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【書きたいことをうまく書けない…】自分が楽しく書けるものを楽しく書き続けるコツとは(2020年12月号特集)


※本記事は2020年12月号に掲載した三浦しをん先生のインタビュー記事を再掲載したものです。

インタビューの前半はこちらから!

興味があり、気持ちを入れられるものがいい

――二番煎じではだめですね。ほかの誰でもないという個性はどうしたら身につきますか。

 個性とかは、あんまり考えなくていいと思うんですよね。とにかく書けば、その人の何かが絶対ににじむから。これが私の個性だと意図するまでもなく出ちゃうものだと思うんですよ。なので、そんなことは全然気にしなくていいと思います。

――作品へのアドバイスについてはどう思われますか。

 有益なアドバイスはあると思います。しかし、作品は人それぞれだから、一般化するのは難しい。
 題材の見つけ方や構成ならともかく、その人の何かがにじんでいる部分、創作の大半はそういうものじゃないですか。それは矯正することはできないと思います。

――何かがにじんでいるような熱量にあふれた作品は、具体的にはどんな作品ですか。

 やはり、自分の好きなもの、書きたいものですね。新人賞に応募するのだったら、興味がある題材で、自分の気持ちを入れられるものがいいと思うんですよ。最初の作品はそうしたものをとっかかりに書いてみるといいですね。自分が経験した職業を舞台にするとか、経験したことや感情をヒントに設定を考えるといいと思います。

一番いいのは想いを戦略にのせること

――逆に、残念に思う作品はどんな作品ですか。

 新人賞の最終選考に残ってくる作品の中で一番残念な例が、「こう書きゃいいんだろう」という姿勢のものです。本当に作者がその登場人物やシチュエーションに思いを入れて書いているとは思えない。「こういう題材を選び、こういう人物にして、こういうふうに書けば、それなりにいい感じにまとまった小説になるだろう」と思って書いているのが見える。

 「違うんだよ、こんなに書ける人なのに、どうして自分の気持ちや思い入れみたいなものを出さないのか」と思ってしまいます。それでは高揚感がないし、印象に残るシーンや登場人物の心の動きとかもなく、すごくもったいない。

――「こうしたら受賞する」という戦略にとらわれている?

 一番いいのは思いを戦略に乗せることでしょう。戦略は二の次というか、思いが「ない」ものよりは「ある」もののほうが、多少破綻していても、「この人の書きたいこと、わかるなあ。伝わってくるなあ」と思いますよね。それはたぶんどの予選委員も同じなんだと思います。だから、破綻した作品であっても最終選考に残る。
 もちろん、戦略一辺倒の小説でも可もなく不可もないから最終選考まで残ってきたりします。戦略が立てられない人がずっと書き続けられるとは思わないし、情熱だけでも書き続けられないので、戦略の人が受賞してもいいとは思うんですが。

――思い入れのある題材を書きたいと思っても、書きたいものと書けるものに乖離があることも。

 その場合は、まずはどうして書きたいものが書けないのかをよく考えて検討することが大事です。
 でも、自分の資質と書きたいと思うものが合ってないのなら、ここは考えどころです。デビューして作家としてやっていきたいのなら、自分が書きたい題材ではないもので、自分が楽しく書けるものを探したほうがいいかも。そうしないとデビューできないし、デビューしたあとも書き続けられないからです。

三浦しをんさんご自身について聞いた!

文壇その他での交友関係は?

 選考会が終わった後に、みんなでご飯を食べることはありますが、ほかはあまり……。
 今気づきましたが、私、交友が少ないかもしれません(笑)。

選考委員を務めるモチベーションは?

 ほかの選考委員の方々と小説について語り合えるのが楽しいですね。ふだん小説は一人で読むものなので。でも責任重大なので、プレッシャーのほうが大きいです。

本はどのくらい読みますか?

 本を読むのは好きですね。読書量は、マンガも含めれば、月に30冊ではきかないでしょうか。昔の小説が好きですが、最近は新しい小説もけっこう読んでいますね。

執筆の時間帯やペース配分は?

 締め切りを過ぎると集中できますね。強制的にやらざるを得ないわけですが(笑)。毎日ちょっとずつ書くのは本当に苦手です。そもそも毎日学校へ行く意味がわからなかったし。

書きあぐねた時の脱出方法は?

 奥の手としてはシャワーを浴びます。基本、人前に出ないときはお風呂に入らないので。
 浴びるとすっきりして、なんだ最初から浴びてればよかったと(笑)。気分転換は大事です。

SNSについてはどう思いますか?

 ネガティブな意見があると、ほめてくれる人がいても、それが全員の意見を代弁しているように思えてしまいます。見たくなければ見ないし、SNSはもともとやっていません。

プロ作家を目指すなら書くつらさも知っておこう

小説を書く以外にも雑務がたくさんある

 自営業なので、仕事先とのトラブルもパソコンのトラブルも自分で解決しなければならない。経理も相当面倒だし、法人化するのも大変。

〆切があるから意外と自由が利かない

 遊んでいると思われている節もあるが、そんなことはなく、とくに締め切り間近は缶詰状態。もちろん、有休もボーナスも退職金もなし。

唯一の「いい点」も最近なくなってしまった

 通勤がないことが唯一最大のメリットだと思っていたが、最近は会社員もリモートワークが増えて、在宅仕事が一般化しつつある。

特集「創作スキルでプチ稼ぎ!」
公開全文はこちらから!

※本記事は「公募ガイド2020年12月号」の記事を再掲載したものです。


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