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【基本が一番難しい】今すぐ直せる! うまくなった気になる! 文章の基本(2018年6月号特集)


本記事は下記記事の続きを掲載しています。

文の問題

15.係り受け距離

「文章を書く」の「文章を」と「書く」の関係を係り受け関係と言い、係る文節と受ける文節の距離を係り受け距離と言う。
 係り受け距離は離さないほうがいい。「文章を」と言われれば、読み手は「文章を直すかな、書くかな」とどんな動詞が来るか探すが、それが出てこないと落ち着かず、そのうち係る文節がなんだったか忘れてしまう。
 「とても急斜面で怖い」。これだと「とても急斜面」とも読める。「とても怖い」と言いたいのなら、係り受け関係を近づけ、「急斜面でとても怖い」と書いたほうがいい。

16.修飾語の順番

  • 最新の同じメーカーのペンとは思えないくらい滑らかなペン

  • 同じメーカーのペンとは思えないくらい滑らかな最新のペン

 上記の例文の場合、「最新の」も「同じメーカーのペンとは思えないくらい滑らかな」も「ペン」に係っている。
 例文の場合、「最新の」を先に書くと、「最新の」と「ペン」の距離が離れてしまう。また、「最新の」が、すぐあとにある「同じメーカー」に係っていると勘違いされる可能性もある。
 このようなときは、係る言葉(修飾語)を長い順に並べると係り受け距離が近くなる。
 機械的に並べてもうまくいかないケースもあるが、迷ったら長い順にしてみるといい

17.係る言葉がない

 係り受け関係は両方あってはじめて成立する。一方しかないと、呼びかけたのに答えがないような、おかしな文章になる。
〈定年を迎え、しぶしぶ、暇はあってもお金がないというのが公募にのめり込んだ理由と言えば理由だ。〉
 うっかり読み飛ばしてしまいそうになるが、よく見ると「しぶしぶ」が係る文節がない。
 〈定年を迎え、しぶしぶ公募を始めた。〉と書こうとして、途中で違う文章に変えるとこのような齟齬が起きる。書いたら、どれがどれに係っているか、係り受け関係を確認しよう。

18.かっこを使わない

 論文ではカッコ書きの注釈をよくつけるが、エッセイ等の場合、〈ある会社が小説の募集を始め、暇つぶしに応募した(昨年)。それで私は……。〉と書くとリズムが悪くなる。
〈昨年、ある会社が小説の募集を始め、暇つぶしに応募した。それで私は… …。〉と書こう。

19.語順を考える

  • 昨日郵便局で太郎がハガキを投函した。

 日本語では語順は比較的自由で、上記の例文なら「昨日」「郵便局で」「太郎が」「ハガキを」はどう入れ替えてもいい。しかし、強いて言えば、「いつ、どこで、誰が、何を」の順番で書くのが基本で、状況によっては長い文節(修飾語)を先にもってくるなど調整しよう。

20.入れ子構造を外す

  • ぼくは山本が佐藤が受賞したと連絡してきたのだと思った。

 入れ子構造とは、かごの中にかごが入っているような構造。
 複数の係り受け関係がこのような構造になっていると、係り受け関係がわかりにくくなる。
上記の例文の場合も、〈佐藤が受賞したと山本が連絡してきたのだとぼくは思った。〉とするほうがまだよい。

21.主語の位置と省略

 より重要な主語は先に示す。
 上記の例文の場合も〈ぼくは〉から始めるのがベター。しかし、係り受け距離が長くなるので、〈ぼくは、〉とテンを打とう。
 なお、日本語ではわかりきった主語は省略するが、後続文の主語が先行文の主語と違う場合は省略せずに示すこと。

22.最上級の表現

 報道文や広告では「世界一」「日本一」といった表現をする場合、その根拠を示す。たぶんそうだろうという感覚で「一番、もっとも、唯一の」と書くと、事実に反すると言われる。
 アマチュアが書く場合も事実確認をしよう。うっかり思い違いをしていることもよくある。

23.断言してもいい場合

 文章を書いていて、事実関係がはっきりしないということはある。しかし、だからといって「おそらく」「だそうだ」ばかりだと、なんだかあやふやなことを書いているような印象をもたれかねない。「コンビニの店員は外国人が多い」。この程度のことは言いきってよい。

24.抑えて書く

 「抑えて書く」とは、大げさに書かないということ。大げさなことを大げさに書くならわかるが、文章の端々に「なんと」とか「あろうことか」などと書かれてあると読み手は白ける。
 天気予報で、「初夏だというのになんと爽やかな夏空です」と言ったら笑ってしまう。

25.データは確かか

〈公募ガイド創刊号を発売日に書店で買った。1986年のことだった。〉
これは事実に反する。公募ガイド創刊号の発売は1985年だからだ。
アマチュアが書く文章にもデータがたくさん出てくる。調べられるものは調べて書こう。

26.言葉の不統一

 〈昨日、小説をよんだ。今まで読んだ中で一番面白かった。リアリティーがあり、オリジナリティもあった。〉
 「読んだ」と「よんだ」が不統一で、「リアリティー」には音引きがあり、「オリジナリティ」にはない。アマチュアの文章にはこうした不統一が多い。

27.体言止め

 〈四時で早退した。〉と書くところ、〈四時で早退。〉と書くのを体言止めと言う。体言止めは、小説やエッセイではあまりやらないほうがいい。とくに連続して使わないほうがいい。
 ただし、実用文やレシピなどでは効果的で、うまく使うと、歯切れとリズムがよくなる。

28.むだを削る

 書かなくても意味が通じるもの、ないほうがよく伝わり、すつきりするもの、それがむだ。
 むだは徹底的に削ろう。
 ただし、「それが宿命というものだ」はむだを削れば「それが宿命だ」にもできるが、不要な言葉がリズムを作っていることもあるから、その点には注意。

29.先が読めない

 最初に文脈を予想させることを書くとわかりやすくなる。
〈出版社系のものと非出版社系のものがある文学賞では、単行本デビューしやすいという意味では出版社系がお勧めだ。〉
 この場合、「出版社系のものと非出版社系のものがある文学賞では」まで読んだ段階では文脈はわからない。
〈文学賞には出版社系のものと非出版社系のものがあるが、単行本デビューしやすいという意味では出版社系がお勧めだ。〉
 「文学賞には出版社系のものと非出版社系のものがあるが」まで読んだ時点で、このあと対比が来ると予想できる。これだけで読み手の理解は大きく違う。

すべてのノウハウにオモテとウラがある

 文章作法には常にオモテとウラがあり、「○○すべき」があれば、そのウラには「○○すべきでない」がある。
 文章は最後まで読んでみないことには何が書かれてあるかはわからない。絵画のように一目ではわからない。
 それゆえ、最初に内容や文脈を予想させるようなことを書くとよい。これは推理小説などにも応用できる文章の基本のきだ。

 ただし、何から何まで明らかにしてしまったらどうだろうか。わかりやすくはあるが、先を読む期待感はなくなる。
と くに推理小説の場合は、何が謎であるかは明らかにしなければならないが、謎自体を明らかにしては台なしだ。

今回の「30の基本」も文章の種類によっては作法が違ってくる。
「使い古された慣用句を使わない」という作法があるが、スポーツ中継などでは使い古された慣用句だらけだ。報道は表現の場ではないので、伝わりやすいかどうかがより重視される。文章にもTPO ( 時・場所・機会) があるのだ。

特集「才能をお金に換える」
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※本記事は「公募ガイド2018年6月号」の記事を再掲載したものです。

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