「MEXCBT(メクビット)」と「学習e-ポータル」についてめちゃくちゃ噛み砕いて説明してみた。
近年、「教育のDX化」という言葉をよく耳にしますが、学校現場がDX化するにはまだまだ長い道のりが待っているといえるでしょう。
DX化には3つの段階があると言われ、2021年現在では第1段階の1人1台の端末が配備されて、ツールがデジタル化した段階(デジタイゼーション)であるといえるでしょう。
現在、文科省は次の段階である教育データの活用に進もうと環境整備をしています(デジタライゼーション)。
<DX化の3つの段階>
段階1:デジタイゼーション(ツールのデジタル化する)
段階2:デジタライゼーション(デジタルの活用する)
段階3:デジタルトランスフォーメーション[DX](制度や仕組みなどに変更が発生する)
この教育データ(特に学習データ)の活用を進めていくにあたり文科省が現在進めているのが、デジタルを活用したMEXCBT(メクビット)という学習システムの機能拡張です。デジタル機器を使って(インターネットに接続して)、児童・生徒が学校や自宅で学習やアセスメント(測定)を行うことができます。
すでに一部の学校でMEXCBTの活用が始まっており、2021年11月下旬から全国の小・中学校がこのシステムを導入できるようになります。
先日、このMEXCBTに関する説明会が開催されましたが、大変時間が長く専門的な言葉や内容も多かったので、今回は精一杯噛み砕いて自分なりの言葉でまとめてみることにしました。
学びの保障オンライン学習システム(MEXCBT:メクビット) の活用に関する説明会
https://youtu.be/T-kKvfdF6vQ
1.MEXCBT(メクビット)と学習e-ポータルとは何か?
MEXCBT(メクビット)という名前は、文科省の英語表記MEXTとCBT(Computer Based Testing)を掛け合わせて作成した名称になります。名前の通り、MEXCBTとは、文科省が開発したコンピュータベースのテストシステム=CBTということになります。※開発といっても、実際は事業者団体(コンソーシアム)を組織し、その事業者団体が開発を請け負っています。
インターネット上にあるMEXCBTというシステムの中に、文科省や一部の自治体が用意した問題が格納されており、学校でも自宅でも問題に取り組むことができます。
ただ、問題に取り組むことができてもテスト結果やその学習履歴を閲覧する(振り返る)機能はMEXCBTには備わっていません。学習結果はMEXCBTの中に蓄積されているのですが、それを人間の目に分かりやすく表示する機能がないということです。そこで登場するのが、学習e-ポータルです。
学習e-ポータルは、MEXCBTから学習データを受け取り、成績データなどを綺麗に画面上に表示することができ、初めて人にとって見やすい形でデータが表現されます。それだけの機能であればMEXCBTでやってしまえば良いのにと思いますが、実は、学習e-ポータルはもっと大きな役割を担っているのです。
例えば、今後活用が進んで言われていくと呼ばれるデジタル教科書やデジタル教材の連携にも一役買ってくるのです。
授業のある場面を一例としてあげてみました。このような場面を想像していただけると学習e-ポータルの重要性を理解していただけると思います。
1.授業が始まり、先生が国語のデジタル教科書(A社製)を開くことを児童に指示する。
→児童は、学習e-ポータルにログインし、その中にある国語のデジタル教科書を参照します。
2.国語の授業を進めていくと、先日社会で取り上げた内容が含まれていたので、先生が児童に社会のデジタル教科書(B社製)を開くことを指示します。
→児童は、学習e-ポータルのホーム画面に戻って社会のデジタル教科書を参照します。
3.最後に授業で学んだ漢字のテストをすることになりました。
→児童は、学習e-ポータルのホーム画面に戻ってMEXCBTシステムを選択し、漢字テストに取り組みました。
児童は、漢字テストの結果を学習e-ポータルの成績閲覧画面で確認しました。
先生も、どの児童がどのようなテスト結果だったのかを学習e-ポータルで確認していきます。
上記で太字にした箇所は、別の会社がそれぞれに制作した学習コンテンツになります。このことから分かるように、学習e-ポータルは、様々な学習システムのプラットフォームのような役割を果たしていきます。MEXCBTが成績データまでを表示せず、学習e-ポータルに任せているのは、今後各校がMEXCBT以外の学習コンテンツを導入し、その学習コンテンツの成績表もe-ポータルで閲覧できた方が児童・生徒にとって使い勝手の良いものになると踏んでいるからなのではないかと筆者は推測しています。
2.文科省の狙いは標準規格を作ること
ここまで書いてきた内容からも分かるように、文科省が目指している姿はさまざまなシステムや学習ツールが連携された状態です。そして、学校や児童・生徒の状況に合わせて自由自在にシステムや学習ツールが組み合わされたとしても利便性が低下しない状況を作りだすことにあります。
つまり、「標準規格をつくって、その標準規格の上で企業に競争してもらおう」という狙いがある訳です。
既に学習e-ポータルでもその競争原理が働いています。
2021年11月1日に行われた説明会では、標準規格に則った学習e-ポータルを用意している「内田洋行」「日本電気株式会社」「NTTコミュニケーションズ」「スタディプラス」の4社が自社の学習e-ポータルについて説明会を行っています。
これから申し込みをする学校はこの4社の学習e-ポータルから1つを選択することになりますが、各社MEXCBTとの連携機能だけなく、有償・無償さまざまな機能を備えています。
現時点では、一度使い始めてしまうと企業間のデータ移行がスムーズに行われるわけではないそうなので、申し込みの際は「どのような機能を使って、どのような教育をしたいのか」という方向性を校内で定めてから申し込みをしないと実現したい教育が当分の間できないという事態になってしまいます。
標準化すると語っているのに、データ移行が難しいというのは望ましくない状況ですし、このことは、解消されるべき問題の一つです。とはいえ、すでに課題としては理解されているようですので今後の解消が待たれるところです。
各社の機能の比較は、下記の記事がおすすめです。
教育とICT online(日経BP)
どこまでが無料?「学習eポータル」対応サービスを比較
https://project.nikkeibp.co.jp/pc/atcl/19/06/21/00003/111100298/?P=1
3.最大の課題は、データをどのように活用するかを考えること
ここまで教育データが活用されるための環境整備について記載してきましたが、実際にどのようにデータを活用したら良いかということについては、議論があまり進んでいない状況です。
「どのように活用していくとどのような良いことが起こるのか」という検証は、現場の先生の工夫から生まれてくるのだと思います。だからこそ、全国的にMEXCBTと学習e-ポータルが使用できるようになったのでしょう。
筆者は、「どのようにデータを活用したら良いかはやってみなければわからないが、学習e-ポータルを選ぶ時は慎重に」という矛盾したことを言っています。
今の状況だと「ある程度の仮説を立て、まずはやってみる」か「他の人がやった事例を見た後で、慎重に選択する」かのどちらかになるかと思いますが、個人的には前者の考え方の方が教育の発展は早いのではないかと考えています。
筆者は企業側に属していますが、先生方に考えることを丸投げするのではなく、ともに教育データのより良い活用方法を検討していければと思っています。
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