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御朱印帳の奏でる応援ソングを力に、私は羽ばたく!

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この記事の本文は、WEB天狼院書店に掲載されたものと同一です。

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2023年12月9日。神社を参拝し終えて一人で歩いていたら、知らないおじいちゃんから急に声をかけられた。ハットを被ったダンディなおじいちゃんだ。

「あなた、ちゃんと鳥居にお辞儀していて、若いのにちゃんとしているなと感心してみていた。急に話しかけてごめんなさいね」

「そんなこと言われたのは初めてです、声かけてくださってありがとうございます」

 

そのまましばらくおじいちゃんとお喋りした。おじいちゃんは92歳で、近くに住んでいて、この山にある高校の一期生で、毎日1万歩も歩いていて……。

「すごいですね、私は1日7500歩が目標なのに……」

「あなた、どこから来たの?」

「〇〇です(100キロほど離れたところ)」

「1人で観光?」

「はい、N神社、初めて来ました」

「あなた、とても素敵な人だから、頑張りなさいよ」

 

ちゃんと働いてちゃんとお金を稼いでちゃんと誰かのために動かないとダメだと思っていた。でも、初対面のおじいちゃんは私が神社の参拝方法を知っているだけで感心し、それを私に声をかけて伝えてくれ、エールを送ってくれた。私は92歳のおじいちゃんが素敵な人だと思う存在なのだと思ったら、嬉しくなって足取りが軽くなった。

 

 

実はこの日、私は観光ではなくリハビリをしていた。

仕事が苦しくなり、診断書が出て仕事を休み始めてから1か月半。避けていた『仕事場方面へ行く』ことを頑張ろうと、自宅を出た。でも、仕事場へは途中で右折する必要がある道を右折できなかった。右折したら動悸がしそうで、そのまま直進した。「何をしよう……御朱印を集めよう!」御朱印帳に背中を押されて、DREAMS COME TRUEの『何度でも』を聞きながら長距離を前進した。

「仕事場『方面』には向かったし、ちゃんと朝から動いたし、久しぶりに長距離運転もしたし、頑張った!」そう自分に言い聞かせつつも、「右折できなかったからダメだなぁ」と自己嫌悪に陥ってもいた。

 

おじいちゃんに出会ったのは、その日御朱印を頂きながら3箇所目の神社参拝を終えて駐車場へ歩いていた時。あと1箇所、神社へ参拝して御朱印を頂いて帰ろうと思っていた。でも、『K寺まで〇メートル』と書かれた看板が目に入って少し気になっていた。おじいちゃんとの会話を終えたあと、おじいちゃんの毎日1万歩に感化されてK寺に向けて歩いた。

 

K寺は御朱印があるかどうか調べていなかったけれど、お願いできた。御朱印を待ちながら庭園も見させていただいた。こんな素敵なところがあったなんて……。来て良かった。

そしてもう1箇所神社へ行き、私にとって人生最初の御朱印帳がこの日全て埋まった。神社巡りをして、おじいちゃんに感化されてお寺へも行き、階段をたくさん登り降りしたり歩いたりして1万歩を超えた。なんて気持ちがいい12月9日という日だろうか。

 

満願となった御朱印帳を見返した。たくさん運転し、たくさん歩き、時に勇気を出して誰もいない社務所のインターホンを押したことを思い出した。私、結構頑張っているのでは……。新品の時から少し重たくなった御朱印帳が、自分へのエールになった。直接エールを伝えてくれる初対面のおじいちゃんまで引き寄せてくれた。

 

 

思い返すと2023年11月4日の晩、青色の蝶が羽ばたいている柄に惹かれ、ネット通販で御朱印帳を注文した。正直に言うと、『御朱印をコレクションすることの何が楽しいのだろう? 御朱印帳って分厚くて荷物になりそう』などと思っていた。なのに、なぜ急に御朱印帳に惹かれたのか、自分でも分からない。

 

仕事を休み始めた頃はネガティブな検索ばかりしていて、だからGoogleもYouTubeも次々とネガティブ情報を私に示していた。この頃は、あえて自分を奮い立たせようと、応援ソングを検索して励まされていた。検索サイトの仕組みは良くわからないが、前向きになろうとしていた私の楽天ページになぜか御朱印帳が現れて、購入していた。

 

11月9日、新品の御朱印帳を持ってお寺へ行き、参拝した印が刻まれ、新品の御朱印帳がほんの少しだけ重くなった。その日から、御朱印帳を持って神社仏閣へ行き「御朱印をお願いできますか?」と声に出し、集めた御朱印を眺めてニヤニヤする楽しみが私に加わった。

 

 

御朱印デビューから2ヶ月。私は現在2冊目の御朱印帳と共に過ごしている。2冊目は1冊目の色違い、ピンク色の蝶が羽ばたいている柄だ。2冊目の前半は、仕事場近くで頂いた御朱印が並ぶ。12月のうちに、私は道路を右折して仕事場付近に複数回行けた。御朱印集めという楽しい目的を掲げながら向かい、年末には仕事関係者に会いに行くところまでやりきった。

 

 

御朱印帳と過ごして2か月、私は御朱印帳に日々を優しく照らしてもらっている。

 

次はどこに行こうかと思いを巡らせ、近隣でも知らない場所がたくさんあることに驚く。

出かければ凛とした空気に触れ、豊かな自然の中で過ごし、日々を感謝することができる。

運動が大嫌いな私が、階段の登り降りなどを気持ちよくすることができる。

御朱印をお願いするために初対面の人と話す、ということに慣れてくると、他の参拝客とすれ違うときに自分から挨拶する気分になる。

仕事関係者と会うかもしれないと思いながらも、出かける気分になれる。

動悸や吐き気がして行けなくなった方面へ向かうときに、エールを送って寄り添ってくれる。

 

あの日、御朱印帳の購入ボタンを押した私は、素晴らしい判断をしたようだ。

 

今年も、御朱印帳を助手席に乗せて一歩一歩進んでいく。御朱印帳は応援ソングだ。私は御朱印帳に背中を押されながら、御朱印帳の表紙のような羽ばたく蝶になるのだ。

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