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【作家の名言から学ぶ!】プロも修業時代はもがいていた(2018年11月号特集)


公募ガイドと作家と修業編

のちの大作家先生も時に予選で玉砕し、あるいはプロになれないと悩んだ。ここでは公募ガイドを飾った有名作家の修業時代を名言で紹介しよう。

最初は予選落ちも多かったですよ。
目の前に壁が立ちふさがっている気がしましたが、バンバンぶん殴っていたら、いつか絶対割れるはずだと思って、文学賞や脚本公募に月3本は必ず出していましたね。地方の文学賞とかも。今月はもう出す公募がないぞー、公募ガイド! とか言って(笑)。

土橋章宏(小説家・脚本家)

小説は、無責任に夢想を膨らませている段階が一番楽しい。でも、こんな小説にしようと決めたあとは、書きたいことをどうやって紡いでいくかを論理的に考え続ける。書いている時間より、考えている時間のほうがずっと長いんです

羽田圭介(小説家)

原稿を書くには、その作品世界に、まず作者自身が入っていかないと読者に伝えられないと思います。実際僕は、作品の中を歩いているし、町の辻に立って空を見上げることもあるんです。(中略)読んでもらいやすい字詰めや行間などを相当研究しました。これはとても大事です。それから、人に読んでもらいたければ気取った言葉を使わず、分かりやすく書くことです。つねに読者を意識して書くことが大事ですね。

山本一力(小説家)

プロでもないのに、コンクールの応募締切日に向けて昼夜を問わずひたすら書き続ける毎日。頭の中の空想を文字にするのってなんて楽しいのだろう、というフワフワした思いは霧散して、プロへの入り口に向かってとにもかくにも走り続けるしかないという勘違いもはなはだしい自己暗示にかかり、苦悩の日々を送るのです。家族を始め、周囲からみれば、何やってるんだ? といった状態です。いや、あんた、別に書かなくてもいいし、あんたが書かなくても誰も困らないし、むしろ、家事がどんどん手抜きになって迷惑なんですけど。そんなふうに思われていたはずです。

湊かなえ(小説家)

大学時代に推理小説を書き、全部一次落ちでしたね。これは無理なんだと思い、一度きっぱりやめて、小学校の教師になりました。昔買った公募ガイドを見たら、たくさんマーカーが引いてあった。みなさんもあきらめずに頑張って書き続けてください。

はやみねかおる(児童文学作家)

「俺が書いた小説、読んでくれないか」と頼んだら、普通は「悪いな、今度飯でも奢るから」となるやろ。それが作家という人種は「おもろい小説を書いたから読んでみてくれ。そして金をくれ」って言うわけや。読ませておいて金まで取るって頭おかしいやろ(笑)。でも、そのくらいの自信がないとやっていけない。

百田尚樹(小説家)

短編を書かないと、小説は絶対上手にならないと思います。短編というのは一枚の写真のようなもので、長編は長尺で撮っているビデオのようなもの。長ければ流すこともできますが、短いときっちりピントを合わせないとダメなんです。30~40枚の作品を10~20本書くと、構成力をはじめ、小説を書くすべての技術が確実に上がります。

乃南アサ(小説家)

とにかく最後まで書くことですね。無理やりでもいいから終わらせるんです。それってすごく大事で、そうすると、じゃあどうしてうまくいかなかったのかということが見えてくるし、強引にでも終わらせようとすると、話のまとめ方みたいなものもわかってくるんです。物語が何かを知るためには、先行する作品を読んで研究することも大事だけど、自分で実践しないとなかなか上達しない。行き詰まってしまった、で終わらせちゃ絶対だめ。

三浦しをん(小説家)

ホテルマンとして就職しましたが、フロントに立ちながら自分が立ち腐っていくような焦燥を感じていた。当時とても人気のあった梶山季之がホテルの常連客でした。彼はいつも原稿をフロントに預け、それを私が編集者に渡していたんです。そこで、それを読んで続きを予測して書いてみたんですね。そして梶山さんから次号を渡されると、自分のものと比べてみる。最初は全然歯が立たなかったけど、だんだん腕が上がってきてね。たまにどうみても僕のほうがいいっていう場合もあった。自信がついたし、すごく勉強になりました。

森村誠一(小説家)

昔は売れている本を読んで「なんでこんなのが売れるんだ」と仲間内で話したりしました。でも批判するだけでは勉強にならないんですね。どうしてその作品が売れたのかをちゃんと考えないといけない。上手だから皆が求めるとは限らないんです。分かりやすい構成かもしれないし、感情移入できる主人公かもしれない。だから、好き嫌いせず、いろんなジャンルの作品から何でも吸収するつもりで読むと、全然違うと思いますね。

桜庭一樹(小説家)

才能があるかどうかは一度忘れたほうがいい。才能があるから入選して、ないから落選するのだと考えると、粘りがなくなるんです。私には何か才能があるはずだ、まだ見つかっていないだけだと思うほうがいい結果につながります。才能をいい訳にせず、粘り強く、何度でも挑戦してください。

清水義範(小説家)

先輩はプロになれた。だから私もなれる。

モチベーションを上げる方法に代理体験がある。誰かが入選したとして、「いいな、私も」と思うのがそうだが、それが身近な人だった場合、「あの人が入選できるのだったら私も」と思う。
身近な人ではないが、同じ公募ガイドの読者が入選した場合はどうだろう。しかも、それが有名な小説家だった場合、「私もいけるんじゃないか」と思える。

土橋章宏さんは『超高速!参勤交代』でデビューした小説家。作家志望だったが、構成がうまくできず、脚本の勉強を始める。
それで脚本募集の城戸賞を受賞し、受賞作を持って売り込みに行き、自ら小説も書いた。アマチュア時代は地方文学賞にも応募、ボツにもめげず、どんなに頑丈な壁もたたき続けていたら、いつか割れるはずと書き続けた。

はやみねかおるさんは、一度は小説家をあきらめている。人気の児童文学作家も1次審査すら通らなかったのかと思うと、これは大きな励みだ。ことごとく予選落ちだったとしても、いつかプロになれる可能性があるのだから。
あきらめなければ、まだ負けてはいない。

能書きはいいから、とにかく書け!

書き方は確かに知りたい。しかし、それだけでは書けない。ちょうど通信教育だけで水泳を習うようなもので、泳ぎ方を学んでも、それだけでは泳げるようにはならない。だったら溺れたり水を飲んだりしながら、実際に泳いでしまったほうが早い。

創作も同じだが、それなら作法は不要なのかというとそうではない。何かの拍子に、「あのコツはこういう意味だったのか」と気づく。理論と実践は車の両輪だ。
もう1つ、私たちが知りたいことに「才能はあるか」がある。しかし、これは考えないほうがいい。

清水義範さんは教師になることが決まっていたが、なまじ向いているだけに教師になったら小説を忘れてしまうだろうと、教師の道を断って上京。しかし、なかなか芽が出ず、一時は精神的におかしくなって休職したという。
その後、彗星のごとくデビューするわけだが、才能の有無を考えてしまったら、ここまで粘れない。
ちなみに清水義範さんがデビューしたとき、習作として書いた枚数は3000枚を超えていた。ここまでやって初めて、「才能はあるのかな」と言う資格がある。

特集:ボツちゃん脱出計画
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※本記事は「公募ガイド2018年11月号」の記事を再掲載したものです。

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