたら、もうこの人がウィル・スミスに平手打ちされたんじゃないかというくらいの嫌悪感を体全体で発しておられるわけです。

 これはどういうわけなのか。もちろん暴力が肯定されることなどあってはならないという気持ちがあるのでしょうが、もう一つ、おそらくは「ただの暴力沙汰なのに思いのほか日本ではウィル・スミスを擁護する声が多い」ということにもおそらく腹を立てているのだろうな〜なんてことを思っていたら、その方が「だいたいウィル・スミスが主演男優賞なんて絶対におかしい。あんなん全然よくなかったのに」と怒っておられるものですから、これはどうも雲行きがおかしいぞ。と思ったわけです。

 ひょっとしてこの人は、自分の意にそぐわずどういうわけか主演男優賞を取ってしまった男がそのうえ事情はどうあれ平手打ちなんぞしたものだから怒りが増幅しているのではないか。そうだとすると、怒りの正当性が俄然、下がってしまいます。平手打ちという行為そのものになんら関係のない「主演男優賞受賞」という事実を踏まえたうえでの怒りなのだとしたら、いや、実際はわかりませんが、そうだとしたら。例えばもしウィル・スミスが主演男優賞を受賞していなければそこまで怒っていなかったのだとすれば、私はそのような「転じ方」もあってはならないものだと思うのですがどんなもんでしょう。

#令和4年4月5日  #コラム #エッセイ #日記
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