今、気になる食の領域。
D2C、ゴーストレストラン、シェアキッチン、サブスクリプション、フードロボティクス、完全栄養食、キッチンカー、植物工場。
今、食の領域に様々な技術が入り込み、新しい価値観と共に様々なビジネスが生まれている。食に関わる人間としてこの領域に対してどんな想いがあり、どう見定めて行くかを考える必要がありのでは、と考えている今日この頃。
今までは料理のことだけ考えていれば良かったが、急速な時代の変化と食に対する価値観の多様化により、料理人自身が専門領域以外に目を向けるべき時代に突入した。
まだ大多数の人は目を向けてはいないが、向けざるを得なくなるのは時間の問題だ。僕自身まだ知識が足りないが少しづつ勉強している。時代感をみる力やスキルの翻訳、そしてコミュニケーション。
一括りに食といっても必要な能力は様々なので、日々自分をアップデートしながら生きて行くべきだろう。これはどの領域にも言えることで『今』という瞬間だけで判断せず、5年後10年後を見据えた世界を想像しなければならない。
好きな事(料理を作る事)だけで生きていけなくなるであろう危機感から僕はレストランを離れたが、まだその選択は一般的ではない。むしろ不思議がられ、揶揄される働き方だ。それでも僕は自分の選択は間違っていないと思うし、どの働き方にも間違いなんてものは存在しない。
あるのは自分がどう働きたいか、ただそれだけ。
前置きが長くなったが、今気になる領域について考えていこう。
D2C(Mr.CHEESECAKE)
言わずもがな今僕がやっているメインの事業です。自分ではD2Cとして意識しているわけではなく、時代感的にこう伝える方がコミュニケーションが早いから使っている。やりたい事は今までと変わらず食体験を通してより良い未来を描きたいという事だ。それがレストランという箱の中ではなく、フィールドが世界中に広がっただけ。そして戦い方と戦うメンバーが変わっただけという心持ち。
僕はレストラン時代から考え方が変わっていた様で(最近取材されるたびに感じている)レストランだけでやっていくとか、自分の技術を極限まで高めるとかそうゆうところにはあまり興味がない(というよりは興味がなくなった)
技術を学びテクノロジーが進化するほど自分がやるべき領域というものが変化し削ぎ落とされてきた。技術を学びたての頃はそれを使う事に喜びを感じていた。(自分の成長を感じられる瞬間はそれがとても心地良いから)
しかしある程度の技術を学ぶとそこから先は中々進まない。
ゲームでいうとLv30くらいまではサクサク進み新しい特技を学ぶが、終盤以降はそれがなくなるので作業ゲーに近くなる。新しい発見もなくなり、ただただ経験値を積む為のものになるからだ。僕はそれがとても苦手で、全キャラをLv99にする事には全く興味がない。それよりもストーリーの方が気になるので、ギリギリで進むことの方が多い。そして力で圧倒するよりも技術でどう戦うかの方が好きだ。
そんなこともあり一定以上のレベル上げには興味がない。(とは技術のある人にとやかく言われるのは我慢ならないので、戦えるだけのレベルにはしている)
そして自分にしかできないことは何なのか?をよく考える。
肉を上手に焼くのはみんなできる。しかも技術の発達で素人でもジューシーな肉を焼ける様になった。そのために必要なのは知識と設備だけだからだ。
『肉を美味しく食べる』というゴールの為には技術はいらなくなった。
『肉を美味しく焼く』というゴールには専門的な技術が必要だが、そこも考え方次第なので僕は重きをおいていない。どこかの誰かが上手にできる。
チーズケーキもそうかもしれない。単純に美味しいチーズケーキなら作れる人は沢山いるだろう。
でもそれがシェフで、ネットで、SNSを活用して、ファンを巻き込んで、スタッフに再現性のある技術を伝えながら成果を出す、となればそんなにできる人はいないのでは?と思う。
だからこそ自分の強みはなんなのか。その強みの掛け合わせでどこまで突き抜けられるのか。そしてそれが時代感にあっているのか?この辺りを客観的に判断しつつ、新しいことに挑戦していけるかが今後の働き方やビジネスにおいて大切なのではないか?
僕の強みは深く広く思考して実行に移すこと。そしてコミュニケーションを取れること。だ。
だから今もこうして食の領域について考えている。
話がだいぶ逸れてしまったので戻していこう。
ゴーストレストランとシェアキッチン
今後一番熱くなるであろうこの領域。いくつかの企業やスタートアップが参入しています。僕もkitchen baseというスタートアップのアドバイザーをやっているのですが、この領域に興味を持っています。
ウーバーイーツなどのデリバリーサービスが今後も伸びていくでしょう。食事という概念がここ数年で激しく変化していると感じます。それはレストランで働いているときから感じていましたが、レストランを離れてより一層感じています。
一番感じたのはランチ選びの課題。
そもそも時間がない中でランチを選ぶという難しさ。オフィス勤めならオフィス周辺にランチが制限されてしまう。そして街中になるのはファーストフードと炭水化物ばかりで健康的な食事を取るハードルは物理的にも精神的にも高い。
今まで賄いで生活してきた僕には絶望的に食べる選択肢がなかった。トレーニングなどで健康への意識が高くなっている層も食選びはかなりハードルが高くストレスがかかっているのではと思う。
そんな中デリバリーサービスは多少の値段の高さに目をつぶれば、選択肢は多く注文すれば勝手に届く。忙しいビジネスマンは仕事をしている間に料理が届くので、買いに行く時間も必要ない。値段の高さはインフラが整えば改善されて行くだろう。それまで凌げるかどうかがシェアキッチン事業の分かれ目になるのだろうか。
そしてもう一つはフードテックの領域に料理人がほとんど参入していないこと。
絶対に内製すべき料理という部分を外部に頼らざるを得ない形はとてもハードルが高い。日本は特に食の世界が閉鎖的なので、フードテックの領域がイマイチスピード感を持てておらずシェアキッチンを使う料理人も少ない。料理人たちの意識も変わってきてはいるものの、一歩を踏み出す人間がいないことがゴーストレストランとシェアキッチン事業の足かせとなっている様に見える。
ただシェアキッチン事業を始めるなら今のタイミングしかなかったはずなので、今後料理人とどう関わっていけるのか。それによって仕入れのルートや生産者との連携、美味しさの再現性や信憑性をどうできるかが決まってきそうだ。
食の領域は仕組みづくりも勿論だが、素材の確保やクオリティーの担保、仕入額をどう抑えるかなど、飲食をしていないとわからない問題がいくつもある。
廃棄率や食材の再利用、極限まで無駄を減らす為の施策なども料理人でもできない人は多い。始めてみないと分からないことがかなり多いので、だからこそ料理人が料理を作る以外でも活躍できるチャンスがある。
僕は料理人にはもっと外の世界に目を向け、料理を美味しく作る以外に自分にどんな特徴と能力があるかを考えてほしい。
そしてフードテック関連の人には、もっと料理人の重要性を感じてほしい。
これからの時代を切り開くには両方のバランスが不可欠だ。
レストランだけが選択肢だった時代は完全に終わった。今の時代に合わせた自分を活かす働き方を真剣に考える時代の狭間が来たのだから。
次回もフードテックについて書いてみたいと思う。
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皆様の優しさに救われてます泣