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「ツォム」というエチオピアの断食習慣

エチオピアにも断食習慣があります。

「断食」と言えば、イスラム教の「ラマダン」のことや、最近だと健康やダイエット界隈で「ファスティング(断食)」をよく聞くと思います。

エチオピアでも断食期間があるのですが、エチオピアの断食はまたちょっとみなさんが想像するのとは違います。

◆エチオピアの断食、「ツォム」

「ツォム」とは、エチオピアの断食期間のことを言います。
英語で説明されたときは、「ファスティング」という単語でしたのであっているはず。

エチオピアはキリスト教です。キリスト教といっても、大きく分けて3つあります。

  • オーソドックス(エチオピア正教)

  • クリスティアン(プロテスタント)

  • カトリック(カトリック)

この3つです。その中でもエチオピアでは「オーソドックス」と言われている、エチオピア正教の信仰割合が多いです。そのため、ここでいう「ツォム」はエチオピア正教の人達が実施している習慣です。プロテスタントとカトリックの人が僕の近くにいなかったので、他はわかりません。

エチオピアの断食、ツォムとは、動物性の食べ物を一切摂取しないことです。

そのため、ツォム期間は野菜中心になります。

インジェラという主食に、大体お肉の具と一緒に食べることが好きなエチオピア人ですが、この期間だけは具が野菜になります。と言っても焼いたり、煮たりしていて、味もついているのでとても美味しいです。
野菜中心の具のことを、「バヤイナット」と言います。

芋や、豆をスパイスで煮込んだもの、葉っぱ系の野菜(キャベツ、白菜のようなもの、モリンガなど)、トマトと青唐辛子で和えたもの、インゲン、ビーツなど、結構バラエティーに富んでいて、肉もいいのですが野菜の具も美味しいのです。

エチオピア 断食 インジェラ
野菜中心のインジェラ、バヤイナット

◆断食するタイミングは決まっている

大体エチオピアの断食期間であるツォムがやってくるのは、大きな宗教的イベントの前です。

タイミングとしては、クリスマスファシカと呼ばれるイースター祭のタイミングが一番長いです。ファシカの前は約2か月以上もずっとツォム期間なので、街中でも肉にありつけなくなります。

ちなみにエチオピアの暦は、西暦と異なるので、クリスマスは1月7日、イースターは4月7日です。
暦の違いはこちらの記事で紹介してます。

あとは日常的に、金曜日をツォムデーとして肉を食べない習慣を持っている人もいました。

◇街から肉が消える?!

普段はお肉大好きエチオピア人ですが、ツォム期間は街からお肉が消えます!

エチオピア 断食 
街のお肉屋さん

写真のように、街のお肉屋さんにいくと、牛の肉がぶら下がっており、そこからグラム買いをします。特にカバーするビニールとか布もなく、ただただ生肉がぶら下がっている、日本の感覚からすると信じられない光景ですね。全然慣れますし、毎回ここでお肉を買うようにもなりました。

写真のお肉屋さんはキリスト系だったので、ツォム期間はお肉がぶら下がらなくなります。
肉が恋しくなる時期です。

外国人用のレストランに行けばいくらでも肉を食べられますが、ローカルのご飯屋さんだと、もっぱらツォム食、野菜インジェラのバヤイナットしか食べられません。ほかの選択肢はパスタのみ。ただパスタもインジェラの具として包んで食べるため、結局インジェラを食べ続けるのです。

◇ツォムの断食期間に肉を食べる方法

どうしても肉を食べたくなったら、イスラム教が提供しているご飯屋さんに行くことです。

街には生肉を販売しているお店があります。
よく観察してみると、「十字架」が書いてあるお肉屋さんと、「月」が書いてあるお肉屋さんがあります。
十字架がキリスト教の人が買って食べるお肉屋さん、月がイスラム教の人が買って食べるお肉屋さんで完全に分かれています。

話を聞くと、どうやら屠殺(とさつ)の方法がキリスト教とイスラム教で異なるようで、それぞれ分かれているそうです。僕も結構後に気づいたのですが、よくよく見ると違いが歴然!

ちなみに、エチオピアではキリスト教とイスラム教の割合はほとんど一緒で、半々くらいだと言われています。お互いが共存していて、僕が生活していた2年間で宗教間の争いは一回も見たことも聞いたこともありません。
民族間での対立は多かったのに、宗教間がないのが驚きでした。

◆断食習慣も色々

エチオピアでは、エチオピア正教とイスラム教のそれぞれの断食習慣を体験することができます。

断食と言えど信仰がそれぞれ違うので、イスラム教の断食「ラマダン」期間はイスラム教の人が自分の信仰に従って断食を行い、エチオピア正教の人たちは普通の生活、エチオピア正教のツォム期間でもイスラム教の人達は普通の生活、それぞれが共存しているのです。

どっちかがどうこうではなく、それぞれ尊重しているなと僕は感じましたし、キリスト教の祝日もあれば、イスラム教の祝日もどちらもカレンダーには組み込まれているのです。

そういう意味ではエチオピアって結構面白い国だなと僕は思います。今回は断食からエチオピアの文化をお楽しみいただけたでしょうか。

ではまた!

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