どうなる?教員免許更新制度! 〜検討委員会発足〜
現在、学校の先生に関する制度の見直しが様々なところで議論されています。現在、議論されている内容は大きく分けて5つになります。
①教師に求められる資質能力の再定義
②多様な専門性を有する質の高い教職員集団の在り方
③教員免許の在り方・教員免許更新制の抜本的な見直し
④教員養成大学・学部,教職大学院の機能強化・高度化
⑤教師を支える環境整備
「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について(令和3年3月12日中央教育審議会諮問 概要)より
上記の議論のうち、③教員免許の在り方・教員免許更新制度について議論する小委員会が、令和3(2021)年4月27日に発足されました。
<委員会名>
中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会
教員免許更新制小委員会
今回は、この委員会がどのようなことについて議論していくのかについてまとめてみることにしました。珍しく個人の感想についても書いています。
1.教員免許更新制度の評価(12年の軌跡)
本委員会が議論していく前提として、過去の検討会議や各所からのヒアリング結果を受けて、以下のように教員免許制度に対して、「評価」と「課題」がまとめられました。今後は、これらの課題を前提として議論が進んでいくようです。
◆ 教員免許制度の評価
創設同時の趣旨である「最新の知識・技能の修得には一定程度の効果がある」とした一方で、「費やした時間や労力に比べて効率的に成果の得られる制度になっているかという点では課題がある」とのことです。10年に一度の更新講習での効果は限定的という評価でした。
◆教員免許制度の課題について
①制度が複雑で設計に問題があるのでは?
教員免許状の更新手続のミス(いわゆる「うっかり失効」)が、教育職員という身分だけでなく、地方公務員としての身分をも失ってしまう制度に疑問が残るとのことでした。制度の複雑さも課題だとされています。
②講習に費やす教師の負担が大きい
教師の日々の業務の負担が増していく中で、講習に費やす 30 時間を確保することが難しい状況となってきており、講習の受講が多い土日や長期休業期間にも、学校行事に加え補習や部活動指導が行われたり、研修が開催されている場合もあるようです。また、費用や講習を受けるために居住地から離れた大学等での受講にも負担感があるとのことでした。
③管理職等の負担と教員確保への影響
うっかり失効されると教員確保が困難なため、管理職や教育委員会も各先生が教員免許更新を忘れないように声かけをしなければならず、この業務は当該教員意外の負担を増やす要因となっているようです。
また、臨時任用教員を確保したくても、その教員(退職教員など)が免許更新をしていなかったため、採用できないといったケースが全国でも多く出てきているとのことでした。多様な人材を採用しようとしているにもかかわらず、この制度が原因で採用できない状況があるということですね。
④講習開設者側から見た課題
子どもたちの学習に限らず、先生の講習に関しても、少人数で双方向性の講習が望ましいと分かっていながらも、講師の確保や、費用の問題で理想的で効果が高い講習を設計することが困難な場合もあるそうです。
2.教員免許更新制度の向かう先
上記した課題を元に、本委員会では下記のことに注意しながら議論を進めていくことになるようです。
1. 教師の資質能力の確保
2. 教師や管理職等の負担の軽減
3. 教師の確保を妨げないこと
のいずれもが成立する解を見出していかなければならない。
言葉で書くのは簡単ですが、これは「教員の負担を減らして、効果を最大化する」ということを言っているため、制度構築が大変難しいと感じました。しかし、「それでもやらねば」という覚悟が見えていますね。
この実現の方向性に対しても既に大まかな方針が出ているようですので、まとめていきます。
1. 教師の資質能力の確保
(1)講習内容の質向上
(2)オンライン化の促進
(3)大学と連携して短時間の研修について講習として認定することを促進
(4)免除対象者の拡大 ※勤務実績等に基づく免除要件の緩和
<留意点>
・大学等更新講習開設者の負担の増加
・免除対象とすべき勤務実績等の設定、教員間の公平性の確保
2. 教師や管理職等の負担の軽減
(1)オンライン化の促進【再掲】
(2)研修と講習の相互活用の徹底【再掲】
(3)30時間を2年間で受講する仕組みの見直し ※例えば受講期間を5年間に延長する等の柔軟化
(4)免除対象者の拡大【再掲】
<留意点>
・教師の負担の軽減は一定見込めるものの、教育委員会や管理職など
の負担の軽減は見込めないのではないか。
3. 教師の確保を妨げないこと
(1)免除対象者の拡大【再掲】
(2)臨時免許状の授与に関する運用の柔軟化
(3)現職教員の受講を妨げない範囲において、学校勤務未経験者(いわゆるペーパーティーチャー)等に対する受講機会の拡大
<留意点>
・免除対象者の拡大については、退職教員が退職した直前の勤務実績等を
確認することも考えられるものの、適切な運用を確保できるかという点に
課題があるのではないか。
・受講機会の拡大を行ったとしても、自発的に受講し、免許を更新するペーパーティーチャーが数多く出てくるかどうかについては、慎重に考える必要があるのではないか。
3.教員免許を持っているイチ社会人として思うこと
筆者は、教員養成系の大学を2008年に卒業し、小・中学社会・高校地歴の教員免許を取得していますが、そのまま企業へ就職し、既に免許は失効している状態です。
元々は教員になりたくて、教員養成課程に進んでいたわけですが、「企業で働いてみたい」という想いから教員にはならずに今の仕事を続けてきています。教員に戻らない理由の一つが、企業での仕事が充実しているというのもありますが、この複雑な教員免許制度が精神的なハードルになっていることは確かです。簡単に言えば、「どのような手続きをすれば、教員に復帰できるのか」ということわからないのです。本気になって調べれば良いのですが、そのような気が起きずにズルズルときてしまっています。
なんとなく頭の中に「こうやって手続きすれば、学校の先生に戻れるんだろうな」ということが分かっているだけでも、教員というセカンドステージを身近な検討材料とすることができるのですが、制度が複雑すぎて(というよりもどこに資料があるのかがわからないので)、検討自体が後回しになっているなと感じています。
今回の検討委員の中には、日本のTeach For Japanを創業した松田悠介さんもいらっしゃるようなので、社会人からの教員という道筋に関しても整備されていくことを期待しています。
「資料を調べずに人任せ」というかなり自分勝手で無責任な意見ですが、包み隠さず本音を言うとこのような感覚なのです。