温泉に行く感覚で髪を切りに行く

3月初旬、2カ月ぶりに髪を切りに行った。
今回行った美容院は、初めて行くところだったので、若干緊張した。ただ、担当してくれた美容師さんが気さくに話しかけてくれたので、徐々に緊張が解けて、和やかな雰囲気のなか過ごすことができた。

僕は、美容師さんがハサミでシャキシャキと髪をカットする音が好きだ。一定のリズムで小気味よく髪を切る音が、落ち着いた店内BGMと相まって、ヒーリングミュージックのようにとても心地いい。

本当は目をつぶって、髪を切る音を楽しみたい。
だけど、目をつぶっていると寝ているように見えるので、美容師さんが気を遣って話しかけてこなくなる。
美容師さんのなかには、お客さんとのコミュニケーションが、髪を切る行為とセットになっており、会話をしながらカットすることが自然なこととして体に染み込んでいる人がいるかもしれない。

もしここで、髪を切る音を聴きたいという私欲を優先させて、会話を拒否してしまうと、どうなるだろうか?

会話を拒否することは、無言でカットだけ行うという美容師さんにとって自然ではない状況を生み出し、いつものリズムやルーティンを乱し、美容師さんの本来の力を引き出せない恐れがある。
たとえるなら、バンドのギターボーカルの人が、ギターを弾きながらではないと歌を上手く歌えないみたいな感じである。

また、もし美容師さんがお客さんと楽しい会話ができないという悩みを抱えていたとしよう。その場合、髪を切る音を楽しむために、目をつぶり、会話を拒否することになれば、楽しい会話ができないという美容師さんの悩みはより根深いものになってしまうだろう。

だから僕はそれらの2つのリスクを避けるため、美容師さんと適度に会話しつつ、カットの音を楽しむようにしている。僕は適度にカットの音を楽しむことができるし、会話をすることで美容師さんの本来の能力を引き出し、理想の髪型に近づけることができる。
また美容師さんの自信を奪うこともないため、会話をしながらカット音を楽しむという僕の考えた譲歩案はwinwinの関係を成り立たせることができるのである。

また、もう一つ好きなことがあって、それはカット後にオプションでやってくれる炭酸シャンプー&頭皮マッサージである。

炭酸シャンプーの爽快感に加えて、頭皮マッサージを組み合わされてしまったら、気持ちよすぎて、このまま一生髪を洗いつづけて欲しいという気持ちになってしまう。(それは美容師さんがしんどいけれど。)

シャンプーをするとき、フッと一息吐けば、飛んでいきそうな薄い紙を顔に置かれる。
すると、自分が目を閉じているのかどうか分からない感覚になり、だんだんうとうとしてくる。
うとうとの間、ネガティブなことがフワフワと頭に浮かんでくる。
でも、風船みたいに浮かんでくるネガティブな考えは、炭酸シャンプーと頭皮マッサージの心地よい刺激によって、すぐにパチンと割れて消えていく。だから何も考えずにボーとしながら、無心の状態で最高のうとうとが堪能できる。
これが炭酸シャンプー&頭皮マッサージの魅力であり、好きなところである。

髪をカットする音、頭をマッサージしてもらうこと、美容師さんとの会話を楽しむこと。
心を落ち着かせることができ、頭をすっきりさせてくれる場所。
僕にとって、美容室に行くことは、温泉に行くことと一緒のことだと思っている。

美容師さんとの会話の中で聞いた話だが、美容師さんは不定休で1日の拘束時間も比較的に長い。1日何人ものお客さんのカットをするので、腱鞘炎になったり、腰を痛める人も多いらしい。たった数秒の会話の中で、お客さんの要望を汲み取る必要もある。大変なお仕事だ。

だから美容師さんへの敬意と感謝を込めて、僕はいつもカットが終わった後の「ありがとうございました!」を丁寧に伝えるように心がかけている。

改めて、美容師さん、本当にいつもありがとうございます!


ただ、美容師さんごめんなさい。
「この後予定があるので、ワックスを使ったスタイリングお願いします」と毎回言うけど、本当は予定なんかありません。
あと、美容師さんが心を込めてセットしてくれた髪型は、いつも帰り道の風で吹き飛ばされています。

今度からは予定をちゃんと入れて、バスで家まで帰るので、お許しください。

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