『GOD OF WAR』(2018)のプロット分析ー物語解体
目的:方法論の説明
読み終わる時間:約9分
前回はこちら
はじめに
皆さん、お久しぶりです!
前回、あんなに大胆に導入を書いてしまった手前、これはやんなきゃいけないぞ~、と思いながら北欧神話を読んでいます。
今はですね、オーディンさんがヨトゥンヘイムの「ミーミルの泉」に出かけていきました!w
今回は、『GOW』(2018)の物語構造をどう調べるか、について。
(次回は、調査して分かったプロットの構造とそのキーワードの発見。キーワードが物語の中でどのような役割、意義を果たしているか、について書きたいです・・・・・・
要するに今回は手法の説明。次回、いよいよ実践という訳です。)
本記事の目的
前回も書きましたが、私がこの一連の記事で為そうとしていること、
それは、『GOW』(2018)の神話を現代化する手法を解明することです。
この試みが何を要求するかと言いますと、神話的要素と現代的要素をそれぞれ分析すること。
神話の分析は、尾崎和彦などによる北欧神話分析に依るとして、現代的要素をどこから見つけて、どう分析するのか・・・・・・??
これが悩ましい。
さて、前回も述べましたが、神話をモチーフにする以上、ただの神話の反復ではいけない。現代的な要素もあるはずです。
であれば、作品のテーマが現代的であるに違いない。我々の身に切迫する問題性を孕んでいるはずだ!
まずはそう仮定して、この作品の主題を解明していきましょう。
しかし、闇雲に解明するのではない。
プロットという観点から、すなわちプロットにおける構造分析を通してテーマを明らかにしたい。
それを踏まえて、本記事では『GOW』(2018)のテーマの解明・・・・・・
に行く前に、どうプロットを分析するか? その方法を提示します。
なんて遠い回り道・・・・・・。
なので『GOW』(2018)と一見関係なさそうなことを長々と書きます。
お覚悟を!
プロットとは何か?
さて、そもそもプロットとは何でしょうか?
私は、物語る順番だと考えています。
ストーリー=お話そのもの、実体験であるなら、
プロット=語り方、語るべき順番である。
お話の内容に重点を置くのがストーリーならば、情報の出し方に重点を置くのがプロットではないでしょうか。
じゃあ、なんで語る順番(プロット)を気にするのか?
答えは様々ありますが、観客の注意を引き付けるためだと思います。
で、観客を掴んで離さないプロット上の工夫は様々あると思いますが、今回は「大テーマ」と「謎」について考えます。
(これ、分けて書きましたけど、別に分かれている場合もあるし、融合している場合もあると思います。ただ説明を簡単にするために分けて書いただけです(´・ω・))
「大テーマ」と「謎」について考える際、今回参考にするのは以下の三点。
・『ドラマを解剖する』「第五章 ドラマの構造」マーティン・エリスン、山内登美雄訳、1978、紀伊国屋書店
・『小説の技巧』デイヴィッド・ロッジ、柴田元幸訳、1997、白水社
・『プロだけが知っている小説の書き方』森沢明夫、2022、飛鳥新社
本当にこれらが必要なのか? 適切な本の選び方なのか?
「もっとゲームに主眼を置いた本読んだほうがいいでしょ」という文章が脳裏をよぎる。
たぶん『GOW』(2018)を解体するに当たって、これ全部読む必要はないです・・・・・・、
が、(私には)非常にタメになります( ^)o(^ )
「大テーマ」の提示
「興奮と持続的緊張感によって、観客を引き付けることがプロットの目的である」
と取り敢えず定義付けます。
じゃあ、それを達成するためには
「物語や行動が、目標(大テーマ)に段々近づいているように見えなければいけない」
そして、
「結末にならない内に、完全に目標に達してはいけない」
の二つが大原則であり、大抵の場合プロットはそれを忠実に守っているのです。勿論、例外はありますよ。
以下、例える時、比較的当てはまりやすい『進撃の巨人』と、当てはまりにくい『ベルセルク』を使おうと思います。
あ、『進撃の巨人』も『ベルセルク』も私が好きだから使うだけです。知らない人がいたら・・・・・・読んで(⋈◍>◡<◍)。✧♡
さて、以上の二つの大原則を守るためには、どこかで主題(大テーマ)を提示しなければいけない。
そして主題はなるべく早くはっきりさせたい。観客に没頭させるために。
そうすることで物語の基本的な構造を想像させ、観客の期待をしっかり終局点に向けさせたい。
第一巻の時点で、具体的に説明すると、
いや、別に必ずこう読める訳ではないですよ、、、
いろんな読み方があっていいと思います!その内の一つとして私の把握を書いてみたんです!
このように「大テーマ」を提示することで、観客の注意は唯一つに収束する。
すなわち、どんな道筋(ストーリー展開)によって最後の答えに到達するか。
余談ですが、『ヴァニタスの手記』における「大テーマ」は
・「ノエがヴァニタスのカルテを見極めること」
・「ノエがヴァニタスを殺すまでの物語であること」
でしょうか。
最初にこれを言っておくことで、「どんな風にノエはヴァニタスを殺すのだろう?」と読者は考える訳で、それがひいては読者の食いつきを良くする。
皆さんの分析をぜひ教えてください~
「中テーマ」と「小テーマ」
「大テーマ」を提示したはいいけど、一つ問題が・・・・・・。
それは、人の集中力は長く続かない! ということ。
「大テーマ」一つでは、物語の終わりまで注意力を引き付けるのに十分ではないのです。
だから主題の他に、主題よりは深度も規模も小さく、かつ最終的には主題につながるような補助的なテーマが必要。
別に呼び方は何でもいいけど「小さいテーマ」とでも言っておきますか。
で、短編とかなら「小テーマ」いくつか置いとけばいいけど、作品が長大になるとそれは難しい。
そこで、「大テーマ」よりは手軽で、「小テーマ」よりは重めの、丁度いい規模感の「中テーマ」も作ってしまう。
つまり「大テーマ」という大きな弧の上に、いくつかの補助的なテーマがあるんですね!
かつ「大テーマ」と「中テーマ」「小テーマ」は無関係ではない。
むしろ、「大テーマ」に最高価値を置いたヒエラルキー構造の下で、
「中テーマ」「小テーマ」は機能している、と見た方が良い。
あるいは「大テーマ」に到達するため、そこから逆算して考えた際、必ず通過しないといけない”道標”のようなもの。
それが「中テーマ」「小テーマ」。
こうして構造を整理すると、観客が食いつきやすい。
なぜなら、ストーリー展開がいくつかに分節されることで、その一つ一つに着地しながら「大テーマ」に向かって着実に進んでいる実感が持てるから。
「物語がここまで来たよ~」と教えることで見る側は安心するんですね。
ちょろいですねw(って言いたくなるんだけど、実際やってみるとこれが大変難しい💦)
これがうまい具合に作用すると、「キャラと一緒に物語を歩んでいるような気分!」とか「やっとここまで来たか・・・・・・」という達成感を、観客が抱くんでしょうね。
上手くできている自信はありませんが、また例で説明すると、
なんか『ベルセルク』はよく分かんなくなってます(笑)
『進撃の巨人』を見ると分かりやすですが、「小テーマ」は「中テーマ」の繋ぎに、「中テーマ」は「大テーマ」の繋ぎにしっかりなってますよね。
要は、一つ後のテーマに行きつくための準備、地ならしをしているんです。
これも、様々な見方があると思います。何か思いついたらコメントしてね!
二つの謎ー「原因」と「不安」
はじめに、言っておきますと、ここから先は多分混乱します。
というか、上記の本で知ったことを私が勝手に組み合わせてるだけなので、説明が重複しています。
「プロット」という一つのものを、違う側面から見ているんです。
「プロット」を、「テーマの提示」という観点から分析したのが、これまでの話。
これからは、「謎の配置」という観点から説明します。
「興奮と持続的緊張感によって、観客を引き付けることがプロットの目的である」
と定義します。
それを達成する二つ目の方法は「謎(サスペンス)の配置」です。
謎には大きく分けて二種類あります。
①「なんでこんな事になってるの!?」「誰がやったの?」という過去の原因
②「これからどうなるの?」という未来への不安。
伏線は②に分類します。
これら二つの謎を読者に提示し、わざと答えの開示を遅らせることで、読者は注意を向けてくれる。
またもや例です。
しかし、これらの謎をただ配置するだけではないんです!
ここから更に、
①どのタイミングで、どうやって提示するか?
②どのタイミングで、どうやって解決するか?
③解決したと思わせた謎の答えが、さらなる謎を生むにはどうするか?
①は重要です。
なぜなら、物語のイントロで急に全部の謎を提示したらキモいですよね。
「うわぁ、なんかめっちゃ語りたがり屋なナレーターだな」ってなりませんか?
②も重要です。
極端な例ですが、第一話で「巨人っていうのはね!実は人間なんだよ!」とかベラベラ言われたら、萎えませんか?
③も重要です。
『ヴァニタスの手記』において、ルスヴン卿の正体が分かって解決するだけの場合と、
それと同時にルスヴン卿が、実はネーニア側(敵側)と繋がっていたと判明するのとでは、後者の方が面白そうじゃありませんか。(具体例が限定的で申し訳ない)
読む側が「なんで敵側と一緒にいるの??」ってなるから。
まとめー「大テーマ」と「サスペンス」という分析手法
以上を考慮してやっと、『GOW』の話に戻れます。
というのも、「大テーマ」と「謎(サスペンス)」という二つの武器を使って、『GOW』の物語を解体することが私の目的だからです。
この二つ、なかなか切れ味の良い武器だと思いませんか?って話。
「この双剣で、『GOW』ちゃんを解体して、裸体にしたいなぁ。楽しみだなぁ、デュフフフ」
しかし、目的はこれだけではないですよね??
この記事の序盤で私は、
「プロットという観点から、すなわちプロットにおける構造分析を通してテーマを明らかにしたい」と言いました。
そうです。テーマも明らかにしたいんです。そしてそれがどのくらい現代性を帯びたテーマなのかを。
そうした手順を経て、神話の現代化を解き明かしたいんです!
そしてそれも、大体見当が付いています。『GOW』は2周ぐらいしたので。
でもここで、テーマ(仮説)を言っちゃうと読んでくれないですよね😢・・・・・・
そもそも、これからやろうとしている事はテーマを明らかにすることなんですから。
え? 知りたい・・・・・・??
えぇ・・・・・・? どうしても・・・・・・?
しょうがないなぁ。教えますけど、一つ約束してくださいね。
これかも読み続けてくれるって!
要するに『GOW』は「家族の物語」を描こうとした、という推測です。
どうでもいい話(北欧神話)から「家族の物語」にまで引き上げた、と今のところ考えています。
次回は、実際にストーリーを追いながら、本格的に丸裸にしようと思います。
勿論、結果が思わしくないこともあるでしょう。
あんまり「家族の物語」じゃないかもしれない。
仮説と違ったぁ? 至極愉快! 大いに結構!
違う答えが見つかったなら、あはは、面白いじゃありませんか。
最後までお読みいただきありがとうございました!
次回をお楽しみに!
後記を兼ねたQ&A
Q『ドラマを解剖する』『小説の技巧』『プロだけが知っている小説の書き方』を参考にすることの妥当性はあるのか?
A分かりません。
ただここで私が強調したいのは、目標は『GOW』のゲーム性を分析するのではなく、ストーリー・プロットを分析すること。
ですから、一見無関係に思える本でも、特にその構造について、プロットについて記してある部分を参考にすることで、『GOW』を調査したいと思っています。
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