読書の記録『病魔という悪の物語 チフスのメアリー』金森修著
その女性は料理が得意な家政婦で、
愛嬌もあり、
雇われれば必ず雇い主に愛されました。
しかし、
彼女を家政婦として雇ったお家からは
チフスの患者が続出しました。
彼女はいたって健康であり、
体のどこにも異常はないのに!
健康体なのに、
ウイルスを体内に保菌して、
周囲にばら撒き感染させるため、
彼女は長期にわたり、
監獄のような島に
隔離されることになりました。
彼女は後年、チフスのメアリーとして
名前が知られるようになります。
チフスのメアリーは、
オンリーワンで、
ごくごく特異な体質の女性なのだと
思っていたのですが、
どうやらチフスのメアリーのように、
健康体であるにもかかわらず、
保菌していて、知らずうちに
ウイルスを撒き散らす人間が、
チフスのメアリー以外にも、
少なからず存在していたようです。
しかし、
監獄のような島に隔離されたのは、
チフスのメアリーだけ。
(「だけ」ではないですが、
ほぼ一生を棒に振ったのは
メアリーだけのようです)
そうなると、
どうしてメアリーだけが、
不当に不自由な生活を
強いられるのだろうか、となるわけで。
公共の福祉の前には、
一個人の自由が制約され得ることは
わかりますが、
しかし、それは、
やはり平等でなければなりません。
不当に不幸を余儀なくされ、
果ては死後も、悪魔の女として、
語り継がれることになった
善良な家政婦の悲運な物語について、
その物語の発端から、
公衆衛生との関わり、裁判の行方、
そして、やがて「チフスのメアリー」として
象徴化するまでのことが、
細かに書かれておりました。
感染症がもたらす弊害、副作用、
差別、諸々の社会問題について、
誰に言われずとも、
強制的に考えさせられているいま、
読んでよかったです。
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