高校の新学習指導要領スタート〜普通科の改革が進められようとしている〜
2022年度から高等学校で新しい学習指導要領が施行されます。
1人1台端末の環境整備が小学校・中学校に続き高等学校でも進められることや、「情報Ⅰ」「総合的な探究の学習」「歴史総合」「公共」などの新しい教科・科目がスタートすることに注目が集まっています。
このような環境整備やカリキュラム変更以外にも、このタイミングで高等学校教育の制度改正が進められようとしています。すでに、学校教育法施行規則、高等学校設置基準、高等学校通信教育規程等の一部改正等も行われており、2022(令和4)年4月1日から施行することが決まっています。(一部は令和6年までは移行期間)
今回は、高等学校教育のどの部分の制度改正が行われているのかについてまとめていきたいと思います。
1.4つの制度改正の概要
今回取り上げている制度改正は、「『令和の日本型学校教育」の構築を目指して(答申)」と「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ(審議まとめ)」(以下ワーキンググループ)等を踏まえて行われています。
ワーキンググループの資料において、現在の高等学校を取り巻く課題が以下のように整理されています。
上記した現状から以下の4つの改革の方向性が示されました。
2.普通科改革の概要
ここでは、4つの中から「普通科改革」に焦点を絞って概要をまとめていきたいと思います。
普通科改革に向けた論点は以下の通りです。
この論点を受けて、実施されたのが、高等教育の「普通教育を主とする学科」の種類の弾力化・大綱化です。
現在、高校の学科は、大きく分けて「普通科」と、工業や商業など専門教育を行う「専門学科」があり、1994年以降は「総合学科」も創設されています。
現在、「普通教育を主とする学科」は、「普通科」のみとされていましたが、「普通科」に加えて、「学際領域学科」「地域社会学科」「その他普通科」を加えて学校設置者が新しい学科を設置することができるようになりました。(下図参照)
この学科を設置することで、全ての高校生が共通して身に付けるべき資質・能力を土台とした上で、文系・理系の類型に捉われずに、生徒の多様な学習ニーズに対応し、生徒の特性等を踏まえた学習の機会を提供することを目指していくようです。
学科の要件は以下の通りです。
3.普通科改革のための予算(新時代に対応した高等学校改革推進事業)
新しい学科の設置も含めた普通科改革のために文部科学省は令和4年度において2億円の予算額を確保し、以下の3つの事業に取り組もうとしています。
すでに「①普通科改革支援事業」「②創造的教育方法実践プログラム」については、2022年2月2日から全国の高等学校に向けた公募を開始しています。
実は今回「普通教育を主とする学科」に新しく設置された学科は、専門学科、総合学科等とどのように違うのかということについて、議論の余地を残しているようです。
特に「専門教育を主とする学科」については、「特定の専門的な分野や職業分野に関する知識及び技能の習得を主たる目的とする」とされていて、「普通教育を主とする学科」とは違うものであるとされているものの、理数や国際関係などに関する学科については、「普通教育を主とする学科」の枠組みに統合することも検討される必要があるとワーキンググループでは語られています。
今回の事業ではこのように学科の棲み分けといった議論の余地が残っている箇所について検証する役割も担っていくのではないかと推測されます。
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