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目が見えない彼女と、未来が見えない僕/大林利江子「副音声」

驚いた。あなたが私の望むラストに変えてくれた。誰も傷つかない優しいハッピーエンド。嬉しくて、幸せな気持ちになった。

「副音声」は、大林利江子さんの、純度100%の恋愛小説です。

主人公の「僕」は、最後のチャンスの司法試験に向けて勉強をしている、引きこもりの男性。彼は、アルバイトとして、視覚障害者を音声でサポートする「副音声制度」のモニターになります。彼が副音声としてサポートする視覚障害者の女性は、来る日も来る日も、画面の向こうで淡々とした毎日を過ごしていました。彼は、次第に彼女のことが気になり始めていきます。

この本はこんな人におすすめ

①視覚障害者について興味がある
②感動の恋愛小説を読みたい
③映像が鮮明に浮かぶ小説が好き

それでは、本作の魅力をご紹介していきます、ぴょん!

*副音声制度

この物語に登場する「副音声制度」は、本作の中で、あくまで実験的に運営されている制度です。「副音声」を務める人には、視覚障害者が着けているカメラが内蔵された眼鏡から、その人の目線の映像が送られてきます。その「視覚障害者本人が見たい景色」を、「副音声」を務める人が描写し、音声で伝えるのが「副音声制度」です。
副音声には、一切の感情も想いも必要がなく、的確に情報を伝えることだけが求められています。
主人公の「僕」は、自身の故郷である函館に住む女性の副音声を行なっており、彼女の目線を通じて過去に向き合っていきます。
「副音声」の描写だからこそ、情景のひとつひとつが鮮烈に目に浮かび、映像を見ているかのような臨場感がある作品でした。映像化したら、とても素敵な作品になりそうです。

*優しいラブストーリー

主人公の「僕」と、視覚障害者の女性の恋模様も見どころのひとつです。ふたりは「副音声制度」ひとつで繋がっているため、お互いの顔も知らず、主人公にいたっては女性の声も分かりません。
孤独だったふたりが、毎日数十分の「副音声」の利用時間にだけ繋がり、オンラインでの一方的なものとはいえ、行動を共にしていく様子には、リアリティがあり胸がドキドキします。そして、徐々に縮まっていく彼らの心の距離感も印象的でした。
第一章は「僕」の目線、第二章は「彼女」の目線になっており、同じ時間軸をふたつの目線で語る構成になっています。合間に、「副音声制度」を立ち上げた厚労省の女性職員の目線も挟まり、ページをめくる手を止めさせない展開にも目を見張りました。感動のラストシーンは、眩しいほどの輝きに魅了されます。

「副音声制度」を舞台にした、感動のラブストーリー。ぜひ、その鮮やかに描かれる世界観に浸ってみてください、ぴょん!


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