金融機関からの金利引上げ交渉、対応方法×4点
金融機関からの金利引上げ交渉は、今後より活発化。対応方法を準備して臨みましょう。
日本銀行は2024年3月19日にマイナス金利政策を撤廃しました。続いて7月31日(水)、政策金利を引き上げました。
日銀が金利を上げると、金融機関も貸出金利を上げるように動き出します。実際、金利引上げ交渉を始めている金融機関は少なくありません。
そんなときに役立つ対応方法を4点ご紹介します。
まず、日銀金利と民間金融機関の金利の関係、また金融機関の貸出金利の決め方、金利引上げ交渉が行われるタイミングからお話ししましょう。
①日銀が金利を上げると、なぜ民間金融機関も金利を上げるのか?
住宅ローンの変動金利型の金利や一般企業向け融資は、「短期プライムレート」に連動していることが少なくありません。短期プライムレートとは、金融機関が優良企業に1年未満の短期で貸し出す最優遇金利のことです。
基本的に金融機関が融資を行う際、金利は「短期プライムレート+○%」という形で契約します。短期プライムレートが上がると、その上げ幅に応じて自動的に貸出金利が上がる契約です。
短期プライムレートは各金融機関が独自に決定していますが、その金利の根拠が日銀の金利。
日銀の金利が上がると、それに合わせて各金融機関も短期プライムレートを上げます。
②金融機関が貸出金利を決める方法
金融機関が中小企業向けの融資を行うときの、貸出金利の決め方を説明します。
貸出金利は基本的に、以下の要素を加味した上で決定します。
調達コスト(おもに預金金利)
経費(人件費・物件費・販売管理費等)
希望収益(利ざや)
貸倒れリスク(格付けによる企業の信用度)
たとえば以下の企業の場合、貸出金利のベースは2.3%となります。
調達コスト:0.1%
経費率:0.7%
希望収益率:0.5%
貸倒れリスク:1.0%
そこから、以下のような個別要素も加味していきます。
貸出期間(長いほど金利は高い)
取引内容(預金残高/収益寄与度が高ければ金利は下がる)
他行との取引内容(他行取引があれば金利は低くなる傾向になる)
このようにして中小企業向けの貸出金利が決定されます。
③金融機関が貸出金利を上げるタイミング
金融機関が貸出金利を引き上げるのは、以下のタイミングです。
(1)日銀が金利を引き上げ、その影響で短期プライムレートの金利が上がったとき
短期プライムレート連動型金利で契約している場合、金利引上げ交渉なしに自動的に貸出金利は上がります。
(2)業績が悪化し、信用格付けが下がったとき
業績が悪化し、信用格付けが下がった場合は、貸倒れリスクが高まるため、金融機関は貸倒引当金を積み増さなくてはならなくなります。
この貸倒引当金は、コスト。その分だけ金利を引き上げないと、金融機関は希望収益を確保できなくなります。そのため業績が悪化したタイミングで、金利引上げ交渉を行ってくることがよくあります。
(3)多額の預金が減少したとき(関連取引含む)
金融機関には融資に関連する2つの金利があります。ひとつは「表面金利」。これは一般的な貸出金利のことになります。
もうひとつが「実効金利」。これは、借入を行っている企業が「預金も」している場合の借り手が実際に負担する実質的な金利のことです。
金融機関にとっては実効金利が高いほど収益が高まるため、多くの預金を預けていれば貸出金利は低めになります。が、その預金がなくなると実効金利が下がるため、金融機関は貸出金利を引き上げようとします。
(4)新規融資を行うとき
新規融資のときは、金融機関にとって金利を引き上げる絶好のタイミングです。「この金利でなければ新規融資は困難」と言われると、資金を必要とする借り手側は飲まざるを得ません。
金利引上げ交渉時の対応①応じる。しかし…
今後も融資を依頼することになるなら、ここで強く抵抗するのは得策ではありません。
納得できる説明をしてもらえることはほとんどありませんが、ここで首を縦に振らないと将来資金が必要になったとき前向きに対応してくれなくなる可能性が高くなるからです。
長いつきあいをするつもりなら、ある程度の妥協は必要になります。
しかしここで引上げに応じておくと、短期プライムレートが下がった時には堂々と「金利の引き下げ」を依頼することができます。
金利引上げ交渉時の対応②他の金融機関との融資取引を引き合いに出す
他の金融機関とも融資取引を行っていれば、「他行さんからは金利引上げの話は出ていない」と伝えれば、少なくとも金利引上げ交渉の先送りは可能です。
また経営内容がよければ、他行による肩代わりを匂わせることで、金利引上げを阻止することができるでしょう。
金利引上げ交渉時の対応③貸出期間を短くする
貸出期間が長くなればなるほど金利は高くなるので、新たに短い期間の融資に借り換えることで金利を低くすることができます。
しかし毎月の返済額が増えるため、資金繰りが厳しくなるデメリットがあります。
金利引上げ交渉時の対応④預金額を増やす
企業の預金だけではなく、経営者個人の預金、経営者の家族の預金を、金利交渉してくる金融機関に集中させることで、「実効金利が上がるので今の金利を据え置いてほしい」と交渉することができます。
どうせどこかの金融機関に預金をおいておかなければならないなら、借入のある金融機関に集中させることで、貸出金利の引上げに応じなくても金融機関に収益を確保させることができます。
上記の金融機関が貸出金利を決定する根拠、また対応策を事前におさえておけば、臆せず交渉できるでしょう。