どうやって付加価値をあげるか
マーケティングの目的は「付加価値を上げること」
だとRory Sutherland (ロリー・サザーランド|イギリス広告業界のドン)は言っています。今日は彼のインタビューから重要だと思ったことをまとめました。
ずっとiPhoneだからiPhoneを買う。あるいは、みんな持ってるからiPhoneを買う。僕みたいなこだわりのある人は別にして、人口の大半はどちらかの理由で購入します。
もしも起業家として新しいものを世の中に送り込むなら、人の習慣に組み込むか、とにかく多くの人に無料でもなんでも使わせるかのどちらかです。(PayPayの戦略的な)
フォードの例でした。ヘンリーフォード(車メーカーFordの創業者)は、週休二日制を導入したことで知られています。そうすることで従業員が実際に車を使って出掛けられ、そのまま従業員は広告塔にもなり、さらに、週末に車で出かける文化が広がれば、フォードの車はもっと売れるだろうという論理です。
石油由来か植物由来かは別にして、革の代わりに「ビーガンレザー」と名前を変えることで、従来であれば「プラスチック」と呼ばれていたモノの見かけの価値は高くなるというもの。「100円寿司」だと響きは悪いですが、「コスパ寿司」だと多少は価値が高いですよね。実際そうですし。
IKEAの例が出てきました。自分で組み立てることで値段を安くしている、という口酸っぱいほどのアピールのおかげで、私たちはIKEAのクオリティに関して納得しています。ですが、もしも説明されなかったら、「どうして安いんだろう」とクオリティに疑問を持つ人も増えるはずです。
この世界には、値段の理由を説明しないビジネスが多すぎます。「どうしてこの値段なんだろう」と疑問を持った瞬間、その商品の価値は揺らいでしまうでしょう。
付加価値をあげたかったら、素直に商品やサービスを提供するより、少し焦らしたり、難しくする必要があります。IKEAでは、「自分で組み立てる」という難しさのおかげで、人は達成感と満足感を得て、IKEA商品への価値はあがり、また購入したくなります。
コーラのゼロシュガーは、通常のコーラより少し苦く作ってあるそうです。おかげで「ちょっと苦いけど健康のために良いことをしてる」という満足感と付加価値が生まれます。
「良薬口に苦し」は、付加価値マーケティングの売り文句ですね。
マーケティングというと、「ゴミみたいな商品やサービス」をいかに「みせかけの価値を作って伝えるか」という感覚になりがちですが、本来の目的は「良い商品」の「本当の価値+付加価値」を伝えることです。本当に良いものなのに、その良さを伝えられてない人は、マーケティングに力を入れる必要があります(自分にも言い聞かせてます)。
Appleの製品がこれだけ売れるのには、Appleが多くの選択肢の中の一つではなく、唯一の商品だと人々に伝えているからです。ソニーやサムスンのスマホがiPhoneほどになれないのは、「Androiod スマホ」という無数の選択肢の中の一つだからです。
どのビジネスも、選択肢の中の一つでありながら、それぞれがユニークさを持っています。問題は、そのユニークさを前面に出せるかと、お客様に伝えられるかということです。なので僕はあえて「ドキュメンタリー」に特化しています。
ケンタッキーフライドチキンの話ですが、KFCは、65歳のおじいちゃん(カーネルサンダース)が経営していた、丹精込めて作ったレシピで揚げたチキンで評判のお店でした。しかし、高速道路の建設で人足が途絶え、店じまいを余儀なくされた結果、手元に何も残らなくなり、その結果発展したフランチャイズです。
65歳から何百店舗というブランドを築き上げるという偉業。65歳ですよ。65歳。
この物語を前面に出せば、いったいどれほどの人がKFCのファンになるだろうか。(特に高齢層とか)
オンラインビジネスの中に、お問い合わせ方法から電話応対を省く人が増えていることに、疑問を問いかけています(僕も耳が痛い)。通常、電話をかけて対応してもらえるというのは、とっても丁寧でファーストクラス的な対応です。電話応対に必要なコストの高さはわかりますが、削ってはいけないコストだと彼は指摘しています。
当たり前ですよね。ではいったいどうやって知ってもらうのか。
これは彼の話ではないですが、一番効果的な認知度拡大方法は、人々に勝手に広めてもらうことだと思っています。「口コミ」というよりは「世間話」の中に入り込むというイメージです。
「ねえ、〇〇知ってる?あれすごいよねー」という世間話ネタになれるかどうかが鍵です。
は?、と反論する人も多いですが、彼はそう言ってます。例えば、電気自動車の未来を考えた時、一般的なデータ的に言うと前例がないので予測不可能ですが、シンプルに「電気自動車を買った人はガソリン車に戻るか」という質問をすることで、その未来の成長ぶりが明らかになります。
僕のビジネスの場合、「ドキュメンタリーを依頼して撮った人が、撮らなかったらよかったと後悔するか?」という質問をかけています。答えは?
Appleの例でした。Appleのブランドは非常に強いため、失敗作を1つ作ったからと言って、人々が離れるかというとそうではありません。同じように、非常にポジティブなブランドイメージを持つビジネスは、たとえ一つミスを犯したとしても、許してもらえる可能性が高くなる、というのが彼の理論です。
もちろん、ミスは避けるべきです。けど、ブランディングを甘くみてはいけません。
電子タバコの話でした。いったいどれだけの人がニコチン接種をやめられたことか。だって、実際に煙は吸うんですよ。ただ、害が減っただけ。ニコチンパッチはダメでしたね。
本気で好きかどうか、それがビジネス成功の秘訣です。
SNSや営業の担当者が、その商品を本気で好きかどうか、それがマーケティング成功の秘訣です。
なんでもかんでも「わかりやすい」が正義ではないんです。
例えば、僕のビジネスの場合、「自分史ムービーであなたの生きた歴史を残しませんか?」はあまりに論理的です。逆に、「未来の家族にあなたを覚えてもらいませんか?」の方が「どやって?」となるので効果的です。(お、いいの思いつきましたね。早速使います。)
時短・効率アップが全てに思えるのがこの世界ですが、本当に価値を高めるのは時間を短縮することではなく、時間のクオリティを高めることです。
タクシー会社の場合。
電話でタクシーが呼ばれた後、そのタクシーにいかに早く迎えに行かせるかということよりも、今どの辺にタクシーがいるかを知らせる方がずっと効果的です。タクシーが早く来るためには外的要因が多すぎますが、どこにいるのかを伝えることは会社側でコントロールできます。成功事例がUberやGoです。
マーケティングの一番の目的は、売りたいものの価値を高めることです。バズって認知度があがるのも大切ですが、それ以上に、売りたいものの存在を知った人が、世間話としても喋りたくなるような話を伝えられるかどうかが鍵になります。
「世間話の的になる」が、マーケティングのミソだと僕は考えます。