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【不足を埋める】文章をまとめるコツとは?(2018年4月号特集)


書こうにもそもそも何も思いつかないという人や、思いつくことは思いつくがどうにもまとまらない人に向け、その解決策を考える。

解決策②:不要なものを削れば筋道が見える

まとまった文章とは串刺しの団子

なぜまとまらないかの前に、まとまるとは何かを考えると、

  1. 統合、統一される。

  2. 筋道が立って整う。

  3. 決まりがつく。

の3つがある。
文章でいう「まとまる」とは、1と2だろう。
つまり、1つのテーマのもとに統合され、個々の話題がだんごのように串剌しになっており、かつ、その個々のだんごが筋道立って並んでいる状態が「まとまる」だ

問いと答えがあればそれだけでまとまる

まとまっていない状態は、左記の図のようなもの。この図では数字や英字、ひらがながばらばらに袋詰めになっている。
これはいわば思いついた要素を無秩序にどんどん袋に放り込んでいった状態
この混乱した要素を1つの話にまとめるには、この中に筋道を見つけなければならない。

コツは、余計なものを捨ててしまうこと。それだけで頭が整理でき、霧が晴れたように筋道が見えてくることがある。
それでも話の筋道が見えなければ、要素の中に問いを見つけよう。単純な話、「○○なのはなぜだろうか」と書いて、「それは○○だからではないだろうか」と結べば、それだけでひとつのまとまりのある文章になる。
それではいくらなんでもシンプル過ぎるというのであれば、問いと答えの間に論証を入れる

加えて、問いの前に導入部(この話を書くきっかけになった出来事、事件や報道など) を入れれば、それなりに形が整う。
運がよければ、テーマにそってあれこれ連想方式でメモをしていったものから、「前にこんな出来事があった」「そのとき、こんなふうになって」「あれは傑作だった」というように話の骨格が見出せることもある。これはほぼ起承転結の構成だから、これで一応はまとまった文章になるはずだ。

うまくまとめるテクニック

捨てる
余計なものがあると話の筋道は見えてこない。まずはテーマから見て要らないもの、余分なものを削除していこう。

問いと答えを見つける
文章構成のもっともシンプルな形は「問いがあって答えがある」こと。この2つがあればそれだけで文章としてまとまる。

筋道を立てる
「問いと答え」だけではシンプル過ぎるので、話のつかみ論証部分を付け加えれば、これはいわゆる起承転結の構成。

鈴木先生流文才の要らない文章術:不足を埋めるという文章のメカニズム

書けないはずはない。不足を埋めれば延々と書ける

――――書くことが何も思いつかない人はどうすればいいでしょうか。

何も思いつかなくても、文章は「書くと書ける」。たった1 行でも書いてしまうと、延々と書き継ぐことができます。なぜそんなことになるのでしょうか。
文は情報が不足した状態で示されます

「昨日はよい天気だったが、一日中部屋でごろごろしていた」

季節はいつか。昨日とは何曜日か。ごろごろしていたのは男か女か。なぜごろごろしていたのか。部屋とは何階なのか、和室なのか洋室なのか。

このあとに書くべき文章は、この不足を埋めるものでなければならない。そこで「疲れていたのだ」と書く。すると、今度は「なぜ疲れていたのか」という新たな疑問が生まれる。このように次々と疑問に答えているうちに筆が止まらなくなるんです。

それは才能があるからではありません。自分が書いた文章を冷静に見て、その不足を埋めていったからです。
ただし、自分で書いたものをじっくり読んで、次に書くべきベストな1 行を生み出すには、ちょっとしたコツがあります。

高校の授業で一文ずつ足していくリレー作文をしたことがありました(下記) 。最初の文は私が示したものです。それを承けて、生徒が「おじさんしかいなかった」「なんとなく車両を変えた」と続けたわけですが、皆さんならこのあとにどんな文を書き足すでしょう。平凡な因果律に従って「加齢臭に耐えられなかったからだ」とするでしょうか。

4つ目の文を担当した生徒はそうは書きませんでした。「席をゆずる勇気がなかったからだ」としたのです。彼女は直前の文の「なんとなく」に含まれる‘ためらい、を察知し、「私」の内面を見つめたのです。書きたいことを自由に書いたのではなく、そう書くしかない一文を書いた。だから平凡な因果律から自由になれたのです。逆説的ですが、書いたことの縛りを受ける。これがベストな1 行を生み出すコツです。

 

書くべきことが見えていれば必ずまとまる

――――まとまらないに関連しますが、即物的に不足を埋めるかたちで書いていった場合、行きつくべきゴールがわからなくなってしまわないでしょうか。

そうはならないんですね。書いた文章をしっかり読んで、何がまだ書き足りないかということの見極めがきく人は、必ず書かなくてはいけないことを書く。ある程度、その不足が埋められたら、そこがゴールです。

まとまらない人は、書いたことの不足が読めていない。だから、余計なことばかり書いてしまう。書きたいことばかりを書き散らした文章がありますが、そういう文章はあっちに行ったりこっちに行ったりして、なかなかゴールにたどりつけない。

しかし、書くことのメカニズム、つまり書いたことをにらみながら、不足を埋めていくことが書くことなのだと知ったなら、文章は相当に変わると思います

――――井上ひさしさんは「最初は理屈で組み立てなきゃだめ」と言っていますが、何を書くかは最初に考えますか。

どう書き出してどう終わるかはなんとなく考えますが、その想定したとおりに筆が運び、予定どおりに書き上がったら、その文章はまずだめだと思って間違いありません。そうではなく、書くはずのなかったことに話が及び、あらぬ結末に行き羞けばこそ、読者ははっとするし、満足もする。想定外のものが1 つもないような文章はたいてい成功しません

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※本記事は「公募ガイド2018年4月号」の記事を再掲載したものです。

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