『戦国ベンチャーズ』でルーティンのメリデメを考察してみた
昨日の投稿では、ルーティン化には3つの大きなメリットがあるものの、過度な自動化によって「変化」や「新しい決断」の余地を奪っていく負の側面もある、という話をしました。
書き終わってみて、これって最近読んだ北野唯我さんの『戦国ベンチャーズ』に書かれていたこととそっくりだと気づいたので、同書をベースにもう少し考えてみます。
『戦国ベンチャーズ』
『転職の思考法』『天才を殺す凡人』『内定者への手紙』など、多くのベストセラーを書かれている、北野唯我さんの最新刊。歴史上の名将やエピソードから抽出したエッセンスをもとに、現代のビジネスや個人の生き方に通じる「強みの活かし方」を理論化した、これまでにない「歴史✕ビジネス」本です。
ルーティン構築に長けた人の強みとは
『戦国ベンチャーズ』では、事業を作るために必要な強みは、「創造性系」「再現性系」「共感性系」に大別されると書かれています。それぞれの定義は以下のとおり。
■ 創造性系の強み = 未来を強く思考し、描く力
■ 再現性系の強み = 未来を具現化し、システムを構築する力
■ 共感性系の強み = 多くの人とコミュニケーションを取り、人の自発性を生み出し未来を作る力
これを見て、日々の生活の中に強固なルーティンを作りあげる力って、再現性系の強みそのものだなと感じました。万里の長城が膨大な時間と労力をかけて作られたように、自分が実現したい未来に向けて、ひとつひとつ目の前に石を積んでいける人ってことですね。
本書でも、再現性系の強みは事業の長期的な発展に不可欠だと書かれていて、徳川家康や武田信玄の偉業に触れながら、習慣のもたらす圧倒的なパワーが語られています。
再現性系の強みの落とし穴
一方で、注意点として、同じことを精度高く繰り返す力である再現性の強みには自己増殖性があること、それによってガン細胞のように組織内に広がって創造性を奪っていくこと、が述べられています。
ベンチャー企業のように創造性あふれた組織であっても、成果をあげ続けようとする中で、だんだんと再現性系の強みを持つ人たちの力が強まる。やがて組織全体が現状維持バイアスに陥って、変化を嫌うようになり、衰退に向かう、という流れです。
いわゆる大企業病、あるいはイノベーションのジレンマなんかも、この観点から説明することができますね。そして、昨日書いた「ルーティンが目的化してしまっている状態」も、まさにこれだと思うのです。
『戦国ベンチャーズ』は、主に組織において、異なる強みを持った個人をどう活かすかという視点ですが、僕たちひとりひとりの中にも、創造性系、再現性系、共感性系の強みは存在するのだと思います。
そして、よほど意識していないと、僕らの日常は自らが持つ再現性系の強みの増殖によって支配され、変化を嫌うようになり、コンフォートゾーンに留まりやすくなる、ということでしょう。
改めて「ルーティーンを崩す」ことの意味
本書では、組織の中に創造性を保存していくための方法として、「小さな破壊」が生まれる仕組みを持っておくことを説いています。
これを読んで、「あえてルーティンを崩してみる」ことは、まさに個人の中で創造性を保存し続けるための工夫なのだと理解しました。
北野さんは、別著『内定者への手紙』の中で、自分の中に「経営者」と「実行者」を持つべしと言っています。ご自身も、夜は経営者の視点で、明日の自分が何をすべきか、どうやるべきかをじっくり考え、朝は生産性の高い実行者として、決めたことをひたすら実行していくそうです。
もちろん、朝やることの中にはルーティンも含まれると思いますが、前夜のうちに、ルーティン以外で重要なことについて考えておくことで、再現性系の強みの無限増殖を防いで、自分の中の創造性をキープしているのではないでしょうか。
そういう意味では、積み上げや習慣化が得意な人ほど、「ルーティン以外の余白を持っておくこと」や「あえてルーティンを崩すこと」の意義は大きいのかもしれません。
最後に
せっかく身についた良い習慣をやめる必要はありませんが、思考停止してルーティンを繰り返すのではなく、より良いやり方を模索したり、ルーティン以外の時間を普段やらないことに使ってみたりすることには、大きなメリットがありそうです。
自分の中にある「再現性」と「創造性」。2つの強みをフル活用したいものですね。
昨日の記事と同じく、習慣化が苦手な僕が言っても説得力がまるでないので、ぜひコメント欄に皆様の感想やご意見をいただけると嬉しいです。
ではまた!