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国内への国際協力という形

今回は、これからの日本と世界との関わり方の変化について書きたいと思います。

1.国際協力のベクトルの変化

「国際協力」と聞くと社会科などの授業で習ったように、先進国が開発途上国へ支援を行っているというイメージが一般的かと思います。その構図は間違いではないですが、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の登場をきっかけに、もう1つ新たな構図が生まれつつあります。

それは、“日本国内へ向けての国際協力”です。

SDGsでは、もはや「先進国」、「開発途上国」といった括りを越えて、全世界的に取り組んでいかなければならい社会課題があるとし、それらの社会課題を解決した理想の世界の姿を17の目標で指し示しています。

今、皆さんも知っての通り、日本国内にも多くの社会課題が存在しているのです。

では、それが国際協力の新たなベクトルとどう関係あるのか??今回は「地方創生」について「外国人労働者」との関係性から書きたいと思います。

2.「国内への国際協力」という新構図

国内の社会課題の1つでもあるのが、地方の衰退化です。そこで、2014年に政府が打ち出した政策が「地方創生」です。

これまでにふるさと納税や地域おこし協力隊など、多くの地方創生に向けての取り組みが行われており、今でもさまざまな取り組みが生まれ注目を浴びています。

そもそも地方が衰退することになった大きな原因の1つは、東京への人口流出(=人材流出)です。やはり何事においても常に重要になってくるのは「人材」なのだと思います。

そこで今、日本の地方で注目される人材が「外国人」の方々なのですが、これは2019年4月に法改正された入管法のニュースなどで一度は耳にしているのではないでしょうか。今や地方の産業を支えている人材の多くは、東南アジアをはじめとした開発途上国と呼ばれている国々からの人たちなのです。

「えっ?じゃあ地方は国際化が進んでいるの?」と思う方もいるかと思うのですが、少し実状は異なっていると思います。私自身も実際に地方で働いている人やお住まいの方に話を聞いたことがあるのですが、もはや人手不足に対して“どうしようもない状況”なので、外国の人たちを受け入れ、共に働いているとの声を多く耳にします。

残念ながら、あまり前向きな意見ではないですね。

しかしながら、こうした状況を好機と捉え国際化へ大きく舵をとっても良いと思うのですが、そこで大きく立ちはだかるのが「言葉」「文化」の壁なのでしょう。

日本はただでさえ世界一英会話学校が多いと言われるくらい外国語でのコミュニケーションが苦手なのに、高齢化の進んでいる地方には外国語でコミュニケーションをとれる人がほとんどいないです。しかも異文化理解などは、日本人だけのコミュニティとして成り立ってきた地方は、都市部と比べてより難しい面があるかと思います。

実際に地方の現場はどうなっているかというと、外国の人たちがそうした環境へ適応し、先に来日している同じ国出身の先輩から仕事や生活ルールを教わり覚えて、後輩が来たらそれらを受け継ぐというサイクルを生み出しているのです。なので、日本人と同じ空間で働いていたりしても取りまとめ役以外の人とはまったくコミュニケーションを取らない状況だそうです。

例えるなら、各国からの留学生が多い海外の語学スクールで見受けられる、同じ母国語同士の人がコミュニティを形成してしまっている状況ですね。←分かりづらいかも(笑)

こうした状況を打破するのに重要になってくるが、そうした外国人たちと日本人をつなぐ人材だと思います。この人材の詳細ついては次の項目で書きたいと思います。

どちらにしろ、そうした東南アジアをはじめとした国々からの外国の人たちは、それぞれの母国で学び、技能を身につけて日本の社会課題の解決する人材として、これから日本に来るのです。ゆえに、今や国際協力といっても「先進国→開発途上国」というベクトルでなく「開発途上国→先進国」というベクトルも生まれているのです。またそうした地方の現場で外国人と日本人をつないだり国際化への開発のアドバイスをしたりするのが「国内への国際協力」になるのではないでしょうか。

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この図で表したのですが、日本の国際協力関連の事柄(事業、情報、イベントなど)も東京一極集中しているなと感じます。

国際協力を行う機関、企業、団体も集中していますし、その結果からおのずと人材や情報も集中してしまっています。こうした状況も改善すべきですし、もし「国内への国際協力」が広がりを見せていけば、従来の「海外への国際協力」に携わっている人材も流動することになり、そこで情報なども一緒に流動すればより良い相乗効果が見いだせるのではないでしょうか。

※余談ですが、東南アジアをはじめ中東、アフリカなどからの留学生と話す機会もあるのですが、彼らの高い学習意欲やその積極性や行動力にはいつも驚かされ、自分も頑張らなくてはと触発されます。これからますます人口減少が進む日本においては、求められる人材もボーダレス化が進んでいくだろうし、チコちゃんに叱られるわけでないですが「ボッーと生きている」と怖いですね。人材に関しては別の視点ですが下記の記事も大変共感する部分があるので、参考までに。

※ただ、日本社会においてはさまざまな理由で一度、道を外れた人を受け入れる寛容性なども課題となっていることから考えると「人材」、「キャリア」という問題は深く難しいなと日々感じています。

3.地方創生の担い手としての「青年海外協力隊」

上記で外国人と日本人をつなぐ人材の重要性について触れましたが、それを担う人材として注目したいのが「青年海外協力隊(以下、協力隊)・経験者」です。

協力隊はまさに開発途上国の現場において、原則2年間という期間の中でその国・地域の人々と生活を共にし、そこから地域にある社会課題を見出して限られたリソースの中で改善策を考え、現地のパートナーと一緒に実行していきます。

この一連の活動は、改めて文章にしてみると思うのですが、地方創生の取り組みとあまり違いがないのです。つまり、協力隊経験者は地方創生の取り組みに関する要点を、既に開発途上国で疑似経験しているのです。

さらに、協力隊員が活動する開発途上国の地においては、もちろん日本人がマイノリティであり、人それぞれなのですが活動当初は言語も拙く不安感もあったと思います。そうした経験から、日本の地方でマイノリティである外国人の人たちの不安な気持ちにも共感できる人材でもあるのです。

実際に2年間の派遣期間を終えて帰国後に、協力隊の経験を活かして地方創生に取り組んでいる経験者も年々増えてきていると感じています。その形もさまざまで地域おこし協力隊から地方行政、民間企業、社会起業家、NGO職員、農家などなど、それぞれの経験やアイデアを活かせる形態を選択しています。

※私自身が協力隊経験者なので手前みその話と感じるかもしれませんが、これからの地方創生を担っていく際に、海外のコミュニティでの活動経験や海外とのつながりを意識した視点を培っていく部分では、一度、青年海外協力隊として開発途上国の現場で活動するのも大切なのではと思います。

これからも「国内への国際協力」の広がりや取り組みに注目していきたいです。


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