公募ガイドと作家と修業編
のちの大作家先生も時に予選で玉砕し、あるいはプロになれないと悩んだ。ここでは公募ガイドを飾った有名作家の修業時代を名言で紹介しよう。
先輩はプロになれた。だから私もなれる。
モチベーションを上げる方法に代理体験がある。誰かが入選したとして、「いいな、私も」と思うのがそうだが、それが身近な人だった場合、「あの人が入選できるのだったら私も」と思う。
身近な人ではないが、同じ公募ガイドの読者が入選した場合はどうだろう。しかも、それが有名な小説家だった場合、「私もいけるんじゃないか」と思える。
土橋章宏さんは『超高速!参勤交代』でデビューした小説家。作家志望だったが、構成がうまくできず、脚本の勉強を始める。
それで脚本募集の城戸賞を受賞し、受賞作を持って売り込みに行き、自ら小説も書いた。アマチュア時代は地方文学賞にも応募、ボツにもめげず、どんなに頑丈な壁もたたき続けていたら、いつか割れるはずと書き続けた。
はやみねかおるさんは、一度は小説家をあきらめている。人気の児童文学作家も1次審査すら通らなかったのかと思うと、これは大きな励みだ。ことごとく予選落ちだったとしても、いつかプロになれる可能性があるのだから。
あきらめなければ、まだ負けてはいない。
能書きはいいから、とにかく書け!
書き方は確かに知りたい。しかし、それだけでは書けない。ちょうど通信教育だけで水泳を習うようなもので、泳ぎ方を学んでも、それだけでは泳げるようにはならない。だったら溺れたり水を飲んだりしながら、実際に泳いでしまったほうが早い。
創作も同じだが、それなら作法は不要なのかというとそうではない。何かの拍子に、「あのコツはこういう意味だったのか」と気づく。理論と実践は車の両輪だ。
もう1つ、私たちが知りたいことに「才能はあるか」がある。しかし、これは考えないほうがいい。
清水義範さんは教師になることが決まっていたが、なまじ向いているだけに教師になったら小説を忘れてしまうだろうと、教師の道を断って上京。しかし、なかなか芽が出ず、一時は精神的におかしくなって休職したという。
その後、彗星のごとくデビューするわけだが、才能の有無を考えてしまったら、ここまで粘れない。
ちなみに清水義範さんがデビューしたとき、習作として書いた枚数は3000枚を超えていた。ここまでやって初めて、「才能はあるのかな」と言う資格がある。
特集:ボツちゃん脱出計画
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※本記事は「公募ガイド2018年11月号」の記事を再掲載したものです。